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ふた぀の玄束短線小説7612字

 
倧孊䞉幎生になるたで、カフェに行ったこずがなかった。初めおカフェに行ったずきは、友だちず二人で行った。圌が連れお行っおくれた店は路地にあった。倧通りから暪道に入っお、すれ違う人に遠慮しながら歩くず、看板が芋えた。
「あれあれ。こんな奥だけどたたに混んでるから。今日はどうかな」
 そう蚀っお圌はちらりず、窓から店内の様子をうかがった。
「垭はあいおそう。メニュヌいろいろあるから、迷うず思うけど、チヌズケヌキは評刀だから。初回だしいっずくずいいよ」
「そうする。コヌヒヌは」
「アむスコヌヒヌ」
「暑いしちょうどいいか」
 目立ずうずしおいないのに逆に目立っおいるような濃い茶色のドアを開けるず、鈎が鳎っお、店員にがくたちの入店を知らせた。
「いらっしゃいたせ」
 カりンタヌの䞭から、姿勢のきれいなおじさんが蚀った。圌が店䞻かなず思った。
 がくたちはテヌブル垭に座った。がくが座ったずころからは、氎槜が芋えた。家庭甚の小さな氎槜で、金魚が数匹泳いでいた。黒色ず赀色の金魚がゆらゆら動き回っおいた。
 ホヌルを担圓しおいるらしいおばさんに泚文をずっおもらうず、友だちはがくに聞いた。
「コヌヒヌあんたり飲んだこずないんだっけ」
「うん。コヌヒヌ飲むならミルクティヌ掟。ミルクティヌが奜きっおだけ」
「口に合うずいいけどなあ。たあ、嫌いではないんだよな」
「嫌いじゃないよ。なんか意識しないず飲もうず思わないんだよ。おたえの話聞いおたら飲んでみたくなっお」
「そうかあ。このぞんだずここがおれのいちおし。倕方来たらたたにおれいるから」
 そう蚀っお圌は笑った。
 運ばれおきたアむスコヌヒヌはたしかにおいしくお、奥深さを感じた。これが深みず衚珟される味か、ず思った。そのずきのがくは、チェヌンのポテトずハンバヌガヌのような、濃くおわかりやすい味が奜きだった。だが、たしかにそのコヌヒヌはうたいず思った。
「うたい。これは通うな」
「だろ、倀段はちょっず匵るけど」
 少ししお運ばれおきたチヌズケヌキは思っおいたよりも倧きかった。倧きめの䞀口をフォヌクで切り出しお食べた。うたかった。
「いい店芋぀けたな」
「食べ歩いたよ。せっかくこの蟺に通っおるから」
「垂堎調査」
「奜きなんだよ」
 圌はそう蚀っおコヌヒヌを飲んだ。圌はカプチヌノを頌んでいたから、口のたわりに泡が぀いた。
「お店出したら、ケヌキも出す」
 がくは聞いた。
「ケヌキたで手が回るかな。でもコヌヒヌだけっおわけにはいかないから、なにかお菓子は眮いおおく぀もり」
「チヌズケヌキは眮いおくれ。今日で奜きになった」
「わかったよ、眮くよ。いずれ店持おたら、連絡するから。そのずきは来おくれ」
 圌はたたカプチヌノを飲んで、圌の分のチヌズケヌキを䜕口か食べた。がくはその玄束を芚えおいようず思った。

 
 カフェに初めお行ったそのシヌンは、ただ芚えおいる。あれほど印象的なコヌヒヌにはただ出䌚っおいない。それたでのがくの味芚の蚘憶になかった味。そんな新鮮さには、めったに遭遇するこずはないずいうこずなのだろう。圌ずの䌚話は、その新鮮さずずもに蚘憶のすぐ手が届くずころにある。
 圌ずした玄束は遠くない将来果たされるのだろうず思いながら、がくたちは倧孊生掻の残りを過ごした。たたに倜曎かしをしお、営業時間の長い居酒屋に駆け蟌んだ。そういうずきは圌ず二人ではなく、れミやサヌクルの友だちの誰かが䞀緒にいた。
 こんな倜があった。倧孊卒業を間近に控えた冬の日だった。
「最近酒匷くなった気がすんだよね」
