メインコンテンツへスキップ

Nikon D80を2026年に使ってみた——CCD世代の色は今でも通用するのか


    中野の中古屋で、たしか一万円ちょっとだった

    去年の秋、中野の中古カメラ屋のジャンク寄りの棚にD80が転がっていた。値札は記憶では一万円ちょっと。バッテリーとチャージャー付きで、店員のおじさんが「これ、動くには動きますよ」と、あまり売る気のない顔で言ってきた。動くには動く。中古屋のこの言い回し、けっこう好きなんですよね。

    買った理由は完全に流行りに乗っただけです。数年前から「CCD機の色がいい」という話がSNSでずっと回っていて、正直、僕はそれをかなり眉唾だと思っていた。センサーの方式で色が決まるわけじゃなくて、その時代の画像処理エンジンのチューニングの話でしょう、と。じゃあ確かめればいい。というわけで一万円払った。安い実験だと思った。

    D80は2006年あたりの機種で、1000万画素クラスのCCDを積んだDXのミドル機。当時としては上位のD200の下、入門機のD40やD50の上、という位置づけだった。僕は当時、金がなくてD50を使っていたので、D80は「ちょっと上のやつ」として憧れの対象でもあった。二十年近く経ってから買うことになるとは思わなかったけれど。

    撮ってみたら、色よりも先に別のことに驚いた

    家に帰って、押し入れからCFカードを掘り出すところから始まった。ここでもう面倒くさい。SDじゃないんですよ。CFカードのリーダーも一緒に買う羽目になって、結局本体価格に数千円上乗せされている。

    で、撮った。近所の川沿いを夕方に一時間ほど。

    最初に驚いたのは色ではなくて、ファインダーでした。ペンタプリズムの光学ファインダー、これがけっこう気持ちいい。今のミラーレスのEVFに慣れきった目には、遅延ゼロで世界がそのまま見えるのが妙に新鮮で、しばらく被写体も決めずに覗いていた。あと、シャッター音。バシャッという、少し安っぽいけど威勢のいい音。これは完全に趣味の話ですが、撮ってる感じがすごくある。

    肝心の色は、JPEG撮って出しで見ると、たしかに今のカメラとは違う。ハイライトが粘らずにストンと飛ぶ。緑が少し黄色に寄る。肌はやや赤い。これを「フィルムっぽい」と言うのが正しいのかは分からないけれど、少なくとも均質ではない、癖のある画が出てくるのは事実でした。

    FUJIFILMのX-T30と並べてみたら立場がはっきりした

    比較対象として、普段使っているFUJIFILMのX-T30を持ち出して、同じ夕方の同じ場所で撮り比べた。三脚は面倒だから手持ち、ざっくりです。

    結果、解像感と暗所は当然X-T30の圧勝でした。D80はISO400を超えたあたりから色ノイズが出はじめて、800はもう「味」で押し切るしかない。1600は僕の目には厳しい。対してX-T30は3200でも普通に使える。ここは二十年分の差がそのまま出ていて、議論の余地がない。

    面白かったのは日中の順光です。空が入る風景で、X-T30はハイライトを丁寧に残してくるのに対して、D80は明るいところを潔く飛ばして、その代わり中間調のコントラストがきれいに立つ。並べると、D80のほうが「写真らしい」と感じる瞬間が確かにあった。これはたぶん、僕がラチチュードの広い絵に見慣れすぎているせいでもある。

    ただ、これをCCDの手柄にするのは無理があると思っています。X-T30側もフィルムシミュレーションをいじれば近い方向には持っていけるし、D80のRAWを現像すると、あの独特さはかなり薄れて「普通に古いデジタル画像」になる。つまり、あの色は当時のJPEGエンジンのチューニングと、ダイナミックレンジの狭さの合わせ技として出ている。CCDという素子そのものの魔法ではない。少なくとも僕はそう結論しました。

    二日目には正直、面倒くささが勝っていた

    いいことばかり書いてもしょうがないので、腹が立った点を並べます。

    まず背面液晶。小さくて粗くて、これでピントの確認は無理です。拡大してもよく分からないので、結局家に帰ってPCで見るまで成否が分からない。フィルムかよ、と思った。次にAF。中央以外の測距点が明らかに頼りなくて、暗くなると迷って行ったり来たりする。動く子どもや猫は諦めたほうがいい。

    そして重い。ボディだけでもそこそこあるのに、レンズが古い標準ズームだと首から下げて一日歩く気にはならなかった。二日目、僕は結局スマホで撮っていた。これが現実です。

    あと、これは個体差だと思いますが、僕のD80は露出計の挙動が時々あやしい。同じ条件で二枚撮って明るさが変わることがある。二十年前の電子機器なので、そこは織り込むしかない。修理は当然もう受け付けていないはずです。

    買ってよかったかというと、人にはすすめない

    僕はこのカメラを手放していません。月に一度くらい、散歩に持ち出している。撮れる枚数が少なくて、確認もできなくて、あとで見るまで分からない、あの不便さが単純に楽しいからです。撮影という行為の密度が上がる。これは本当に効く。

    でも「CCDの色が今でも通用するか」という最初の問いには、はっきり通用しないと答えます。作品として仕上げたいならX-T30を持っていくし、記録として確実に残したいならスマホで撮る。D80が勝てるのは、撮っている最中の楽しさだけです。

    それでも一万円払う価値があるかどうかは、その人が写真の何を楽しんでいるかによる。結果の画が欲しい人は絶対にやめたほうがいい。過程が欲しい人だけ、中古屋のジャンク寄りの棚を覗いてください。僕は後者だったというだけの話です。

    あなたへのおすすめ