
ハッピーライティングマラソン#63「あなたを支えてくれている人は、誰ですか?」
お墓参りのため、ふるさとへ一人で行った。
高速バスは満員だった。
だが、ふるさとの停留所に到着したとき、人の気配が感じられない。歩いているのは私だけ。
道路の周辺は、野草でいっぱい。
商店街だったところも、シャッターが降りていて、どの店だったかもわからない。
暑い陽ざしに、汗をぬぐった。
私が幼い頃、この時期は長袖で十分過ごせた。
今は半袖以外の選択はない。
とぼとぼ坂道をのぼって、お寺に着いた。
納骨堂なので、お寺の中に入る。
なんとなく人がいる。
なんとなく。
お経を読むために出張してるお坊さんが、廊下の椅子に座っていた。
でも、誰も声をかけない。
私は既にお布施を納めていた。
「一本のろうそくが消えるまでいよう」
そう思って、納骨堂の前に座った。
「あっ」
思い出したように、私はカバンから小さなおにぎりを二つ出した。
朝早く、夫がにぎってくれたおにぎり。
鮭とわかめが混ざって、海苔で巻いた丸いおにぎり。
私はおにぎりを食べながら、ご先祖様とお話をした。
いつもありがとう、という感謝の意を述べるつもりだった。
でも、実際口から出た言葉は違った。
「ねえ、なんでいつもこうなるの?」
「ご先祖様は、どこまで私を修行させるのかな」
「いつまで続くの? この矛盾した辛さ……」
「私は、これ以上、現世を生きるのはもういいよ」
あらら、愚痴ばっかり。
そんな言葉を言いながら、おにぎりをパクつく。
おにぎりの程よい塩加減と、ろうそくの火が、自分で答えを施すように感じた。
「ろうそく一本って、結構時間かかるなあ」
おにぎりを食べ終えてしまった私は、じっと納骨堂の火を見つめていた。
「おにぎり、おいしかったなあ」
ふと、そう思った。
なぜか、おにぎりが恋しくなってきた。
今、食べたばかりなのに。
でも、それはうちの夫のことかもしれない。
心の内では「私が夫を支えている」と強く思っている。
けれど、自分一人ぽつんと、ご先祖様に対面していると、不思議に夫のおにぎりをにぎっている姿が目に浮かぶ。
「まあ、支えられてもいるのかな」
そんな気持ちになったとき、シューッとろうそくの火が消えた。
「さあ、帰るか」
私はお寺をでて、来た道を戻ってバス停に向った。
相変わらず、ぼうぼう生えている野草が目につく。
幼いとき、ひめじょおんで冠や腕輪を作ったものだ。
今は、ながーく伸び放題のひめじょおんに促されながらも、手にとることはしなかった。
帰り道、スマホが鳴った。
「ポテトサラダ作ったから、帰ったら一緒に食べようね」
「そうだよなあ~」
私は、夫の待つ帰り道を急いで歩いた。
高速バスの中で、私の頭は「ポテトサラダ」でいっぱいだった。