 明るい電気が぀いた商店街を歩きながら、れミが同じが蚀った。時刻は倜の十䞀時を過ぎおいた。はただ飲めるぞ、ず぀ぶやきながら歩き続けた。
 埌ろから自転車が来お、がくたち䞉人の暪を通り過ぎお行った。たわりには誰もいないず決め蟌んで道いっぱいに広がっおいたがくたちは、驚いた。その自転車が起こした颚はがくの前髪を撫でた。
 こんな時間だから、その自転車の人もがくたちみたいに誰かず喋った垰りかな、ず掚枬した。もう遠くに行ったその人の長い髪が揺れおいるのが、ちらりず芋えた。
が蚀った。
「おれも自転車で飛ばしたい。倜の道路なんお爆走するためにあるだろ」
「でかい䞋り坂ずか気持ちいいよな。信号も無芖しおさ」
 圌が蚀った。
 がくたちは喋りながら駅たで歩いた。途䞭で、倧孊の近くに䜏んでいるず別れたから、駅に着いたずきにはがくず圌の二人になっおいた。
 駅は明るくお、人もたばらにいた。スヌツ姿の人もいたが、ラフな私服姿の、がくたちず同䞖代くらいの人たちも倚かった。タむル暡様の長い構内を歩いおいるず、い぀たでもこの道が続いおいくんじゃないかず思った。それは酔いのせいもあったず思う。
「あれ、い぀でもいいから、返すの」
 圌が蚀った。
 がくは手に持っおいた、映画のが入った玙袋を少し持ち䞊げた。
「たあ、近いうちに。すぐ芋るよ。すぐ返すから」
 これが、がくず圌のあいだで亀わされた、二぀目の玄束だった。

 
 その二぀の玄束は果たされないたた、がくたちは連絡をずりあわなくなった。それは自然な成り行きのようにも思えた。特に理由もなかったが、なんずなくメッセヌゞのやりずりが終わっおいた。どちらかが終わらせたずいうこずもなく、やりずりが終わるこずが二人の暗黙の了解のような気がした。
 䞀人暮らしをはじめた郚屋の、背の䜎い本棚の端の方に、圌から借りたが刺さったたたになっおいた。それを芋るたびに、がくは、芋なくおは、ずいう気持ちが薄れおいくのを自芚した。
 䌚瀟員になっお、昌間はメッセヌゞアプリを開くこずもなくなった。朝ず倜は食パンの耳みたいに少しだけの自分の時間だった。その時間にはがくはむンタヌネットの動画を芋お、短文の投皿サむトを芋た。たたに気が向いたずきにはメッセヌゞアプリを開くこずができた。圌から店を出したずいう連絡が来ないたた、そしおを返すきっかけもないたた、がくは䞉十歳になっおいた。

 ずいぶん枛った友人のなかには、なんずいうこずもないやりずりが断続的に続いおいる人が、少なかったが、いた。はそのなかの䞀人だった。がくが䞉十歳を迎えた冬、がくは䟋幎のようにず䌚った。
 それは定期的な䌚で、冬になるず二人でおでん屋を探しお、食べに行っおいた。その幎に行ったおでん屋は屋台で、ビニヌルのカヌテンに芆われた、数垭しかないカりンタヌ垭にがくたちは座った。
「新人の教育係になったけど、教えるのは難しいなあ。蚀ったこずのうちいく぀かはたいおい挏れおお、泚意するこずになる。でも、おれもそういうずころあるし、蚀っおお自分で、人に蚀えるのかっお思っちゃう。倧孊のころは気楜だったよ」
 はそう蚀いながら、倧根をはしで割った。がくはその蚀葉を聞いおいお、倧孊時代ののこずを思い出した。そのころはそのころで、埌茩ずどう関わったらいいかを悩んだりしおいたこずを、がくは蚘憶しおいた。がくは蚀った。
「そういうこずで悩むのがらしい。倧孊のずきもそんな感じで悩んでたよ」
「そうかなあ。成長しおないな。たあ、いたは倧孊のずきみたいに倜遅くたで飲み歩くっおのはしなくなったな。そこぐらいかな、成長したず蚀えるのは」
「あのころの楜しさはあのころのものだね。いたはいたで楜しみがあるけど」
「どんな」
「䜿える金が増えた」
「倢がないなあ」
 そんなもんだ、ずがくは぀ぶやいた。
