メインコンテンツへスキップ
見出し画像

雨の七夕に滲む願い #青ブラ文学部

    本屋カフェ夢想堂

     雨の七夕。
     
     去年の七夕も、今日のような雨だった。
     白や黄色、赤や青色の短冊に、それぞれの思いを込めて願いを書く。

    「短冊は何色にしょうか」
     
     あなたと一緒に、笑いながら短冊の色紙を切った。

     近くのホームセンターで買ってきた小ぶりの笹に、願いを書いた短冊をたこ糸で、ひとつひとつ丁寧にくくりつけていく。

     まるで、クリスマスツリーの飾りつけをしているみたい。
     って、話していたのに、ツリーは一人でジンジャーボーイを飾った。

     待っているなんて、できない。
     先へ進むことにした自分をみじめだとは思わない。

     私は私の生き方をつらぬく。
     だれにも邪魔はさせないわ。

     雨の七夕。

     駅向こうの花屋まで歩いていく。
     スニーカーのつま先が、じんわりと濡れてくる。
     
     去年よりも、もっと小ぶりな笹を買い、小走りでもと来た道をいく。
    笹が雨の洗礼をうけ、うなだれるように葉先を地面へ向けている。

     アパートの部屋に戻ると、切りかけの色紙が散乱している。

    「なんだか同じ色ばかりだな」

     そう思いながらも、また同じ色を切った。

     黄色の短冊に

    「仲直りできますように」
     と、何枚か書いて、買ってきたばかりの笹に結んでいく。

    画像

     あなたと一緒に飲んでいた柚子茶の空き瓶に水道水を入れ、七夕飾りで彩られた笹をさした。倒れないようにブロックでささえた。

     雨がさらに強くなっていた。

     黄色の短冊の一枚が笹の枝から、するりと抜けた。

     ベランダに集まっていた雨粒たちの上に、ひらりひらりと落ちていった。

     マジックで書かれた願いが、雨粒たちの力によって、滲んでいく。

     それは私に

    「一人で生きていくと、決めたんでしょ」
     と、確認されているみたいだった。


     雨の七夕。

     私の書いた願いごとは、届くことなく消えていく。


            
                          了

     



    #青ブラ文学部 #雨の七夕

    山根あきらさん
    企画に参加させていただきます。
    よろしくお願いいたします。


     
     
     
    ヤバ猫は絵を 田野緋海は物語を 一人二役 何でもありの架空本屋カフェ 本と絵と、言葉のある場所 夢想堂(ゆめみどう)

    あなたへのおすすめ