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フロヌレス・デ・むベリアの䞖界を旅するために

    カガミキョりコ

    レむナアブ゜ルヌタ 読者のための手匕き曞

    前曞き

    この物語を読んでいお、こんな疑問を持ちたせんでしたか

    「アノドゥルずクラりディアは、なぜそんなに気軜に䌚えるの」
    「キリスト教ずむスラヌムが争っおいるのに、バザヌルで䞀緒にいられるの」
    「そもそも、この時代のスペむンっお䜕がそんなに特別なの」

    この手匕き曞は、そんな疑問にお答えするために曞きたした。 史実の知識がなくおも、この物語の面癜さは十分䌝わりたす。でも少し背景を知るず、クラりディアの遞択の重さも、アノドゥルの孀独も、トレドのバザヌルの熱気も、もっずリアルに感じられるはずです。
    コレもCluade aiがものの10秒で䜜っおくれた。

    第䞀章 この物語の舞台990幎代のむベリア半島

    むベリア半島っお、どこ

    珟圚のスペむンずポルトガルがある半島のこずです。ペヌロッパの南西の端、地䞭海ず倧西掋に挟たれた堎所。今でこそカトリック色の匷い「スペむン」ですが、990幎代は党く違う䞖界でした。

    圓時の勢力図

    この時代、むベリア半島はざっくり蚀うず「南のむスラヌム王囜」ず「北のキリスト教諞囜」に分かれおいたした。

    南半分埌りマむダ朝カリフ囜。銖郜はコルドバは人口50䞇人以䞊。圓時のペヌロッパ最倧の郜垂であり、䞖界でもトップクラスの文化・孊術郜垂でした。
    この時代に、街灯があり、図曞通があり、公衆济堎があり、舗装された道路があった。同時代のロンドンやパリが泥だらけの田舎町だったのず比べるず、その栌差は想像を絶したす。

    北郚レオン王囜・カスティヌリャ䌯領・ナバラ王囜など 物語の舞台であるカスティヌリャは、この北郚キリスト教圏に属したす。気候は過酷で「九ヶ月の灌熱ず䞉ヶ月の極寒」ず蚀われた土地。氎は貎重品で、南の豊かさずは察照的な厳しい䞖界でした。

    アノドゥルのモデルヒシャヌム二䞖

    物語の䞭のアルアンダルスの王アノドゥルは、史実のヒシャヌム二䞖976〜1009幎圚䜍をモデルにしおいたす。実圚の圌は、父ハカム二䞖の死埌わずか十䞀歳で即䜍。ただし実暩は宰盞アルマンスヌルに完党に奪われ、王宮に幜閉されたも同然の「お食りのカリフ」ずしお生涯を過ごしたした。

    物語の䞭でアノドゥルが「傀儡ずしお生きながら」ずいう描写があるのは、この史実に基づいおいたす。

    アルマン゜ヌルずいう男

    物語にも名前が登堎するアルマンスヌルアルマン゜ヌルは、990幎代のむベリア半島で最も恐れられた人物です。生涯57回の軍事遠埁でほが無敗。レオン王囜やナバラ王囜を繰り返し䟵略し、997幎にはキリスト教の聖地サンティアゎ・デ・コンポステヌラたで略奪したした。

    しかし圌の本圓の凄さは、軍事力だけではありたせんでした。

    アルマンスヌルが握っおいた䞉぀の暩力

    圌はアノドゥルの父、ハカム二䞖の偎近・護衛ずしお頭角を珟したした。䞻君から絶倧な信頌を埗おいたからこそ、ハカム二䞖が亡くなりヒシャヌム二䞖が幌くしお即䜍した時に、「埌芋人」ずしお暩力の䞭枢に入り蟌む隙ができたのです。

    そしお圌が就いた圹職を䞊べるず、その異垞さがわかりたす。

    ひず぀目はハゞブ宰盞。行政・倖亀・軍事の党暩を握る最高暩力者の職です。珟代で蚀えば内閣総理倧臣に盞圓したす。

    ふた぀目は倧カヌディヌカヌディヌ・アルクダヌト。これがあたり知られおいない重芁な圹職です。むスラヌム䞖界では、法埋の刀断はむスラヌム法シャリヌアに基づいお行われ、それを担う法官を「カヌディヌ」ず呌びたす。商取匕の玛争、盞続・財産問題、刑事裁刀、婚姻の有効性——日垞のあらゆる法的刀断がカヌディヌの管蜄でした。「倧カヌディヌ」はそのカヌディヌたち党員を統括する最高䜍の法官です。珟代で蚀えば最高裁刀所長官です。

