メインコンテンツへスキップ
見出し画像

あの飛行機は、わたしを「旅」から「現実」へと運んだ。

    この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
    題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」


    日本を出てから、約一年がたった。
    この間、わたしは住みたい国を探して旅を続けてきたのかもしれない。

    タイは暖かくて、人も優しく、物価も安い。メシもうまい。コンビニの店員さんですら、にこっと笑って「コプクンカー(ありがとう)」と言ってくれる、そんな素敵な国だ。

    ベトナムは食べ物が最高に美味かったけれど、人々の生活はバイクの排気ガスでむせかえり、ぼったくりも多かった。
    カンボジアのアンコールワット遺跡群は、ただただ最高だった。
    何もなく静かなラオス、のんびりしたマレーシアの島々、雄大な自然に心を奪われたインドネシア。
    そして、紛争直後の東ティモールは、まるで昭和初期の日本のようだった。それぞれの国が、それぞれに異なる顔を持っていた。

    この一年間で使ったお金は、だいたい60〜70万円くらいだろうか。一泊500円の宿と、一日500円の食事。アバウトな計算だけど、円高だったので一つの町に留まるなら、一ヶ月3万円あれば暮らしていけるという体感だった。

    しかし、もうお金がない。もっと他の国も知りたいけれど、現実の壁にぶつかった。

    働いてお金を貯めて、また旅に出る。それが旅人というものだろう。
    そう結論を出したけれど、シンガポールからたった五時間で日本に飛んでしまうのは、一年間かけて歩いた道のりを思うと、あまりにも味気ない。かといって、再び北上し、陸路で日本を目指すのは遠すぎるし、一度通った道を戻るのはつまらない。

    そこで、わたしはまだ行ったことのない香港へ飛ぶことに決めた。
    そこから船で台湾、沖縄、九州へと進み、旅の終わりを丁寧に迎えようと思ったのだ。
    香港へのフライトはこの一年間の長い旅で、初めての飛行機だった。ブォォォンという轟音と共に、機体が空へ舞い上がっていく。その瞬間、ああ、この旅がもうすぐ終わるんだな、という寂しさが胸にじわっと広がった。

    ---

    アジアの雑多で猥雑な雰囲気が好きなわたしにとって、香港は、東京やシンガポールと同じように、何の面白みもない大都会に見えた。しかし、わたしは唯一、そこにある重慶マンションに興味を惹かれた。

    まるで今にも崩れそうな、継ぎ足し増築されたような、ぼろぼろの建物。その外壁は、ひび割れて、どこかかさかさとした匂いがする。しかし、その内側には、サイバーパンクの世界を思わせる、複雑で猥雑な空間が広がっている。入り組んだ通路には、どやどやと人が行き交い、様々な言語がごちゃまぜに飛び交っていた。
    バックパッカーの聖地としても知られ、安い宿は、だいたいここに集まっていた。わたしが泊まったのは、そのどこかよくわからない場所にある宿だ。暗く、寒く、シャワーを浴びる気にもなれなかった。

    旅の始まりは、期待と希望に満ちていた。しかし、終わりのは、こんなにも疲れと寂しさが滲み出るものなのか。

    ―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。

    Google Geminiと相談しながら創作しました。
    カバーイラストは「宮崎駿」風のアニメイラストでお願いしました。


     
     
    異文化ライター / AI対戦会主催 / 年間マンガ500冊レビュー / SF短編小説家 / プロいく一期生 スターバックス勤務20年。ゲーム実況15年。シェアハウス10年。 ヘッダ画像はタプローム遺跡(本人撮影)。木の根が寺院を包み込む様子が神秘的。 amazonアソシエイト参加