
戦国ロマン 浅野長吉 あとがき
あとがき ── 天下を止めぬために
歴史は、 派手な武功を好む。
誰が討ち取ったか。 誰が裏切ったか。 誰が天下を取ったか。
だが、 天下とは、 それだけで動いていたのだろうか。
兵糧。 船。 道。 褒美。 不満。 そして、人。
誰かが、 止まらぬように回し続けていた。
目に見える武功とは違い、しかも当時の価値観の中では評価されづらく、孤独を抱えていたかもしれない。
財務省、農水省、国交省等の複数の省庁の事務次官を兼任しているような、そんな状態だったのかもしれないし、そういう場所にいたのかもしれない。
目立つことは少ない。 だが、 誰よりも多くの面倒事を抱えていた。
そして何より、 人を見ていた。
若い武将たちの熱も。 奉行衆の理も。 権大納言の器も。
誰かを切り捨てるのではなく、 天下を止めぬように動かしていた。
それは、 豪胆な武将とは違う。
だが、 別の意味で、 胆の据わった男だったのかもしれない。
「兄上」と慕う前田利家はそんな状況での清涼剤だったかもしれない。
「兄上」
その二文字だけが、 長吉をただの奉行で終わらせなかった気がしてい。
