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バンビエンに流れる、甘く、センチな匂い。

    この文章は世界の街を切り取った旅エッセイです。
    題して「見知らぬ異国で、ひとりごつ」


    ラオスのバンビエンは、静かなメコン川の流れと、そそり立つ石灰岩の山々に囲まれた、のどかな田舎町だ。昼間はカヤックやチューブで川を下る観光客で賑わうが、夕暮れになると、町全体がしんと静まり返る。どこからともなく、甘く、かすかな、煙の匂いがふわふわと漂い始める。

    日本のわたしたちは、「日常」と「非日常」をきっちりと分けて生きている。日々の疲れを癒すのは、週末の旅行だったり、誰かと飲むお酒だったり。その境界線は、はっきりと引かれている。

    だが、ここバンビエンでは、その境界線が、おぼろげで曖昧だ。
    小さなレストランやカフェのメニューには、公然と「ハッピーピザ」や「ハッピーシェイク」といった文字が並ぶ。その言葉が意味することは、旅人は皆、知っている。

    わたしは、その煙の匂いに、どこか戸惑いを感じていた。
    メコン川のほとりのオープンカフェで、わたしはただ、ぼんやりと川の流れを眺める。隣の席の欧米人たちが、くすくすと笑いながら、タバコとは違う、独特の匂いの煙をくゆらせる。ヒッピーの時代から続く、この自由な雰囲気に、彼らはどこか安らぎを見出しているのだろうか。その煙は、甘く、気怠く、そして、どこかセンチな匂い。

    そのとき、影からぬっと、ひとりの男が顔を出した。
    「ハッピー?ハッピー?」
    彼は、しわだらけの顔をにこにことさせて、わたしの手を軽く叩く。
    「いらない、いいよ」
    と首を振るわたしに、彼は、小さく「ハッピー」と呟いて、またどこかへと消えていった。

    ラオスの歴史は、隣国からの干渉や、内戦といった、決して平穏とは言えない時間の上に成り立っている。この国の人々が抱える、見えない傷や、深い悲しみ。そのすべてを、この甘く、気怠い煙が、一時的ではあれ、忘れさせてくれるのだろうか。

    夕暮れが、川面を黄金色に染めていく。その美しい景色を前に、わたしはただ、その甘い煙と、周囲の人々の静けさの理由を考えていた。彼らの静けさは、心の安らぎなのか、それとも、虚しさなのか。

    ふと、足元にとてとてと、痩せた野良犬がやってきて、わたしの手から落ちたパンくずを、そっと食べた。その姿は、この町で生きる人々の、強く、しかし、どこか満たされない心を、代弁しているようだった。

    ―ああ、またひとつ、見知らぬ異国で、ひとりごつ。

    Google Geminiと相談しながら創作しました。
    文体に擬音をちりばめてとか、犬を登場させてとかお願いしました。カバーイラストも「宮崎駿」風のアニメイラストでお願いしました。


     
     
    異文化ライター / AI対戦会主催 / 年間マンガ500冊レビュー / SF短編小説家 / プロいく一期生 スターバックス勤務20年。ゲーム実況15年。シェアハウス10年。 ヘッダ画像はタプローム遺跡(本人撮影)。木の根が寺院を包み込む様子が神秘的。 amazonアソシエイト参加