メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo by123ribbon

大好きな人へお礼が言いたかった (エッセイ #お金の使い道)

    時雨

     私はお金の使い方があまり上手くないと思う。けれど、これは有意義だと思っていることがいくつかある。
     それは、貧しい地域の子供への給食の寄付だとか、いいと思った作品のクラウドファウンディングなどだが、そのうちの1つが
    『推しに貢みつぐ』ことだ。

     今、主にハマっている人や作品は
    『モノノ怪』というアニメ映画、米津玄師さん。たまに
    『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(7/12に初めて地上波放送します)、推し絵師さんなどである。
     今回は推し絵師について話をしようと思う。

     何年か前まで「さくしゃ2」さんという方が好きで、画集や何かの同人誌を出されたりすると購入していた。
     供給が多すぎて見るのが追いつかなくなったり、キーホルダーなど買っても飾る場所がないので控えるようになった。

     最近は、3、4年ほど前に知り合った方(仮にBさんとする)にわりと貢いでいる。
     彼女は美術の専門の大学に行って勉強もされていて、絵や漫画をずっと書き続けている。プロといってもいいレベルだ(実際商業の仕事も何度かされているらしい)。
     シャイなので詳細は教えてくれないが、某有名なゲームのキャラデザインも手がけたりしている。
     私がその頃ハマっていたジャンルの二次創作で、とても美しい絵をツイッターで投稿していたので、話しかけて仲よくなった。
     以来、何かあると品物を送ったり、DMをやり取りしたりしている。
     自分の本を作った時に、表紙をお願いしたりもした。とても可愛らしい絵を描いてくれ、かなり気に入っている(この本→『もしも僕がリンゴの木を植えなくても』)。

     私はわりと狭く深く仲よくしたいタイプで、やらかしてしまう事があるため、なるべく節度を保つようにしていたが、毎日やりとりしている時期もあった。今はたまに話をするくらいだ。

     そして今月は彼女の誕生日。あと1週間位だ。
     昨年はSHIROというメーカーの、ミントのボディーミストを送った。ネットショップの手違いで玄関に置き配され、梱包こんぽうがホカホカの状態になってしまったが、どうにか大丈夫だったようだ。

     今年は何にしようか。お中元の季節だから、そういった物でもいいかもしれない。食べ物も何度か送ったことがあるので、問題ないと思う。
     三浦しをんさんの『愛なき世界』という作品がある。主人公が好きな女の子に、勤務先の食堂で作った料理を差し入れ、彼女の体を構成する物の中に、自分の作った物が含まれる事に仄暗ほのぐらい喜びを感じるという描写があったが、その気持ちがよく分かる。

     夏バテ気味のようなので、揖保いぼの糸などでもいいかもしれない。もうあまり時間はないが、決めるまであれこれ考えるのはいつも楽しい。

     私がそういう事をはじめたのは、ある事件がきっかけだった。少し長い話になると思う。

    ***

     7、8年前位の事だ。その数年前、ある原作付きのアニメが始まり、私はそれにハマっていた。
     その頃は小説や二次創作などは書いておらず、日記や映画のレビューを書く程度だった。なので、ツイッターなどでみんなが書く二次創作の絵や小説を見たり読んだりしていた。
     そんな中ピクシブというサイトで、とても絵の上手い漫画を見かけた。話もかなりおもしろく、すっかりファンになってしまった。

     その方は未成年で、高校生だったのでかなり驚いたが、考え方がしっかりしていてちゃんと本質を見て意見を言っているので、そういう所もすごいなと思っていた。

     Aさん(とする)は、そのうち
    「年末のコミケに出る」
    と、本を作りはじめた。いわゆる同人誌即売会だ。
     私は迷った。今までそういった所に行った事がなかったからだ。人の多い場所は苦手で、鬱うつになってからは大きな会場に出かけていなかった。
     散々迷ったあげく、結局行かなかった。けれど、イベントなどによく行く友人が、Aさんが頒布はんぷしているのを見かけたらしい。

     彼女はその後も創作活動を続け、そのうち一般職のような仕事に就ついたようだった。けれど、その生活にだんだん翳かげりが見え始める。
     Aさんは絵の上手さのせいで、頒布はんぷした本を高額で転売されるようになった。それも、何度もそういう目にあったらしい。

     それをひどく気に病んで心の病にかかり、やがて病院へ通うようになる。
     そしてある日、悲劇は起こった。

     自死を仄ほのめかすツイートをした後、ぱったり投稿が途絶えたのだ。
     半年後、ある人の投稿から真実を知る。それはAさんの仲間の、Cさんのものだった。

     Cさんは活動ジャンルは違っていたが、同じように創作していてAさんと知り合い、仲よくなった。彼女が病気になっていくのも心配しながら見守っていたようだ。
     例のツイート以来、投稿がないのを気にして、Aさんの家族と連絡を取り、一人暮らしの彼女が亡くなったのを知ったらしい。
     Aさんの訃報ふほうも、ツイッターで流してくれた。Aさんのファンだった人たちは、Cさんに感謝のリプライをしていた。

     それを知った時、強いショックを受けた。そして大きな後悔に襲われる。
     私は彼女の本を結局1冊も買えていなかった。通販がなかったのもあったが、現実リアルの会場が怖かった。
     彼女の作品をおもしろいと思ったし、大好きだったけれど、本人にその感想をほとんど伝えられていなかった。

     彼女が生きている間に、作品を買ったり感想を送ったりすればよかった。

    「あなたの作品が大好きです」
    と伝えていれば…… そうしたら、少しは彼女の気が紛れたかもしれないのに。

     いくら後悔しても、Aさんはもうこの世のどこにもいない。
     どうしようもない現実に、ひどく打ちのめされた。

    ***

     これはほとんどネット上で起こったことだ。だから、もしかしたら自死は狂言で、実際は彼女は生きているかもしれない。
     けれどそれはただの願望で、たぶん違うような気がする。

     私はそれから、好きな作品や好きな絵師さんなどに出会ったら、可能な範囲で購入したり感想を伝えたりするようになった。

     好きな人やものは、いつまでもあるとは限らない。
     そのことを胸に刻んで、楽しく推し活しつつ生きていこうと思う。

     最後に──
     Aさん、Bさん、そして米津さん。大好きなクリエイターさん達や作品達へ。
     この広い世界で、出会ってくれて本当にありがとう。
     あなた達のおかげで、人生が豊かになりました。

     これからも、応援しています。

                    了

     
     
     

    時雨

     
     
    小説を書く人 魂の音を作品に BAYFMさんの it!! というラジオ番組で短編小説を朗読劇で放送 『タイトルから書く文芸賞』期待賞受賞  Amazonでショートショート集販売中🍎 『もしも僕がリンゴの木を植えなくても』 https://t.co/GsYlGhydx3

    あなたへのおすすめ