メインコンテンツへスキップ
見出し画像

時空を超えて‥‥小説(世流寝狐19)


    Back to previous page
    If you want to jump to prologue

                    


     そしてそれを一番強く感じたのは、沖縄を離れ就職していく時だ。自分の年代ではさほどでもないが、母にとっては海を越えることに特別な意味が加わるのだろう。前日から何となく家の中の空気が張り詰め、あの強く厳しかった母が身支度を手伝いながら、急に堰を切った様に涙を流し始めたのである。何か見てはいけない物を見てしまった罪悪感と二十数年間育ててくれた感謝と何故もう少しだけ我慢してくれなかったか、という少しばかりの怒りが入れ混じった状態で立ち尽くしていたのを覚えている。父と子のために若い日々を費やし、幸せとは殆ど縁の無い母を残して、もう十年が過ぎてしまった。最近家に居ることが大の苦手だった父が、弱くなった母の近くにいてくれてるようだ。父の体が動く間に早く穏やかな生活を送らせてあげなければ。少なくとも先ほど出て行った老婦のようなことは自分は絶対させたくないと思った。
     食後一服し、温まった体で小走りにアパートに帰り、その夜は母に電話をいれ床についた。
     
     
     
     
          第二章
     
     
             1
     
     
     事件から四日、合志が昨日抱いた疑問を係長に問い質すため、朝から機会を狙っていた丁度その頃、国道十号線別府ー大分間で交通事故が起こった。
     二車線のその道路は、別府湾沿いを走り景観もすばらしく、よほどの強風でない限り必ず多くの釣り人がここから糸を垂らしている。反対側には日豊本線が並行し、ほとんどカーブの無いゆるやかな道だ。事故のあった場所はその中で最も急なカーブを終えた地点であった。この日も近くに釣り人が四人いて、もの凄い音に振り返ったと口を揃えた。
    「いやぁ、びっくりしたよ。ガラスの砕ける音がしたと思ったら、グァンという音だろ」
     山口の方から釣りに来ていた男が大声で言った。
     事故の状況を書き込みながら交通課署員が頷く。彼らの後方では事故現場処理のため、クレーン車が到着していた。
     それにしてもひどい状況だった。前を走っていたトラックの荷台から、長く突き出た鉄骨が、もののみごとに後続の車のフロントガラスを破っていた。鉄骨はまっすぐ運転席を貫き後部座席下まで突き刺さり、運転手の首の辺りを串刺しにしていた。

                          SORRY、GO TO NEXT PAGE



    *週末に少しずつ投稿する予定です。作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

     
     
     
    どこまで感動する文字を綴れるかな?? (長編・短編小説・短歌・つぶやき(詩も)) 私の作品がたくさんの方の目に留まりま すように・・どうぞ、プロフィールから