    䞉぀目は幌いヒシャヌム二䞖の埌芋人。名目䞊の最高暩力者であるカリフを、事実䞊の摂政ずしお支配する立堎です。珟代日本で䟋えるなら、倩皇陛䞋の摂政に盞圓したす。

    ぀たりアルマンスヌルは——内閣総理倧臣・最高裁刀所長官・倩皇の摂政、この䞉぀を同時にひずりで兌任しおいたのです。しかも軍事的には57戊無敗。誰が正面から逆らえるでしょうか。

    政治的蚈算ずしおの「焚曞」

    これほどの暩力を持ちながら、圌はさらに宗教保守掟の支持を取り蟌むために動きたす。ヒシャヌム二䞖の父ハカム二䞖が生涯をかけお集めた40䞇冊以䞊の蔵曞から、哲孊・倩文孊・論理孊の曞物を焌华凊分したのです。

    恐ろしいのは、これが「無知ゆえの行為」ではなかった点です。アルマンスヌル自身は知識人でもありたした。圌は信念から曞物を焌いたのではなく、宗教保守掟の支持を埗るための政治的蚈算ずしお焌いた。倧カヌディヌずいう法の暩嚁を持っおいたからこそ、その焌华に誰も「違法だ」ず蚀えなかった。

    軍事力・行政暩・叞法暩・宗教的正統性——すべおを手䞭に収めた男が、知的奜奇心を「危険なもの」ず刀断した時、知の宝庫は䞀倜にしお灰になりたした。この点が、歎史の䞭でも特に語り継がれる所以です。

    第二章 「争いながら亀じり合う」ずいう䞖界

    宗教の違いを超えた共存

    珟代の私たちは「むスラヌムずキリスト教は察立する」ずいうむメヌゞを持ちがちです。確かに十字軍や宗教戊争の歎史はある。でも10䞖玀のむベリア半島では、もっず耇雑でもっず人間的な珟実がありたした。

    「モサラベ」ずいう人々が存圚しおいたした。むスラヌム支配䞋に䜏むキリスト教埒で、アラビア語を日垞語ずしお䜿い、むスラヌム文化の䞭に溶け蟌みながら信仰だけはキリスト教を守っおいた。圌らはキリスト教圏ずむスラヌム圏の間を自由に行き来できる存圚で、埌の時代の知識の橋枡し圹になりたす。

    「ナダダ人」も同様です。この時代のむベリア半島のナダダ人はアラビア語もラテン語もヘブラむ語も話せる人が倚く、医垫や商人や翻蚳者ずしお䞡文明に欠かせない存圚でした。物語に登堎するむサアク・ベン・サロモンずいうナダダ人孊者の名はそのこずを瀺しおいたす。

    バザヌルずいう堎所

    クラりディアが䜕床もトレドのバザヌルに通う堎面がありたす。バザヌルずは単なる垂堎ではありたせんでした。東はシルクロヌドの終点から、西はアフリカの黄金海岞から、南はサハラを越えた銙蟛料から、物ず情報ず人が集たる堎所でした。

    宗教も囜籍も関係なく、「商売になるか」ずいう論理だけが支配するこの空間では、キリスト教埒もむスラヌム教埒もナダダ人も、同じ屋台で同じ料理を食べながら情報を亀換しおいたした。クラりディアがお忍びでバザヌルに通い続けた理由は、そこにありたす。「自分の足で土を螏み、自分の目で人々の熱気を芋぀めおこそ、物事の芯にある真実を感じ取れる」ずいう圌女の蚀葉は、この時代の知識の圚り方そのものです。

    第䞉章 トレドの孊者たちず「知の移転」

    なぜトレドが孊術の䞭心だったのか

    トレドは地理的にも象城的にも、キリスト教䞖界ずむスラヌム䞖界の境界線䞊にある街でした。ここにはアラビア語・ヘブラむ語・ラテン語を話す人々が混圚し、東西の曞物が集たっおいた。

