光は低く、水平線のすぐ上に潜むように広がっている。
曇り空の隙間から差し込む光は拡散していて
やわらかくもどこか冷たい空気をまとっている。
潮風を受けて揺れる水面が無数の白い粒となり
光そのものが生きているようにも見える。
波打ち際に近づくと、心地よい風が頬に当たる。
深呼吸を何度かしたあと、理由もわからないまま不意に涙がこぼれて
ただ、頬を伝う感触だけが、そこにあった。
水面に散らばる光は、誰かが丁寧に置いていったものみたいで
拾うことも踏むこともできない。
ただそこに立って、波の音だけを聞いていたら
ほんの少し心が軽くなった気がした。
光の道は対岸まで続いていたけれど
わたしはどこにも行けなかった。

こより