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昼に新幹線を予約して、夜には仙台にいた ― 優柔不断な私の思い立ち仙台・松島旅

    昼に新幹線を予約して、夜には仙台にいた、その事実だけが少し遅れて実感として追いついてきた。

    私は普段、かなり優柔不断だ。
    買い物ひとつでも数日迷うし、迷ったままやめることも多い。

    だから、予定のない旅をその日のうちに決めるのは、私にとってはかなり珍しいことだった。

    金曜日、有休を取っていた。
    特に予定はない。

    家でゆっくりすることもできたけれど、それだけで一日を終えるのは少しもったいない気がした。
    今年は、行きたいと思った場所には行くと決めていた。

    その中で、ずっと気になっていた場所がある。松島だ。
    ただ、思い立って行くには少し距離がある。

    行こうか、どうしようか。
    そう考えているうちに昼になり、気づいたときには新幹線を予約していた。


    仕事を終え、駅へ向かう。
    新幹線に乗った瞬間、もう後戻りはできないはずなのに、不思議と落ち着いていた。

    夜、私は仙台にいた。


    駅の周辺は人が多かった。
    仕事終わりの人、観光客、地元の人たち。

    その賑わいの中で夕食を選ぶのは少し疲れそうで、ホテルで食べることにした。

    選んだのは、たんや善治郎の牛タン弁当。
    出来上がりまで時間がかかるとのことで、先にホテルへ向かう。

    チェックインを済ませ、少し休んでから再び駅へ戻った。

    途中で笹かまぼこを買い、気になっていたずんだシェイクにも手を伸ばす。
    牛乳が少し苦手な私は、正直に言うと好みの味ではなかった。

    それでも全部飲み切った。
    食べ物を残すことが、どうしても好きではないからだ。

    ホテルに戻り、夜ごはんを広げる。
    牛タン弁当はやはりおいしく、笹かまぼこも自然と手が伸びた。

    思い立って来た街の夜は、静かに過ぎていった。


    翌朝。

    旅の朝は、少し特別だ。
    朝ごはんの時間が、私は好きだ。

    その土地の空気の中で食べる朝食は、普段とは少し違う時間になる。


    エレベーターに向かう途中、観光客らしき二人組と乗り合わせた。
    会話のトーンが少し鋭く感じられ、空気が少し重くなる。

    その後、エレベーター内でため息が聞こえた。
    何に対するものかは分からない。

    ただ、その瞬間、空気がさらに重くなったように感じた。

    私はこういう空気の変化に、少し敏感すぎるところがある。

    二人とは違う階で降りたとき、少しだけ疲れていた。


    朝食会場に入る。
    料理を少しずつ取る。

    ホテルの朝ごはんは、やはり楽しい。

    食べているうちに、さっきの違和感は少しずつ薄れていった。
    完全には消えないけれど、気持ちはゆっくりと整っていく。

    やっぱり私は、朝ごはんの時間が好きだと思った。


    仙台から電車に乗り、松島海岸駅に着いた。

    平日でも観光客は多く、駅の外には海の気配が広がっていた。
    風は少し冷たいけれど、空は晴れていて、思わず息を深く吸いたくなる。

    海の匂いと、遠くに浮かぶ島々。
    ここから旅が始まるのだと、静かに感じた。


    遊覧船に乗るか迷った。
    チケット売り場には人が多く、少し疲れそうだった。

    私は少しだけ迷って、乗らないことにした。
    その代わり、歩いて回ることにする。


    海と店の間の通りを進む。
    どこか懐かしい道のように感じた。

    足元、風、波の音。
    歩くうちに、呼吸が自然と深くなる。

    その途中で、瑞巌寺の門が目に入った。

    予定にはなかった。
    でも、朝の静けさの中でなら入ってみたいと思った。


    門をくぐると、空気が変わった。

    視界が開け、急に世界が静まる。
    その静けさは、落ち着くというよりも、すっと身体の内側が軽くなるような感覚だった。

    杉並木の参道を歩くと、まっすぐな道の安心感と静けさが重なり、自然と呼吸が整っていく。

    本堂の中では、木の香りや光の入り方に、どこか懐かしさを感じた。
    静かな時間の中で、気持ちがゆっくりほどけていく。


    瑞巌寺を出て、福浦橋へ向かう。

    橋を渡る前から、少し高揚していた。
    行ってみたかった場所だという実感が、遅れて追いついてくる。


    橋を渡る。

    一歩ごとに、気持ちが静かになっていく。
    海の音、風の気配、鳥の声。

    周囲に人はいるのに、それらが遠のいていくようだった。
    いつの間にか、自分の内側に意識が向いていた。


    島の中では道に迷った。
    同じ場所に戻ってしまうこともあった。

    それでも、分岐を自分で選びながら進むうちに、見晴台にたどり着いた。

    そこには誰もいなかった。

    静かな海と空が広がっていて、ただそれを眺める時間があった。


    旅を振り返ると、特別なことをしたわけではない。

    ただ、思い立って動き出しただけだ。

    それでも、動き出したあとに見える景色は、思っていたよりずっと穏やかで、少しだけ遠くまで連れていってくれた気がした。

    また行きたいと思ったとき、また同じように迷うのだろう。
    それでもきっと、どこかで「今だ」と思う瞬間が来る。

    そのときの私は、また少しだけ遠くへ動けるのかもしれない。

     
     
    30代会社員。日々の出来事や考えたこと、旅先や和菓子との出会いを記録しています。デイトレや資格勉強にも挑戦中。人との時間や何気ない日常を言葉に残しています。YouTubeでは日本文化や習慣を発信中。

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