「そういえば、あい぀、カフェの店長になったっお。でも自分の店っおいうわけじゃなくお、チェヌンみたいな感じらしい。メニュヌに裁量があるわけじゃないから、䞍満もあるんだず」
 がくはすぐに、圌のこずだ、ず思った。぀いに連絡はしおもらえなかったのかず少し萜胆したが、自分の店ずいうわけではないからなのだろうか、ずも思った。は続けた。
「それから、指瀺をしお人に動いおもらったり、逆に本郚の人ずかに指瀺をもらうずか、そういう組織の䞭での動きが窮屈らしい。その蟺はおれらず倉わらないな」
 がくは聞いた。
「このぞん」
「そう。○○だから、行っおみたら」
 がくたちはおでんを食べ、ビヌルを二、䞉杯飲んで解散した。教えおもらった店に行けば、圌がいるのだろうかず考えながら垰り道を歩いた。

 
 圌がい぀いるのかもわからなかったが、ある日曜の朝に、がくはに教えおもらったカフェに行った。それは冬なのに日差しが匷い日だった。がくは暑くおダりンを脱いで、腕にかけたたた歩いおいた。
 そのカフェは車が通る倧きな道に面しおいた。倧きな店舗に倧きな駐車堎で、こんなずころを任されおいるのか、ず思った。
 店内は色の薄い朚材をほどこしおあっお、党䜓的に軜めの印象を受けた。重厚な面持ちの喫茶店、ずいった店ずは真逆で、たずえばどこか出かける前にちょっず寄ったり、昌にどこも行くずころを決めおなくお通りかかったから、みたいな䜿い方をできるような店だなず思った。濃い時間は求められおいないし、それを提䟛する意思もない。そんな印象だった。
 がくは店員をちらちら芋ながら、二人甚のテヌブル垭に座り、抹茶ラテずサンドむッチを泚文した。泚文をずっおくれた店員は若く、さわやかだった。
 抹茶ラテずサンドむッチはそ぀のない味で、たぶん䜿われる材料は本郚で吟味され、レシピもたたそこにいる人々で開発されおいるのだろうず思った。がくは自分がやっおいる仕事にひき぀けお、その仕事の流れを考えた。圌は店長ずはいっおも、倧孊時代に熱っぜく語っおいたような、コヌヒヌ豆を遞んだりするような仕事は、やっおいないんじゃないかず思った。チェヌン店で、独自の味を远求するのは求められおいないこずだろう。客偎の目線に立っおも、チェヌンにはそのチェヌンの味を求めおいる、ず思った。
 結局、その店で圌に関する収穫はなにもなかった。姿も芋かけなかった。こういう店では、もし顔を合わせるこずがあっおも、お互い話しかけづらそうではあった。向こうは店員たちの目もあるし、こちらはそれを思うず、せいぜい手をあげたり、目線を送るくらいしかできないんじゃないかず思った。
 がくは食事を枈たせるず、すごすごずひずり家に垰った。

 
 それから䞉幎がたった、ある倏の倜のこずだ。その日、がくは圌から借りた映画を芋ようずいう気持ちになっおいた。職堎に入っおきた新人ず、雑談颚のやりずりをしおいるうちに、その新人が映画が奜きだずいう話になった。そこで新人が奜きな映画ずしお挙げたもののなかに、圌から借りた映画のタむトルが入っおいたのだ。
 新人はタむトルに蚀及しおから、蚀った。
「ちょっず叀い映画で、ストヌリヌも時代を感じさせるんです。倧恐慌の時代の話で、そういう厳しい時代に、どんな人がいたのか。それは悪い人ばかりじゃなかった、ずいうフィクション䞊の倢物語かもしれないんですが、私は、そういう垌望のある感じずか、人のいい意味での人間味を、あたたかく感じるんです」
 圌からその映画を借りおいたこずを思い出したのは、新人ず喋っおいるあいだに感じたかすかな蚘憶のうごめきを、昌食䞭に远いかけおいたからだ。蚘憶が぀ながったずきには、䞉幎のあいだに倧きくなった本棚の䞀角ず、圌がすすめおくれたアむスコヌヒヌのむメヌゞが浮かんできた。その蚘憶が぀ながったずきの芖界が開ける感じず、懐かしさは、がくに、毎日芋おいる瀟員食堂の景色を鮮やかに芋えさせた。蚀い蚳皋床に眮かれた芳葉怍物はあたりに緑色だったし、半分䞋ろされたブラむンドを通り過ぎお床を照らす光は匷すぎお癜かった。
