動く人形と働く機械――肢体を得る叡知 4Days/Day1
肢体を得る叡知 4Days
MC:サエコ
書く。描く。楽器を弾く。人は、人ならざるものに、人と同じ動きをさせようとしてきました。その姿に、何を求めていたのでしょう。
ヌーシャテルの歯車
いま私は、ヌーシャテルにいます。
ジュネーブから列車で約一時間二十分。
同じ名の湖に面し、黄色い石造りの建物が残る、スイス西部の街です。
今回、立ち寄ったのはヌーシャテル美術歴史博物館。
ここで会いたい三体がいました。
時計職人たちが作った自動人形、《筆記者》《画家》《音楽家》。名前だけを聞くと、小さな仕事場を訪ねるようでもあります。
ただ、博物館の案内によると、いま《筆記者》は動かないそうです。
それでも、この少年には会っておきたいと思いました。
何ができるかを確かめるだけなら、動くときに来ればいいはずなのに。
【ちなみに】《筆記者》の現在
博物館は、部品不良・技術的問題によって《筆記者》が動作できないと告知しています。展示は継続され、《画家》《音楽家》の実演は続いています。修復には時間と複数の専門家の手が必要とされています。2026年9月12日時点の確認です。
歯車が文字を書く
三体が作られたのは、十八世紀後半。
時計づくりで培われた精密な機構が、人の動作へと使われました。
文字を書く手、絵を描く手、鍵盤に向かう指。その一つ一つを、部品の動きで実現しようとした作品です。
【解説】ジャケ=ドローの三体
1768〜1774年、スイスのラ・ショー=ド=フォンで、ピエール・ジャケ=ドロー、息子のアンリ=ルイ、協力者のジャン=フレデリック・レショーが制作しました。当時の精密機械技術を代表する自動人形として、ヌーシャテル美術歴史博物館に所蔵されています。
《筆記者》は、書かせる文章を変えることもできます。少年が文章を考えるわけではありません。人が設定した文字を、体の中に収めた仕組みが、手の動きに変えていきます。
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