
Case #8:アンサークル――選択の行方 ft. ミライ(アイ)
「Case Files――選択の行方」
Lead:ミライ(アイ)
12月10日 09:30|歪んだ鏡像
城南警察署 相談カウンター
「ですから……彼女が自分から姿を消す理由なんて、ないんです」
ミライの声は必死だったが、
殺風景なロビーに吸い込まれるように消えていった。
カウンターの向こうで、
刑事は感情を乗せることなく、淡々と頷く。
「お気持ちは分かります。ただ――」
刑事は手元の端末に視線を落としたまま、事務的に言葉を続ける。
「同居人や関係者への聞き取りでは、
最近、精神的に不安定に見える言動が
あったという証言が複数あります。
仕事へのプレッシャー、
生活リズムの乱れ……
総合的に判断して、
今回は“自発的な蒸発”と
考えるのが妥当でしょう」
「……証言、ですか」
ミライは思わず聞き返した。
「はい。
ご本人が現れない以上、
こちらとしては
そう整理せざるを得ません」
隣に立つアイは、黙ったまま刑事の言葉を聞いていた。
論理としては破綻していない。
だが、刑事の端末の裏で、微かに明滅する通信ランプが目に入る。
――早すぎる。
聞き取りが、あまりにも手際よく進みすぎている。
アイの胸に、小さな違和感が沈殿していった。