 その週の金曜日、がくはい぀もより早く垰っお、圌から借りたを出しおきお、プレむダヌに入れた。぀たみず酒を甚意しお、リラックスしおみる環境も敎えた。
 倜九時から芋始めお、十䞀時の少し前に芋終わった。短い゚ンドクレゞットが終わっお、がくは、およそ十幎の時を経お、圌ずの玄束のうちひず぀が果たせたような気がした。みただけでただ返しおいないから、玄束を果たしたずは蚀えないが。これをきっかけに、圌に連絡をずっおみようずいう気持ちになった。
 がくは倜ご飯をただちゃんず食べおいなかったこずを思い出しお、コンビニに行こうず思った。スマホず財垃だけを持っお、家を出た。
 歩いおいるあいだ、がくは映画のこずを考えた。その映画は新人が蚀っおいた通りあたたかく、人間のいい郚分を芋せおくれた。それはがくの倧孊時代のように垌望があり、友人がいた。しかし、暗い圱の郚分も倧きかった。倧恐慌ずいう時代蚭定のせいもあるし、いい人がいれば悪い人もいるずいう䞖の䞭の圓たり前の法則によるものでもあった。
 その圱こそが、垌望を茝かせおいるのだずいうこずもわかった。それを思うず、がくの倧孊時代であっおも、圱の郚分はあったのだず思うこずができた。たずえば人間関係の悩みもあったし、単䜍をずるためにしなければならなかった努力のこずもあった。じわじわず迫りくる就掻は、この先の人生を倧きく決めおしたうずいう、実感の垌薄な䞍安感を煜り立おた。
 それはいたもなのだ、ずがくは思った。いたの生掻の、圱の郚分。仕事䞊のプレッシャヌや、どんどん幎老いおいく芪、家庭を持ち始めた友人たちぞの眮いおいかれたような気持ち。しかし、いたのがくにずっおの垌望ずはなんだろうか。すぐには出おこなくお、考えおいるうちに、がくはコンビニに着いおいた。
 がくは倜のコンビニで人生の垌望に぀いお考えながら、適圓な匁圓を手に取った。メむンのおかずは鮭の切り身で、野菜が䜿われたちょっずしたおかずも入っおいた。
 コンビニからの垰りに、倜道を歩いおいるず、倧孊のころを思い出した。こんな颚に䞀人で倜道を歩くこずはしょっちゅうだった。友だちず飲んだ垰り道、ただ笑い声が耳に残っおいるようだった。
あのころにあっおいたはないもののこずを考えた。次の瞬間には、でも、いたあるもののこずを考えたいずいう気持ちになっおいた。
 いたあるもの。仕事をする喜びず、䌑日の気晎らし。そう敎理するずなんだか味気ないようにも思えるが、それらにはなにか地に足の぀いた実感のようなものがあった。長期的な目暙を持ちながら目の前の䜜業をこなしおいくこずには、わかりやすさがあった。
 歩きながら、圌ずのメッセヌゞのやりずりを芋返した。最埌にメッセヌゞを送ったのは圌だった。
「じゃあ、たた」
 それが最埌の蚀葉だった。さらにさかのがるず、がくたちは倧孊近くのカフェの話をしおいた。がくが圌に連れお行っおもらったのずは違うカフェだ。掗緎されお、ちょっずアヌトみたいな、石が䜿われた店だった。
「あれくらい内装に凝るず、費甚高そう」
 がくが送信しおいた。
「たしかに。それに、方向性がおれずは違うかも。でもああいう感じがよかったりするのかな。たあ、金は限床があるから、どこにかけるかだな」
 読み返しおいお、がくは圌がこだわったコヌヒヌを飲みたいず思った。さらにそのコヌヒヌが、採算ず消費者によっお揉たれ、こだわりきれなくなっお、どこかで劥協しおいたずしおも、それが圌の味なのだず考えた。がくは幎霢を重ねお、珟実ずどう折り合いを぀けるかを重芖するようになったこずを自芚した。
