
🧩 KTノート|フェイズ3|ローカルコンテクストの分析|Adapt knowledge to local context
フェイズ2で、
👉「何を根拠に変えるのか」を定めました。
そこでは、
・どの知識を使うのか
・どの知識が信頼できるのか
・どの形なら現場で使いやすいのか
を整理し、
「使うべき知識」を定義してきました。
次に問われるのは——
👉「それは、この現場で本当に動くのか?」
という問いです。
フェイズ3は、知識を現場で使える形にするために、
ローカルコンテクスト(現場の文脈)を把握し、
知識をその現場に合わせて“適応・翻訳”する段階です。
どれだけ質の高いエビデンスでも、
文化、資源、役割分担、既存プロセスとの適合性が低ければ、
実装は進みにくくなります。
このフェイズでは、
「現場を変える前に、現場に合わせる」ことに徹底的に集中します。
実際の教育現場や管理の場面で、
フェイズ3 がどのように現れるかを示したのが、以下の記事です。
フェイズ1で「問題として定義されたもの」は、
そのままではまだ現場で動く形にはなっていません。
同じ課題であっても、
現場によって起きている理由も、止まっている場所も異なります。
ある現場では「人の問題」に見えるものが、
別の現場では「構造の問題」として現れることもあります。
👉つまり、
問題は“同じように見えても、同じではない”ということです。
フェイズ3は、
このズレをほどいていく段階です。
・なぜこの現場では動かないのか
・どこで止まっているのか
・何があれば動き出すのか
それを、
文化、人、構造、制約の中で見ていきます。
そしてここで初めて、
👉「この現場では、どうすれば動くのか」
という問いに変わります。
フェイズ1が「対象を定める段階」だとすれば、
フェイズ3は「動かす条件を定める段階」です。
このプロセスを経ることで、
実装は「やらせるもの」ではなく、
👉「この現場なら動ける形」
へと変わっていきます。
まずは、その“違い”がどこにあるのかを見てください👇
KTAフレームワークの概要はこちらでご確認ください👇
🔹フェイズ3の位置づけ
KTAにおけるAction Cycleでは、
👉 知識はそのまま適用されるのではなく、現場の状況に応じて調整、適用される
ことが前提になっています。
したがってフェイズ3は、
👉「知識を現場に合わせて翻訳する段階」
と捉えると分かりやすいです。
ここでの「ローカル」とは、
単に地域性だけを指すのではありません。
・病院、病棟 、部署
・事業所
・地域
・法人など、
知識が実際に使われる単位すべてが含まれます。
KTAでは、
高品質なガイドラインであっても、
それだけでは実装は進まないと考えます。
知識は、
・既存の業務構造
・制度
・人的資源
・役割分担
・文化
などに適合して初めて、
現場で動き始めます。
そのためフェイズ3では、
👉 「正しい知識」よりも、
👉 「この現場で機能する形」
を見つけていきます。
ここでの判断が曖昧なまま進むと、
・正しいはずなのに現場で使われない
・やらされ感が強くなる
・一部の人しか動かない
といった状況が生じやすくなります。
ただし、これらは単一要因ではなく、
コンテクスト不適合を含む複数要因の結果として
現れることが多いです。
🔍 ローカルコンテクストとは何か
ローカルコンテクストとは、
👉 その組織や現場に固有の
文化・構造・資源・相互作用・制約・促進因子の総体
を指します。
同じ法人でも、
事業所が変われば動き方は変わります。
同じ病院でも、
病棟が変われば意思決定の流れは変わります。
つまり——
👉 実装は「正しさ」だけでなく、「適切性(relevance)」「実行可能性(feasibility)」「受容性(acceptability)」「持続可能性(sustainability)」によって左右される
ということです。
またKTAでは、
ガイドラインや知識ツールを“そのまま適用する”のではなく、
・地域特性
・制度
・法律
・スコープ・オブ・プラクティス(法律や規制によって実施を許可されている「業務の範囲」や「行動の限界」)
・既存のケアモデル
などを踏まえて調整する必要があるとされています。
👉 「良い知識」だけではなく、
👉 「その場で機能する形」へ変換することが重要
ということです。
🧭 コンテクストは何を見ればいいのか
フェイズ3では、
以下の5つの視点で現場を見ていきます。
① 文化(Culture)
・意見を言いやすい雰囲気か
・ミスが共有されるか、隠されるか
・相談は形式的か、自然発生的か
👉「正しいこと」が通る文化かどうか
② 人(People)
・キーパーソンは誰か
・実際に影響力を持っている人は誰か
・新人とベテランの動き方の違い
👉「誰が動くと現場が動くか」
③ 構造・プロセス(System / Process)
・情報共有の導線はどうなっているか
