遠き日の立体魔法|第6話 スナップショット|第二章 見えない座標
Laed:アイ
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全員を見ることと、全員を動かすことは、同じではなかった。
二〇〇五年、十月。
文化祭の準備が始まると、教室には段ボールや模造紙が積まれた。
私は装飾係になった。
また、まとめる側だと思った。
ところが実際に始まってみると、私が全部決める必要はなかった。
「ここの字、赤?」
「青でしょ」
「高園、決めて」
「二人で決めれば」
「逃げた」
「違う。任せた」
結局、青になった。
私の意見は必要なかった。
それで何も困らなかった。
窓際では祐介が文化祭の記録用にカメラを構えていた。人だけでなく、机の角に残ったテープや、窓から差す光まで撮っている。
「それ何撮ってるの?」
「テープ」
「何で」
「う~ん…っぽいから」
「意味分かんない」
「俺も説明する気ない」
話題がなくなれば、そこで会話は終わった。以前は不思議だったその沈黙も、もう普通になっていた。
文化祭当日はバレー部の練習も休みだった。
真希のクラスで薄いジュースを飲み、理奈に笑われ、奈緒がその横で笑った。美里も焼きそばを持ってやって来た。
誰も主将ではない。
誰もエースでも、リベロでもない。
ただの高校生だった。
しばらくして美里が言った。
「友也、来るから。ちょっと会ってくる」
「うん。行ってらっしゃい」
午後、友也らしい男子と廊下を歩く美里を一度だけ見た。
声はかけなかった。
それでよかった。
体育館の外へ出れば、誰も役割一つだけで生きているわけではない。
美里はエースだけではない。
奈緒はリベロだけではない。
私も、主将だけではなかった。
*
文化祭の翌日。
体育館のホワイトボードに、黒田先生が数字を書いた。
十二。
「何の数字ですか」
真希が聞く。
「大会まで」
「やめてください、急に現実見せるの」
「昨日まで現実から逃げてたのはお前だ」
「文化祭は現実です」
「じゃあ現実で走れ」
笑いが起きた。
黒田先生はホワイトボードに七人の名前を書いた。
理奈、真希、佳奈、梓、奈緒、美里、私。
「この七人を軸にする。スタメンは相手やローテーションで変える。でも、自分が何を持ってるかは分かってろ」
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