
ランチ、一人で入れる店を選んだ。
ランチを一人で食べる日、
最初に考えるのは
何を食べたいかじゃなくて、
一人で入れる店かどうかだった。
いつからそうなったのか、よく覚えていない。
ただ気づいたら、
食べたいものより先に、条件を考えていた。
カウンターがある店。
一人客が多い店。
回転が早くて、長居しなくていい店。
そういう店を、頭の中でリストアップしていた。
食べたいものは、その後だった。
一人で入れない店がある。
おしゃれなイタリアン。
広いファミレス。
テーブル席しかない定食屋。
別に禁止されているわけじゃない。
一人で来ている人が、いないわけでもない。
ただ、
なんとなく、入れなかった。
扉を開けた瞬間に、見られる気がした。
ああ、一人なんだ、と思われる気がした。
思われて、何が困るのかはよくわからない。
でも入れなかった。
店の前を一度通り過ぎて、また戻って、
結局別の店を探した。
一人でいることを、見られたくなかった。
正確に言うと、
一人でいることを、寂しそうだと思われたくなかった。
寂しくないのに。
本当は全然寂しくないのに、
寂しそうに見えることが、嫌だった。
変な話だと思う。
寂しくないなら、寂しそうに見えても関係ないはずだ。
でも関係あった。
寂しくないことを、証明できない気がした。
だから一人で入りやすい店を選んだ。
カウンターに座って、スマホを見ながら食べた。
一人でも自然に見える席で、一人で食べた。
誰も見ていない、と思う。
隣の人は自分の食事に集中しているし、
店員さんは次の注文を取りに行っているし、
誰も一人で来た客のことなんて気にしていない。
頭ではわかっている。
でも気にしてしまう。
一人でいる自分を、外から見ている自分がいる。
その目が、一番厳しかった。
他の誰でもなく、
自分が自分に、寂しそうだと思っていた。
誰かに寂しそうだと思われるより、
自分に寂しそうだと思われる方が、ずっと嫌だった。
そういうことだったのかもしれない。
友達と来たことがある店が、いくつかある。
あのとき食べたパスタがおいしかった。
また行きたいと思っている。
でも一人では行けていない。
テーブル席しかないから。
二人以上で行く店だという気がするから。
食べたいのに、行けない店がある。
それが少し、もったいないと思う。
でも今日も、
一人で入れる店を選んだ。
カウンター席に座って、
日替わりランチを頼んで、食べた。
おいしかった。
本当に、おいしかった。
ただ、
本当に食べたかったのがこれだったかどうかは、
よくわからなかった。