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時空を超えて‥‥小説(世流寝狐3)


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     少しの間、渋い顔で宙を眺めていると、目の前に熱いお茶が差し出された。
    「大丈夫ですよ、係長」
     内野の不安を察して、ニコッと良子が微笑んだ。良子は二十六歳。多忙な署員らに気を遣い、内野の配慮を聞かず早出をしていた。正義感が強く、一日も早く第一線で活躍したいと考えている。
    「そうだな……」
    と応えた内野は、あの男にはいい勉強になるか、と心の中で呟いた。
     彼はお茶で一口のどをうるおし、それから鑑識と元町派出所へ電話を入れた。
     
     
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     合志が現場へ到着したのは、八時三十分を少し過ぎていた。すでに派出所の警官が二名、通勤途中の野次馬の整理と現場の状況をメモしていた。整理用のテープをくぐり中に入った合志は、メモを取っていた警官に状況を聞いた。
     どうやら倒れているのは四十前後の男性で、既に二人が来るより前に息絶えていたようだ。死体を覆ったビニールシートは、妙に高く盛り上がっていた。
     まぁ、見て下さい、と警官が合志を促す。合志は白手袋をしながら、死体に歩み寄った。かぶせられているシートを剥ぐ。
     瞬間、彼はたじろいだ。死体が一瞬こちらに向かって、飛びかかって来るかに見えたからだ。よほどもがき苦しんだのか、男は目をかっと見開き、口を開いたままだった。両手が肘から前に突き出て、何かに抵抗した様に顔の前でピタリと宙に止まっていた。丁度ボクサーの基本スタイルに似ていた。先ほどシートが盛り上がっていたのも、合志が驚いたのもこのせいだった。
     男はYシャツにネクタイ、スラックス姿で、上着はどこにも無かった。
     もう一度よく見た。顔に赤い線が見える。いや、顔だけでは無い、傷だ、露出している膚のいたるところに傷が見られた。
     直後に鑑識の三井一樹が到着した。
     後日、死体解剖を行われ、後頭部に小さな挫傷があることが判明した。当初、死因は脳震盪による心臓発作かと思われたが、やがて食中毒による窒息死が直接の原因と報告された。毒は手や顔の傷からも検出され、この日の朝の気温と死体の状況から、男は二時間程で死亡、時刻は七時から七時半の間と推定された。
     一方、後頭部の傷や素膚の傷の原因、そして毒物の断定には、もうしばらく時間を要するとのことだった。


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