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【第2話】家とは提示されていた金額では買えない

    買えると思った。だって私の年収より安い。

    もちろんその金額を「安い」と言い切れるほど
    余裕がある訳ではない。

    ただ、家というものは何千万円もするものだと思っていたので、年収以下という数字を見ると、急にこちら側へ降りてきた感じがした。

    「これなら、もしかして私でも買えるんじゃないか」と、うっかりそう思った。
    ところが、提示価格では買えないんだよね。

    登記代がいる。仲介手数料もいる。契約に伴う細々した費用もある。

    買ったあとには大量の残置物が待っているし、古い家なので当然直すところもある。

    なんと言ってもぼっとん便所だ。風呂も頭を傾げるしかない造りで、無理矢理増築してある。

    安い家というのは、安く買える家ではなく
    安い値札がついている家なのかもしれない。

    もちろん銀行へローンの申込みに行った。
    キャッシュはないし。

    しかし私は正社員である。ふははははは。

    まあ、この時はメンタルの調子を崩して
    休職中だった。

    家は古い。一部は違法増築。

    しかも、その増築部分が市道にほんの少し
    はみ出している。

    買おうとしている本人は休職中。

    並べてみると、銀行から見れば
    あまり景気のいい顔ぶれではない。

    それでも物件価格は年収以下だ。
    何とかなるんじゃないか、と思った。

    最初にネットバンクに相談に行ってみたら
    価格と年収を見て
    「まったく問題ないと思いますよ」と言われた。

    しかし、だがしかし。

    一件目は、違法増築部分が市道に
    はみ出していることが問題になった。

    ほんの少し。
    しかし、ほんの少しでもアウトはアウトらしい。

    役所へも何度かアプローチを変えて話をしてみたが全く埒が明かない。

    ここで半年ほど経過。

    諦めて、地元の別の銀行へも申し込んだ。

    その審査を待っている間に
    不動産屋から連絡が来た。

    「これ以上融資が延びそうなら、一旦話を白紙に戻しましょう」

    げっ。
    前回欲しかった家は、内覧したその日に売れた。

    今度の家はしばらく動きがなさそうだと思っていたけれど、不動産屋だっていつまでも私の融資待ちをしてくれる訳ではない。また買えないのか?

    嫌だ。
    今度こそ、欲しい。

    そして二件目の銀行からは
    めちゃくちゃ早く結論が出た。

    こちらの理由は築年数。古すぎるらしい。


    私の年齢でも収入でもなく

    家が古い。
    家がちょっと道路にはみ出している。

    家の方が審査に落ちている。

    お前かよ。

    私は買う気満々なのに
    物件側が金融機関に嫌われている。

    まあ、買い手の私も休職中なので、あまり家のことばかりは言えない。

    安い中古住宅には、安いなりの事情がある。

    さて、困った。物件はまだある。
    欲しい。でも住宅ローンは使えない。

    用途を限定されないフリーローンならどうだろう。借りられる可能性はある。

    ただし、デカいデメリットがある。金利だ。

    住宅ローンが使えないから
    金利の高いフリーローンで家を買う。

    家は安い。借りる金は高い。

    せっかく年収以下の家を見つけたのに、フリーローンにした途端、この家の
    「安い」という最大の長所がかなり薄くなる。

    不動産屋からは「白紙に戻しましょう」
    と言われ始めている。

    悠長なことも言っていられない。
    申し込んで審査を待った。

    通った。

    そして、金が口座に振り込まれた。

    おお。これで買える。

    金利は高いが、とりあえず金は用意できた。
    と思った、その日。

    付き合いの長い友人から連絡が来た。

    「蓮流ちゃん、欲しい家どうなったの?」
    よくぞ聞いてくれました。全部ぶっちゃけた。

    彼女はちょっと考えて答えた。

    「全額、無利子で貸すよ」

    銀行に相談し、一件目に断られ、二件目の結果を待っている間には不動産屋から白紙に戻す話まで出て、二件目にも断られた。

    ようやくフリーローンを申し込み、審査が通り、金が振り込まれた。

    そこまで全部終わったその日に、
    友人は、必要な分を全額貸してくれると言う。

    マジか。いや、駄目だろう。

    ええっ、いいの?


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