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[連載小説]月下の約束 逢魔が時に出逢ったもの(全10話)第四話 吸血鬼の正体



    (あらすじと登場人物)
    オカルト大好き、筋金入りの面食いの女子高生ゆかりの前に現れた、美形の自称吸血鬼の薫
    求婚されたはいいけど
    彼は本物の吸血鬼?それとも
    異種間ボーイ・ミーツ・ガールのちょっとホラーのラブコメディ

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    第四話 吸血鬼の正体

     朝のニュースは、その事件一色だった。

    『市内で発生した殺人事件について、新たな進展です。警察は本日未明、容疑者の男を確保しました——
     昨晩、匿名の通報があり——
     確保直前に自殺を図ったものの、命に別状はなく、現在は病院に収容されています』

     画面に映し出された顔を見て、ゆかりは息をのんだ。

     ——間違いない。

     あの夜、公園でふらつきながら現れた男。
     闇の蝶に包まれ、消えたはずの犯人だった。

     ニュースは続く。

    『容疑者は女性を誘拐・監禁し、注射器で血液を抜き取るという、極めて猟奇的な犯行を行っていました。
     被害者は今後さらに増える可能性も——』

     殺人犯は、人間だった。
     しかも連続犯。

    (……捕まった?)

     あの男は、確かに“消えた”。

     闇に覆われ、蝶に喰われるように。

     それなのに今は、病院のベッドの上で警察に囲まれている。

     ゆかりは、テレビを消した。

     心臓の音が、やけにうるさい。

    (昨日のこと……本当に現実だったの?)

     夢にしては、あまりにも鮮明だ。
     恐怖も違和感も、まだ体の奥に残っている。

     ——そして、あの吸血鬼たち。

    ---

     登校途中。

     いつもの道は、いつも通りだった。

     あの古い信号機も、いつも通り童謡を流している。
     ——前から、ずっとそうだったのだ。

     なのに、なぜ昨日はあんな感覚に襲われたのか。

     坂道も、空も、何も変わらない。

    ---

     学校では、事件の話題で一時は盛り上がったが、すぐに消費された。

    「捕まってよかったよねー」
    「怖かったけど、もう安心だ」

     “安心”。

     その言葉だけが、ゆかりには浮いて聞こえた。

     授業も、いつも通りに進む。

     古典の時間。
     ヒカルも、いつも通りだった。

     静かな教室。
     黒板にチョークが走る音だけが、やけにはっきりと聞こえる。

     ——何事もなかったかのように、日常は続いていく。

    ---

     そして、放課後。

     すれ違いざま、ヒカルが小さく言った。

    「昨日の約束。来て」

     その一言で、日常が揺らぐ。

    ---

     誰もいない廊下を進む。

     指定されたのは、旧校舎の空き教室だった。

     ドアを開ける。

     中には、すでに二人いた。

     ヒカルと、薫。

     薫は開け放たれた窓の桟に腰かけていた。
     まるで、そこから入ってきたかのように。

     三階だというのに、違和感がない。

     ロングコートの裾が風に揺れる。
     中はラフな服装なのに、雑誌モデルのように着こなしている。

     夜に見たときは、妖しく大人びた雰囲気だった。

     だが昼の光の下では、少し幼く見える。

     ——それでも、圧倒的に整っている。

    (……美少年)

     ゆかりの好みど真ん中だった。

     危うく見惚れかけて——はっとする。

    (……いや、ちょっと待って)

     吸血鬼なのに、昼間?

     そんな疑問をよそに、薫はぱっと顔を明るくした。

    「噛みつかせて?」

    「こら!」

     即座にヒカルが頭を叩く。

    「いきなり何言ってんの!」

     ゆかりは、ゆっくり息を吐いた。

    (……やっぱり夢じゃない)

     昨日の出来事は、全部現実だ。

    (でも、この人たち……吸血鬼じゃない?)

     少なくとも、昼間に普通に学校にいる。

    「あの……吸血鬼なのに、太陽光は大丈夫なんですか?」

     ヒカルは軽く笑った。

    「彼には日差しも十字架も効かないよ。もちろん、僕にもね」

     ゆかりが握っていたクロスのネックレスに、ちらりと視線を向ける。

     見抜かれていた。

    ---

     窓から柔らかな風が入る。
     午後の光が教室を満たす。

     とても、怪異の話をする空間には思えなかった。

    「まず、昨日の事件の話からしようか」

     ヒカルの声が、真面目になる。

    「君が見た犯人は、人間だ」

    「連続殺人だよ。少なくとも四人。誘拐・監禁して、血を抜いていた。
     徐々にエスカレートして、自己顕示欲も出てきた。だから遺体を人目に晒した」

     淡々とした説明。

    「あの女性は、五人目になりかけた」

     ゆかりは息をのむ。

    「全部“吸血鬼の仕業”にされそうだったからね」

     ヒカルは静かに言った。

    「だから、やめさせた」

    「え……?」

    「ニュースでもネットでも、同じ言葉が並び始めてた。
     “血を抜かれた”“夜に現れた”“正体不明”」

     少しだけ、声の温度が下がる。

    「昔からそうだ。分からないものは、全部〈隠〉のせいにされる」

     薫が肩をすくめた。

    「正直、迷惑なんだよね。吸血鬼の評判、悪くされるの」

    「迷惑……?」

    「人間が勝手に殺して、それを“吸血鬼の仕業”にされるなんて最悪」

     そして、あっさりと言う。

    「だから、制裁した」

     感情はなかった。

     怒りでも、正義でもない。

     ただ——当然。

     その温度のなさに、ゆかりは言葉を失う。

    「……それで、殺したの?」

    「死んでないよ」

     ヒカルが補足する。

    「闇の蝶の鱗粉で、全身が火傷みたいになってるだけ」

    「だけって……」

    「やったことを考えれば、当然だ」

     ヒカルの声は低い。

    「むしろ、死んだほうが楽だったかもしれない」

     薫が、にこっと笑う。

    「殺してないし、優しいでしょ?」

     ——何かが違う。

     この“優しさ”は、人間のそれではない。

    「俺、静かに暮らしたいのにさ。トラブルとか面倒なんだよ」

     軽い口調で続ける。

    「それにさ、普通の妖怪だって無駄に人を食ったりしないのに、なんであいつ殺してたの?」

     首をかしげる。

    「なのに、自分は助けてくれってさ。意味わかんないよね」

     正論だった。

     だが——

     その言葉は、あまりにも冷たかった。

     ゆかりの背筋を、ぞくりとしたものがなぞる。

     これは。

     人間とは、違う。

                   第五話に続く




    あとがきになります
    登場人物の紹介をしようと思い、イラストと描いてみました
    薫は超美形という設定なのですが、これでいいのか💦
    ゆかりもいちおう美少女という設定です

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    日々のアレコレをnoteに綴っていきたいと思っております マンガや小説などにも手を出してます、イラストはAI生成イラストと両方あります。それらもゆるく投稿してます 物語投稿サイトTALESにも投稿

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