    この時代、ペヌロッパのキリスト教圏にはアリストテレスの哲孊曞も、ガレノスの医孊曞も、プトレマむオスの倩文孊曞も、ほずんど存圚したせんでした。ギリシャ語の原兞は倱われ、ラテン語蚳もほずんどない。それらの曞物は、アラビア語蚳ずしおむスラヌム䞖界の図曞通に保存されおいたのです。
    「翻蚳運動」はただ始たっおいたせんでした。物語の時代990〜1010幎頃、組織的な翻蚳掻動はただ始たっおいたせんでした。本栌的な「トレド翻蚳孊掟」が動き出すのは、1085幎のトレド陥萜キリスト教偎による再埁服以降のこずです。

    しかし個人レベルでの知識の流通は確実に始たっおいた。バザヌルに来る商人が珍しい曞物を持ち蟌み、孊者が互いに議論し、奜奇心旺盛なモサラベが䞡文化の情報を行き来させおいた。

    クラりディアが「本から埗た知識を私ず䞀緒に考えお、色んなモノに倉えられる人」を求めおいた理由はここにありたす。曞物を読めるだけでは意味がない。その知識を土地ず人ず結び぀けお、珟実の問題を解く人間が必芁だった。圌女はこの時代の最先端の問いを、盎感で理解しおいたのです。
    孊者たちはなぜカスティヌリャに行ったのか
    むサアク・ベン・サロモンがクラりディアに「カスティヌリャにお連れください」ず膝を぀いた堎面を芚えおいたすか。なぜ豊かなトレドを捚おお、「九ヶ月の灌熱ず䞉ヶ月の極寒」の貧乏な蟺境に行こうず思ったのでしょう。

    理由は耇数ありたす。ひず぀は玔粋な知的奜奇心。実隓ず応甚に飢えおいた孊者にずっお、「知識を蟲業や職人技術に倉える」ずいう課題は魅力的だった。もうひず぀は生掻の問題。トレドでは孊者の数が倚く、パトロンの奪い合いになっおいた。クラりディアが「お金はないわ、でも可胜性はある」ず蚀ったその「可胜性」は、孊者たちにずっおリアルな垌望だったのです。

    第四章 女が暩力を持぀ずいうこず

    10䞖玀のキリスト教圏における女性の立堎

    「女に継承暩はない」ずベアトリスが蚀い攟぀堎面がありたす。これは10䞖玀のキリスト教圏の法的珟実を反映しおいたす。土地ず暩力は基本的に男系で継承され、女性は政治的な駒ずしお扱われたした。クラりディアの姉が「父ず同じくらいの歳の男に嫁がなくおはならなくなった」のも、そのためです。

    しかしその䞀方で、実態ずしお女性が暩力を握る堎面も存圚したした。倫の䞍圚、息子の幌さ、そしお本人の圧倒的な胜力。この䞉぀が揃った時、制床の網をかいくぐる圢で女性が実暩を持぀こずは、歎史の䞭で繰り返されおきたした。
    この䞭ではレオン王囜の摂政ずなっおいる長姉の゚ルビラ

    クラりディアが「私がこの囜の王になりたす」ず宣蚀できたのは、その䞉が同時に揃った瞬間だったからです。

    むスラヌム圏における女性の立堎

    察照的に、アルアンダルスではどうだったかずいうず、制床的には耇数婚が認められおおり、女性の瀟䌚的地䜍はキリスト教圏ず異なる圢の制玄がありたした。しかしコルドバのカリフ囜では、女性の医垫や詩人や孊者の蚘録が残っおおり、閉じた瀟䌚ではなかった。

    アノドゥルがクラりディアを「其方自身をよこせ」ず求めた時、圌が芋おいたのは政治的な駒ずしおの「カスティヌリャの姫」ではなく、バザヌルで人攫いから自分を助けた少女、トレドの孊者をたぶらかした「じゃじゃ銬」、そのたたの人間ずしおのクラりディアでした。それはこの時代においおは、きわめお異䟋のたなざしでした。

    第五章 なぜ今も䞭東は「きな臭い」のか

    「レコンキスタ」ずいう長い戊争

    物語の䞭でクラりディアが「レコンキスタの最前線」ずいう蚀葉を䜿う堎面がありたす。レコンキスタずは、キリスト教諞囜がむベリア半島をむスラヌム勢力から「再埁服」しおいく700幎以䞊にわたる過皋のこずです。718幎頃に始たり、1492幎のグラナダ陥萜で終わりたす。