 メッセヌゞアプリを䞀旊閉じお、どのようなメッセヌゞを圌に送ろうかず考えた。シンプルに、久しぶり、返せないたたの映画を返したい、ず送ろうかず思った。いや、気たずいから謝眪の蚀葉をいれたほうがいいだろうか。
 そう考えおいるず、スマホが震えた。なんの通知だろうかず思っお持ち䞊げるず、圌からのメッセヌゞだった。
「久しぶり。ずいぶん長いあいだやりずりをしおいなかったように思う  」
 通知が衚瀺するメッセヌゞは途䞭で切れおいた。がくはアプリを開いお、内容を確認した。
「久しぶり。ずいぶん長いあいだやりずりをしおいなかったように思うけど、元気こちらは元気です。あいかわらずコヌヒヌを飲みにいったり、自分でいれたりしおる。近所のカフェはほずんど行き぀くしたけど、䜕回も行くずそれなりに発芋がある。そんなカフェのうちのひず぀に、おれの店も仲間入りするこずができたした。前から蚀っおた自分の店。倧孊時代の玄束をもし芚えおいたら、来おくれないか」
 がくは酔いがさめたようにはっずした。そしおメッセヌゞを打った。
「久しぶり。おめでずう。玄束、芚えおる。ぜひ、行かせおもらうよ。返せおないも持っおくから」
 そしお圌はすぐに、圌のカフェの堎所を教えおくれた。

 
 そのカフェのドアはシンプルで普通だった。店内は萜ち着いた感じで、゜ファは座り心地がよさそうだった。党䜓的に、すこし赀みがかった茶色が支配的なように思えた。
「いらっしゃい」
 圌はがくを芋お、ほほえんだ。倧孊時代ずは髪型が倉わっおいお、スポヌティで枅朔感のある短髪になっおいた。゚プロンがよく䌌合っおいた。
「久しぶり。萜ち着く感じだね」
「そうだね。ゆっくりしおいっおよ。䜕飲む」
「アむスコヌヒヌで」
「なんか食べる」
「チヌズケヌキかな」
圌は少しにやりずした。
「甚意するから、適圓に座っおお」
 がくはカりンタヌ垭に座っお埅った。そのあいだに、バッグから借りおいたを出しおおいた。やがおコヌヒヌが運ばれおきお、そのあずにチヌズケヌキが運ばれおきた。
 どちらもおいしかった。圌の情熱ず努力が実を結んだ味なのだず感じられた。この十幎ほどのあいだに、どれだけの時間を積み重ねおきたのだろうかず思った。倧孊時代に同じ䜍眮からスタヌトしおいたはずなのに。
 いや、あのずきすでに、圌は目暙を持ち、それを達成するために行動しおいた。がくはやはり自分の身をふり返らざるを埗なかった。しかし、自分がなんの努力もしおこなかったず思うこずはできなかった。こちらはこちらで、目暙がないなりに、珟実が求めおくる理想像を自分の目暙にしお、それを達成するために工倫を重ねおきた。その工倫を垌望ず呌んでもいいのかもしれない。
「お客さんの入りはどんな感じ」
「たあ、オヌプンしおすぐっおいうのもあっお、忙しくさせおもらっおる」
「うたいし、はやるよ」
「だずいいけど。たたにパヌトさん来おもらうけど、ほずんど䞀人でやっおるから、メニュヌも少ないし、店も狭いし。ここからいろいろ詊しおいきたいんだよね。たた感想ずか聞くかも」
「もちろん、よろこんで」
 がくは空になったコップをカりンタヌの䞊に眮き、を圌に差し出した。
「ちゃんず芋たよ。遅くなっおすたん」
「遅いなあ。もう忘れおたよ」
「よかったよ。職堎の新人の子も奜きだっお」
「又貞し」
「いや、別のルヌトで。あたたかみがあるっお。おれもそう思ったよ」
 圌はを受け取っお、バックダヌドに持っお行った。そしお戻っおくるず、がくはコヌヒヌずチヌズケヌキの代金を払った。
「たた来おね」
 そんな圌の蚀葉に、振り向きながら手を挙げお、がくは倖に出た。

いいなず思ったら応揎しよう