・評価や介入の流れは決まっているか
・ルールと実際の運用にズレはないか
👉「仕組みとして回るかどうか」
④ 制約(Constraint)
・時間、人員、設備
・スキルの偏り
・既存業務との競合
👉「やれない理由はどこにあるか」
⑤ 促進因子(Facilitator)
・意欲の高いスタッフがいる
・既に使われている仕組みがある
・データや実績が蓄積されている
👉「どこを使えば前に進むか」
📌 ポイント
ここで重要なことは、
👉「障壁を消す」ではなく、
👉「構造として扱う」ことです。
さらに実務では、
👉 障壁を特定し、優先順位をつけて対処する
という視点が不可欠です。
すべての障壁に同時に対応するのではなく、
・影響が大きいもの
・短期間で改善可能なもの
・他の要素に波及するもの
から設計していきます。
🧪 どうやってコンテクストを把握するのか
コンテクストは「感覚」だけではなく、
複数の方法で捉えます。
● 日常の観察
・会話の流れ
・カンファレンスの発言と沈黙
・実際の行動パターン
● インタビュー/フォーカスグループ
・現場の困りごと
・なぜそれが起きているのか
・何が現場を止めているのか
● 既存データの確認
・アウトカムのばらつき
・実施率、継続率
● 簡易アンケート
・認識
・負担感
・理解度
👉 コンテクストは「見ようとした瞬間に構造として見えてくる」
またKTAでは、
エンドユーザーを巻き込みながら適応を進めることも重視されます。
※エンドユーザー = その知識を最終的に使う人・影響を受ける人
現場を知らないまま“正しさ”だけで実装すると、
受容されず、
実際には動かないことが多いためです。
そのためフェイズ3では、
👉 「現場を分析する」だけでなく、
👉 「現場と一緒に翻訳する」
という姿勢が重要になります。
🩺 現場で起きていることをどう捉えるか
例えば——
● 新人教育の属人化
→ 指導者の問題ではなく、「教育構造の不在」
● 事業所間の質のばらつき
→ 個人能力ではなく、「評価・意思決定の不一致」
● 長期離床が進まない
→ 意識の問題ではなく、「業務構造と優先順位の設計」
ここでの転換は重要です。
👉 問題を「人」から「構造」に置き換える
ただし同時に、
個人要因、知識要因、組織要因など
複数レベルの要因が絡み合うことも前提として捉えます。
つまり、
👉 「誰かが悪い」ではなく、
👉 「何が噛み合っていないのか」
を見ていく段階です。
✨ フェイズ3でやっていることの本質
フェイズ3は、
単なる現場分析ではありません。
やっているのは——
👉 「知識が動く条件を定義すること」
です。
ここが整理されると、次のフェイズで
・どの障壁に介入するか
・どの促進因子を使うか
・どの順番で実装するか
が明確になります。
さらに言えば、
👉 「やらせる設計」ではなく「自然に回る設計」に変わる
のがこのフェイズの価値です。
また、適応は「エビデンスを弱めること」ではありません。
KTAやADAPTEでは、
👉 エビデンスの質を保ちながら、現場との適合性を高める
ことが重要視されています。
つまりフェイズ3は、
👉 「知識を曲げる」のではなく、
👉 「知識を届く形へ変える」
段階とも言えます。
⚠️ よくある誤解
👉 「コンテクストを把握すれば実装はうまくいく」
これは正しくありません。
コンテクスト把握は、
👉 成功のための前提条件のひとつです。
実装は、
・知識の適合
・障壁への対応
・関係者の関与
・継続の設計
これらが組み合わさって初めて機能します。
また、
👉 「現場に合わせる=現場に迎合する」
でもありません。
必要なのは、
👉 「実装可能性を高めながら、エビデンスの核を守る」
ことです。
🧭 フェイズ3のゴール
このフェイズのゴールは、
・現場の制約と強みが可視化されている
・知識をその場に合わせて調整できる
・次のフェイズで具体的な実装戦略を設計できる
状態をつくることです。
ここが整理されると、
👉 「なぜ動かないのか」が感覚ではなく構造として説明できる
ようになります。
🩵 おわりに
フェイズ3は、
👉「現場を変える前に、現場に合わせる」段階です。
ここを飛ばすと、
・正しいのに使われない
・一時的に動いても続かない
という状態に入ります。
逆にここが丁寧だと、
👉 実装は「やらされるもの」ではなく「自然に回るもの」
になります。
次回は、
🧩フェイズ4:障壁・促進因子の評価へ進みます。
ここから、実装は“設計のフェーズ”に入ります。
参考文献
2014 Applying the Knowledge to Action (K2A) Framework: Questions to Guide Planning👇
https://www.cdc.gov/chronic-disease/media/pdfs/k2a-framework-6-2015.pdf