【エッセイ】桜の季節 雨の言葉
桜の開花も間近となった3月中旬の雨の日、テレビの情報番組で「さいかう」という言葉を耳にした。
どういう意味だろうと思ったら、この時期に降る開花を催促するような雨のことをいうのだそうだ。
字は「催花雨」。なるほど、という感じだ。

その後、各地で桜の開花がちらほら聞かれるようになった雨の日に、今度は「いくかう」という言葉を耳にした。
育み、花の成長を促すような雨のことをいうのだそうだ。
字は「育花雨」。これまたなるほど、という感じだ。

他にも類似の言葉があるのだろうかと思い、調べてみた。
催花雨(さいかう)
早く咲けと花をせきたてるように降る春の雨のこと。春の季語。
養花雨(ようかう)
花の成長を促す雨。育花雨(いくかう)とも。春の季語。
春時雨(はるしぐれ)
突然降ったり止んだり、断続的に降る春の雨。春の季語。
立春(毎年2月4日頃)から桜が咲く前まで。
桜が咲く頃の時雨は「花時雨(はなしぐれ)」。
花の雨(はなのあめ)・花雨(かう)
桜の咲く頃に降る雨、または咲き満ちる桜の花に降る雨。春の季語(晩春)。
桜雨(さくらあめ)
桜が咲く頃に降る雨。「桜流し」とも。
育花雨は養花雨ともいうようだ。
養育という言葉もあることだし、育花雨と養花雨も、同じように発生したのだろう。
古語においては「花」は桜を指すことが多い。
催花雨も育花雨も養花雨も、桜を思って生まれた言葉なのだろう。
私は長いこと俳句を作らないで来たが、多くの言葉が春の季語とされていることから、古来より俳句を作る人には親しまれて来たことが伺える。
桜の季節の雨1つ取っても多くの言葉が存在する。
それは日本人の自然に対する細やかな感性によるものであり、機微を表現するために様々な言葉が生まれたのだろうと想像される。
そして、そんな多くの言葉が生まれるほどに、桜を気にかけ愛し慈しむ心、桜に寄せる思いが、日本人の中に脈々と受け継がれて来たことを感じさせられる。

今は海外から日本の桜を見に来る観光客も増えたようだ。
来日しながらも「まだ思ったほどは咲いてなかった」とインタビューに答える外国人の様子を、数日前にテレビで見た。海外にいるとタイミングを合わせるのも簡単ではないかもしれない。
しばらく前にパートナーから花見の誘いを受け、この記事を投稿する今日が予定日だったが、数日前から雨が降ることがわかっていたために、4月以降に延期を決めている。
まだ満開の知らせを聞かない私の住む地方に降る今日の雨も、育花雨であり養花雨なのだ。

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