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時空を超えて‥‥小説(世流寝狐7)


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    「足? 顔はどんな感じだったですか」
     と合志が聞く。
    「それがさぁ、前の晩にカラスがゴミ箱を目茶苦茶に荒らしてたみたいで、頭にきて必死で片付けしてたからねぇ、眠いし寒いし、足しか見てないのよ。こうやってしゃがんでやってたの」
     と、銭湯の隣にある焼き肉屋の女主人は、その時の模様を再現して見せた。
    「そうですか、足だけね」
     合志は少し悔しそうに応え、あきらめ立ち去ろうとしたが、念のためと思い、もう一つ訊ねた。
    「あのその足なんですが、どんな足、いやどんな靴を履いて歩いていたか覚えていませんか」
    「そうねぇ、店の明かりだけだから、でも確か黒っぽい防寒用の布地の草履で、底が木でできたものだったわね。お年寄りじゃないかしら、あんなの履くのは」
     女主人と別れて合志は考えた。確かに女主人が言うように、底が木作りの草履を履いて歩いていたのであれば、若い者ではあるまい。しかし本当に女性だったのかどうか。まして犯人の足かどうか分らない。ただ犯行時刻に通りを歩いていた者が、その女? だけであればいいが、と思った。
     しかし、その願いもそれから十数軒目のスナックの女によって打ち消された。すでに夕暮れ時にさしかかり、スナックの並ぶ路地は気をつけて足を運ばないと、空きビンやらポリバケツやら、その中から飛び出す猫やらでつまづきそうなくらい暗かった。
     その中で一軒のドアノブを引いた。ドアは重く軋んだ。奥をのぞくとママらしい女がモルタル床に打水をしていた。客の座る椅子はすべてカウンタやテーブルに逆さにして置いてあった。
     女はこちらに丸い尻を向けたまま、甘い声を上げた。
    「ごめんね、まだなのよ、七時頃また来て」
     まだこちらを向かない。
    「失礼、少々伺いたいことがあるのですが」
     客ではないのだと分かるよう丁寧に声をかけた。
     女はびっくりした様子で、濡れた手を拭きながらこちらへ歩みよって来た。後ろ姿より顔はもう少し歳がいっているようだ。
    「何か?」
     警察手帳を見せると、何か後ろめたいことでもあるのだろうか、また少し慌てた。
    「朝五時から六時にかけてなんですが、この前の道を誰か通らなかったでしょうか」
     合志はドアの方を指さし、これまで同様に昨日の朝のことを訊ねた。
    「通ったわよ。昨日店を閉めて帰ろうとした時、通りに黒いコートをちらっと見たわ」


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