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Photo byplanetarian_t

leave (お題 任意の作家の文体を真似した小説)

    時雨

     こんにちは。この間コニシ木の子さんという方をnoteでお見かけして、記事を拝読したらとてもおもしろかったので、その方の催されている #なんのはなしですか というタグに参加させていただきます。
     詳細はよく分かっていないしこの短編が主旨に沿っているかよく分からないんですが、どうぞよろしくお願いします。
    (川上未映子さんをまねして書いてみました。うろ覚えなので微妙です)

    ***

     Leave

     私は少し前までは普通の女の子でした。いや、今でもふつうだと自分では思っています。……そう思いたい。でも周りからは変だと言われます。
     なぜなら私はちょっと物忘れがひどいんです。そう、前まではそれほどでもありませんでした。でもある時からだんだん変わってしまいました。それはたぶんそうじゃないかと思い当たる出来事があります。
     その日私は学校で体育があってずっと走らされたので、帰ってきてからもくたびれて何もする気になれなくて、いつの間にかうとうとうたた寝をしていました。そしたら夢の中で何かが天井から降りてきて(何なのかはよく分かりません。変な青緑色の、ねばねばと形のないものだった気がします)それが近づいてきて耳の中に入ってしまったんです。
     目がさめた私はびっくりして耳を逆さにしてトントンと片足でケンケンしてみたけれどそれは全然出てこなくて、あーたぶん夢だったのかなあ夢だといいなあなどと思いながらおやつを食べに1階へ降りていきました。

     それからだんだん物忘れがひどくなって同じ事を何度も友達に聞いたり、遊ぶ約束をうっかりすっぽかしたり、そのうち学校へ行く事さえ忘れるようになりました。
     これではいけないと、手帳くらいの大きさのノートを買ってきて覚えておく事を書いてみましたが、それを見るのを忘れ、書き留める事を忘れ、しまいにはノートの置き場所を忘れてしまいます。そうして何度もノートを買っては失くしたのでその方法はもう諦あきらめめました。
     そのうちに手や足を忘れるようになって、幼なじみのユキオが見つけた時は持って来てくれたけど、忘れる頻度ひんどが多すぎて私の体はどんどんなくなっていきました。

     ふと気づくと、私はぼーぼーと枯れた草が生い茂っている野原のような所にいました。視界には真っ青な澄すみきった空が映っています。私はそれを見て、ああ私はとうとう私を忘れてきてしまったんだなあとぼんやり思いました。動こうにも手も足もどこかに忘れてきて、這はっていくこともできない。ここへどうやって来たのかも家へ帰る道さえも忘れてしまった。私はぽろぽろと涙をこぼしました。声を上げて泣いても誰も返事をしてくれない。
     このまま幼なじみのユキオともマブのキョウとも会えなくなるんだろうか、そう思うととても悲しくてひいひいと声を上げました。

     涙はいくらでも出てきましたけど、下が渇いた土なのでそれはどんどん吸い込まれてしまって、後には何も残りませんでした。

                      了


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    ショートショート集『いつか君と遠く離れても』  1話から↓

     
     
     

    時雨

     
     
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