    ぀たりこの物語の時代990〜1010幎は、レコンキスタのちょうど「䞭間点」にあたりたす。ただ南の倧半はむスラヌム圏。でも少しず぀北からキリスト教勢力が抌し䞋げおきおいる。クラりディアが「カスティヌリャをレオン王囜から真の独立を目指す」ず蚀う時、その背景にはこの巚倧な歎史の流れがありたす。

    1492幎に䜕が起きたか

    グラナダが陥萜した1492幎、むベリア半島のむスラヌム教埒ずナダダ人はスペむンから远攟されたした。これによっお700幎以䞊続いた「争いながら亀じり合う」䞖界が終わりを告げ、玔粋なカトリック囜家「スペむン」が誕生したす。

    同じ幎、コロンブスがアメリカ倧陞に到達したした。スペむンは「陜の沈たない垝囜」ぞず急成長しおいきたす。

    クラりディアの物語が「むサベル女王の、さらに前にいた女の話」である理由はここにありたす。圌女はその垝囜の瀎を築こうずしおいる。そのためにゞェノバの造船技術を盗み、枯を拓き、知識を集めた。500幎埌の䞖界を芋越しおいたかのように。
    珟代の䞭東問題ずの繋がり
    レコンキスタで远攟されたむスラヌム教埒たちは北アフリカぞ枡り、それがやがおオスマン垝囜の拡倧ず絡たり合い、十字軍の蚘憶ず合わさっお、ペヌロッパずむスラヌム䞖界の深い断絶を生み出したした。

    珟代の䞭東問題を単玔に「宗教の争い」ず芋るこずはできたせんが、その根っこをたどっおいくず、この時代のむベリア半島の遞択にたで行き着く瞬間がありたす。「争いながら亀じり合う」ずいう䞖界が倱われた時、䜕が始たったのか。クラりディアずアノドゥルの物語は、その問いを静かに抱えおいたす。

    登堎人物ず史実の察応



    史実の人物・背景
    アノドゥルアノドゥル・ゞャスパヌル・ラフマヌル二䞖
    ヒシャヌム二䞖埌りマむダ朝カリフ、976〜1009幎圚䜍、傀儡ずしお幜閉状態
    アルマン゜ヌル
    アルマンスヌルハゞブ宰盞、実質的支配者、57回無敗の軍事遠埁
    クラりディア
    架空の人物ゎンサロ・フェルナンデスの嚘ずしお蚭定
    ガルシア・フェルナンデスクラりディアの父
    ガルシア・フェルナンデスカスティヌリャ䌯、997幎頃没
    むサアク・ベン・サロモン
    架空この時代のナダダ人孊者の兞型
    ハビ゚ル・ガブリ゚ル
    架空この時代のマグレブ人商人の兞型


    クラりディアの荘園に集った孊者たち

    物語の䞭でトレドから次々ずカスティヌリャぞやっおくる孊者たち。「たぶらかされた」ず噂されながらも、圌らが自ら遞んでこの蟺境に来た理由は、クラりディアずいう人間の磁力にありたす。それぞれの専門ず玠顔を玹介したす。


    むサアク・ベン・サロモンIsaac ben Salomon
    専門鉱物孊・鑑定孊  ナダダ系モサラベ

    トレドの貎金属ギルドで「鑑定できない石はない」ず豪語しおいた、業界随䞀の鑑定士。アラビア語もラテン語もヘブラむ語も操り、䞉぀の文明を枡り歩いお知識を積み䞊げおきた。

    バザヌルでクラりディアに出䌚うたでは、「石の䟡倀ずは玔床ず垌少性で決たる」ず信じお疑わなかった。しかし圌女に「石の䟡倀は倀段ではなく、その茝きを誰に捧げるかで決たるのよ」ず䞀蹎されたずき、孊者人生で初めお自分の理論の倖偎を芋た気がした。その日のうちに膝を぀いた。

    カスティヌリャの荘園では、アノドゥルから莈られたガラスの粟補技術の向䞊ず、貎金属の玔床を高める研究に没頭しおいる。たた、クラりディアが矩母のシヌドルに混入された堕胎剀を䞀口の銙りで芋抜いた嗅芚は、圌から孊んだ鉱物・薬草の知識がベヌスになっおいる。

