
時空を超えて‥‥小説(世流寝狐49)
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鉄輪神社を抜けて右に少し下ると、この場所には不似合いな豪邸にぶつかる。
この辺だが――。
表札には、羽柴と書かれていた。合志は名前が違うなと思い、もう一度くしゃくしゃになったメモを取り出し、四方に開く。
別府市鉄輪咲町五丁目十六ー七
鉄輪神社を右へ
ブロック塀に張り付いた番地を近くで確かめる。間違いない。合志はとにかく聞いてみようとインターホンを押す。指がかじかんでいた。
「すいません、ちょっとお伺いしますが、この近くに遠山さんという方いらっしゃらないでしょうか」
「遠山? 遠山何と言う方ですか」
この家の主人か、太い声がスピーカから響いた。
「遠山水江という方で、最近この辺りに引っ越して来られたはずなんですが」
インターホンに向かって、合志は意識的に大きい声で話し掛ける。
「何方様でしょう」
間があって女性の声に変わった。
「あっ失礼、私、別府署の合志と言います」
またスピーカは押し黙ったままになる。寒さから両足に氷の板が張り付いてゆく。少しして玄関の開く音がして家主が出て来た。いや、女性だ。傘をさして近づいてくる。暗い中に顔の凹凸が浮き出てきた。
何、水江――?
表札を見直す。羽柴だぞ。
「刑事さん、お久しぶりです」
その声は、まさしく秋月荘の水江だった。合志は驚いた。
「どうも」
前にいるのが水江であると分かると、合志はほっとして、一瞬目的の殆どを達成したような気分になった。
水江は鉄の鍵を上げ、ローラーを横へ転がした。リビングに通されソファーに腰掛ける。深く座ったため、危うく後ろに倒れそうになった。右手のソファーに男が座った。声から想像していた年齢よりずっと若い男だった。年は二十八、九だろう。
結婚したのか――。
向かいに水江が、お茶を勧めて座る。
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*週末に少しずつ投稿する予定です。作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。