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Photo byyama27

おもちと紅葉 (ショートショート)

    時雨

     これ↓シリーズです。ちょっと変わった猫と女の子の話 (読まなくても大丈夫です)

     2作目↓


     おもちと紅葉

    「ねえ、山へ行かない?」
     ママにそう言われて、私はえ? と思った。

    「七幡山しちまんやまってところは紅葉で有名らしいよ」
    「へえ、そうなんだ」
     あまり気乗りしないまま返事をする。

    「それと蕎麦そばがおいしいんだって」
    「え、いいじゃん」
     つい嬉しそうな声を出してしまった。ママはニヤリ、とする。

    「じゃあ、おもちも連れてっていいかな」
     私はふと思いついて、聞いてみた。
    「おもち? 猫を連れて行っても大丈夫かしら」
     本人?を見ると、ニャーンと返事をする。

    「調べてみて平気そうならいいんじゃない」 スマホで検索して、問題ないみたいと言うと
    「じゃあみんなで行きましょう」
    とママは嬉しそうだった。

     次の週末、私たちは早起きをして山登りへ行く。パパは仕事が忙しいみたいで出勤だ。でもおもちが一緒だからそんなに寂しくなかった。
     麓ふもとまで電車に乗って駅を降りる。空を見上げると、空気が澄んでいた。

    「やっぱり山は空気がおいしいね」
    と言いながら登る。背中のリュック型のキャリーケースにいるおもちもニャア、と言った。

     山道の両側にもちらほら紅葉があって、見物しながら登っていく。途中に蕎麦のお店もあった。でもお昼前だし、頂上で食べる事にしてさらに進む。
     風が気持ちいい。ずっと坂なので、さすがに汗をかいてくる。最近運動不足のせいか疲れてきたので
    「ちょっと休もうか」
    と休憩をはさみながら登っていった。

     かなり歩いた頃、頂上が見えてくる。てっぺんに『七幡山しちまんやま山頂』と書いた木の板が立っていた。
     ママと交代で写真を撮っていると、ママより20歳くらい年上そうな女の人が
    「撮りましょうか」
    と言ってくれる。お願いして写してもらった。
     画面を見ると、楽しそうなママと私が納まっている。
    「記念になったね」と笑いあった。

     お店に入る前にベンチで一休みする。トン、とキャリーバッグを置くと、フタがはずみで外れたのか、ぴょん、とおもちが出てきた。
     あっ! と思ったが、彼はバッグの傍で前足と後ろ足を交互に伸ばした後、おとなしく座って紅葉を見ている。

    「きれいだね」
     私たちはおもちと一緒にその景色を眺めた。赤く染まった木々が重なって、燃えているようだ。ひらひらと葉っぱも落ちてくる。

    「あ、」
     見上げるとおもちもそちらを向き、彼の背中にもチラチラと赤い葉が散った。
     それを見ていると、葉がくるくると円を描きながらだんだん大きくなっていく。

     気がつくと、私はいつの間にか空を舞っていた。
    「わあ…!」
     驚いて、手足をバタバタさせる。
     下を見ると、木々や家が模型みたいに小さかった。美しい風景だったけど、足がすくんでしまう。

    「落っこちちゃう…」
     思わず震え出すと

    「まゆちゃん、落ち着いて」
    「えっ」
     見ると、おもちも空を飛んでいた。

    「今しゃべったの⁈」
    「ボクは話せるよ」
    「すごい…」
    「気づいてなかったんだ」
     そう言って笑うと、スイーッと空を泳ぐ。

    「待って! おもち、」
    「まゆちゃん、大丈夫だよ。君も泳げるから」
     励まされてこわごわ静かにすると、私の体も風に乗ってスーイ、と飛んでいく。

    「え、何これ?」
    「だから平気だって言ったでしょ」
     おもちは私と並んで空を進む。

    「どこに行ってるの? 私たち」
    「どこへだって行けるよ」
     そう言うと、おもちと私は空高く、どこまでもどこまでも飛んでいった。

                   了(1330字)


     Nolaノベルさんでも短縮版を投稿していますので、よかったらよろしくお願いします↓

     他の締切が近々で、9月末までに投稿できなかった_(:3 」∠)_
     10月の締切は早めに出します。

    ↓次の話


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