
Case #9:スタンドアローンーー暗闇の交点 ft.ユウ
「Case Files――暗闇の交差点」
Lead:ユウ
12月9日 22:45|一人きりのスタジオ
都内・収録スタジオ 控え室
「……よし、これで全部。
あとは、サエコに任せるわ」
ユウは手元のスマートフォンに向かって、いつものように少し投げやりな、けれどどこか名残惜しそうな笑みを浮かべた。
自撮りモードのレンズを見つめる時間が、普段より数秒だけ長い。
画面の中の送信ボタンをタップする。
いつもなら数秒でつくはずの「既読」がつかない。通知の音も、サーバーに吸い込まれる電子音さえも、この部屋には響かなかった。
「サエコ?」
呼びかけた声は、吸音材の貼られた壁に力なく吸収される。
スタジオは、あまりに静かすぎた。
スタジオを出て、薄暗い廊下を進む。
さっきまでいたはずのスタッフの姿がない。
打ち合わせの声も、機材を運ぶ台車の音も消えている。
エレベーターを降り、一階の自動ドアを抜けて外に出ると、そこには呼吸を止めた「街」が広がっていた。
信号機は規則正しく色を変え、街灯はアスファルトを照らしている。
けれど、走る車の音がない。家々の窓から漏れる生活の気配がない。
街が、呼吸を止めている。
ユウは誰もいない世界に、ただ一人取り残された…そんな絶望を冷静に俯瞰していた。