    「姫様、この石の結晶構造は  ああ、たた珟堎土の䞊で私の理論を壊すお぀もりですか」


    ラミロ・デ・トレドRamiro de Toledo
    専門蟲孊・氎利孊  キリスト教埒

    叀文曞に曞かれた灌挑システムの完党な再珟を倢芋お、曞物ず栌闘し続けおきた理論家。ロヌマ時代の氎路蚭蚈曞からアラビアの蟲業論文たで読み持り、「完璧な灌挑の答えは過去の文曞の䞭にある」ず確信しおいた。

    泥だらけのクラりディアに「本を読んでいおも麊は育たないわ。颚の向きず土の湿り気を感じお」ず蚀われた瞬間、長幎の確信が音を立おお厩れた。気が぀けば蟲倫の栌奜のたた荘園に居着いおいた。

    痩せたカスティヌリャの土地に、アノドゥルから莈られたアヌモンドの苗朚や桑の朚をどう根付かせるかを日々苊心しおいる実務家。ハビ゚ルずも気が合い、シヌドル甚リンゎの品皮改良にも䞀圹買っおいる。「九ヶ月の灌熱ず䞉ヶ月の極寒」ずいう過酷な気候ず栌闘しながら、曞物に曞いおいない答えを土の䞭から掘り出し続けおいる。

    「私は孊者だぞ、なぜ今日も牛の出産を手䌝っおいるんだ  ず蚀い぀぀楜しそう」


    ハキム・むブン・ズィダヌドHakim ibn Ziyad
    専門翻蚳・蚀語孊  ムスリム系

    ラテン語ずアラビア語を行き来する翻蚳者ずしお、トレドでも腕利きず知られおいた若手孊者。本来は政治文曞や法兞の翻蚳が専門で、蚀葉を正確に、感情を排しお移し替えるこずを仕事の誇りずしおいた。

    しかしクラりディアずアノドゥルの「ラテン語の文通」の橋枡しを任されたずき、その考えは揺らいだ。二人の手玙にはカスティヌリャの産業亀枉ず無邪気な恋心が入り混じり、どんな法兞にも茉っおいない「生きた蚀葉」が躍っおいた。翻蚳しながら、これは蚘録しおおかなければならないず盎感した。亡呜同然でカスティヌリャに枡っおきた。

    荘園ではクラりディアの右腕ずしお、隣囜レオンやアルアンダルスからの密曞を解読し、倖亀文曞を起草しおいる。たた、アノドゥルから届いた「玙」の補法をカスティヌリャに定着させ、口頭ず蚘憶だけに頌っおいた行政を文曞で管理する仕組みを䜜った立圹者でもある。

    「姫様、この衚珟は少しお転婆が過ぎたす。もう少し『女王』らしい隠喩を䜿いたしょう」

    アノドゥルの「青の護衛」ずは䜕者か

    第二章のバザヌルの堎面で、ハビ゚ルの手䞋が青ざめながら報告する「青の護衛」。アノドゥルの呚囲を固めるこの粟鋭郚隊は、二皮類の人間で構成されおいたす。

    ベルベル人Berber
    北アフリカのマグレブ地方珟圚のモロッコ・アルゞェリア・チュニゞア呚蟺を原郷ずする人々。埌りマむダ朝がむベリア半島を埁服した際、むスラヌム軍の䞻力を担ったのは実はベルベル人でした。砂挠ず山岳地垯で鍛えられた身䜓胜力、銬䞊での圧倒的な戊闘技術、そしお郚族ぞの忠誠心を個人ぞの忠誠に転換できる粟神的な匷さ。カリフの護衛ずしお最も信頌された戊士たちです。

    深い藍色に染められた衣をたずう習慣があり砂挠の砂ず倪陜から身を守るための染色文化、これが「青の護衛」ずいう呌び名の由来のひず぀です。

    サカヌリバSaqaliba
    アラビア語で「スラノ人」を指す蚀葉ですが、アルアンダルスではより広く「北方・東方から連れおこられた奎隷出身の埓者・兵士」を意味したした。東ペヌロッパのスラノ系民族が倚かったこずからこの名が぀いおいたす。

    カリフ宮廷のサカヌリバは、幌少期から王宮で育おられ、アラビア語ず宮廷䜜法を叩き蟌たれた。故郷も郚族も持たないゆえに、カリフぞの忠誠だけが圌らのアむデンティティでした。宮廷内の暩力闘争に巻き蟌たれにくく、莈収賄にも動じない。ヒシャヌム二䞖アノドゥルのような「お食りのカリフ」にずっお、本圓に信頌できる数少ない存圚が、このサカヌリバたちでした。

    なぜ「青」なのか
    深い藍色はこの時代、染料ずしお非垞に高䟡でした。むンディゎの染料はむンドから遥々運ばれおくる貎重品であり、深く均䞀に染め䞊げられた垃は富ず暩力の象城です。アノドゥルが護衛に「青」をたずわせたのは、傀儡ずしお幜閉された王宮の䞭で、圌が唯䞀自分の意志で持おた「力の蚌」でもありたした。

    バザヌルでその「青」が芋えた瞬間に、ハビ゚ルの手䞋が「カリフの圱だ」ず震え䞊がった理由はここにありたす。青の護衛が珟れる堎所に、アノドゥルがいる。そしお圌らは、アルマンスヌルの目の届かない堎所でのみ、カリフ本人の呜什で動く。

    この時代を知るためのキヌワヌド

    モサラベ むスラヌム支配䞋のキリスト教埒。アラビア語を日垞語ずしお䜿いながら信仰を守った人々。

    アルアンダルス むベリア半島のむスラヌム支配地域の呌び名。珟圚の「アンダルシア」地方の語源。

    バザヌル 䞭東・地䞭海䞖界の定期垂。宗教・囜籍を問わず商取匕が行われた「䞭立地垯」。

    レコンキスタ キリスト教諞囜によるむベリア半島「再埁服」運動。718〜1492幎。

    カリフ むスラヌム共同䜓の最高指導者の称号。ヒシャヌム二䞖の時代は名目䞊の君䞻にすぎなかった。

    ハゞブ アラビア語で「宰盞」「䟍埓長」の意。アルマンスヌルはこの職を利甚しお実暩を握った。

    カヌディヌ倧カヌディヌ むスラヌム法シャリヌアに基づいお裁刀・刀決を䞋す法官。珟代の裁刀官にあたる。「倧カヌディヌカヌディヌ・アルクダヌト」はその最高䜍で、党土のカヌディヌを統括する。珟代日本の最高裁刀所長官に盞圓。アルマンスヌルはハゞブ宰盞ず倧カヌディヌを同時に兌任し、行政・軍事・叞法のすべおを掌握しおいた。

    春の遠埁サワヌむフ 蟲䜜物の収穫前に行われるキリスト教圏ぞの略奪遠埁。アルマンスヌルが毎幎行っおいた。

    ベルベル人 北アフリカマグレブを原郷ずする人々。むベリア半島埁服の䞻力を担い、埌りマむダ朝軍の粟鋭を構成した。深い藍色の衣をたずう文化を持぀。

    サカヌリバ アラビア語で「スラノ人」の意だが、アルアンダルスでは北方・東方出身の奎隷兵士・埓者を広く指した。幌少期から宮廷で育おられ、カリフぞの絶察的忠誠を持぀存圚ずしお重甚された。

    おわりに

    「史実の䞭に埋もれたスペむンの物語」ずあらすじに曞かれおいたす。

    歎史の教科曞に名前が残るのは、王や将軍や宗教指導者たちです。でも圌らの時代を実際に生きおいた人々、バザヌルで買い食いをしお、荘園で孊者ず議論しお、貧しい土地に枯を拓こうずした人々のこずは、ほずんど蚘録に残りたせん。

    クラりディアは架空の人物ですが、圌女のような人間は確かにいたはずです。制床の倖偎で、でも誰よりも時代を動かそうずした人間が。

    ぜひ本線を読みながら、この手匕き曞を傍らに眮いおください。クラりディアの遞択が、500幎埌の歎史にどう぀ながっおいくのか。その問いを䞀緒に楜しんでいただけたら嬉しいです。


    本線はこちらから読めたす


    プロロヌグhttps://note.com/bright_roses2525/n/n7b5d63182985
    第䞀章https://note.com/bright_roses2525/n/nf8800ceac663
    第二章https://note.com/bright_roses2525/n/nb369983bcca4

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