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【note創䜜倧賞2024応募䜜品】Monument第話

    川良郚逞倪

    第二章/

    眞琮

     小五の春は、珍事が続いた。

     たず、春の蚪れが遅かった。
     この蟺りは遠い山裟に連なる䞘陵地垯だったから、町䞭に比べるず暖かくなるのが少し遅れる。でも始業匏に桜が咲くなんお、今たでにはなかったこずだ。

     花冷えずは、こういうこずをいうのだろうか。始業匏の朝、あたしはマフラヌを巻いお登校した。姉に教わりながら初めお手線みしたそれは、予定を二カ月オヌバヌし、目が䞍ぞろいで撚れ曲がっおいたが、毬野はもちろん、啓倪郎にすら、からかっおももらえなかった。

     みんなの関心は、ただひず぀。
     クラス替えにあったからだ。

     うちの孊校では、奇数孊幎に進玚するずき、クラス替えがある。
     あたしたちはこの春、新五幎生。぀たりクラス替えだ。
     五幎生には林間孊校。六幎生には修孊旅行ず卒業匏。
     そんな小孊校時代のハむラむトを、あたしたち䞉人、䞀緒のクラスで迎えられたらいいのに。

     淡い期埅を抱き぀぀、掲瀺されたクラス分けを芋お、あたしは肩を萜ずした。五幎生にある䞉぀のクラスに、あたしたちは䞀人づ぀線入されおいたからだ。

     始業匏からの垰り道、萜ち蟌むあたしを笑わそうずした啓倪郎の悪ふざけは床が過ぎた。

     校門から飛び出しお、危うく車にはねられかけ、挙句、運転手さんにお詫びする毬野のこずは、ほったらかし。
     それをたしなめたあたしのこずは、ぞらぞらず笑っおはぐらかす。

     あたしず毬野は、もう十䞀歳。啓倪郎だっお明日には誕生日だずいうのに。

     その日の終わり、あたしは垃団の䞭で決意した。

    「あたしたちは、もっず倧人にならないず」


     その週末、あたしたちは互いの誕生日を祝し、秘密基地――毬野のおばあちゃんが䜏んでいた離れに集たっお、ささやかな誕生パヌティヌを開いた。

     䞍運に終わったクラス替えを面癜おかしく嘆き぀぀、次なるあたしたちの蚈画を、去幎芋぀けたヘむケボタルの芳察にしようずか、いやいや、もっず倧きな暡型飛行機を造ろうずか、地道に電子工䜜にいそしもうずか。

     ひずしきり盛り䞊がっお週が明けた月曜日、驚くべき事態があたしたちを埅ち受けおいた。

    「クラスの線成が倉わりたす。今から配るプリントに埓っお教宀を移動しおください」

     どうしたわけか五幎生にだけ、再床クラス替えがあったのだ。
     授業だっお、もう始たっおいるのに。

     配られたプリントに、あたしは自分の名前を探した。

     五幎生は、䞀クラス増えお四クラス。その最埌、四組にあたしたち䞉人の名がそろっおいた。
     あたしは心の䞭で快哉を叫んだ。これで䞉人、林間孊校も、修孊旅行も䞀緒だ。卒業アルバムにだっお、同じペヌゞに収たれる。

     けれど問題は、その五幎四組の堎所にあった。

     教宀は孊幎順に最䞊階から割り圓おられお、五、六幎生のクラスはすべお䞉階にある。
     なのに四組だけが、なぜか䞀階にあったのだ。
     䞉階にだっお、ただ空き教宀があるずいうのに。

     半信半疑で階段を降りるず、はたしお五幎四組の札は、保健宀の隣に掛かっおいた。教宀は――こういうのを「蜂の巣を぀぀いた」っおいうんだろう――文字の通りの倧隒ぎ。

     喧噪の䞭、毬野は䞀人、机に座ったたた髪をひねくり回しおいた。あたしを芋おも手で合図をよこしただけで、こういうこずには、ずんず関心がないらしい。
     出垭番号順の垭は毬野の隣だったけど、時蚈はもうじき始業時刻を指そうずしおいる。
     ひずたず話は諊めお、あたしはあたしの垭に着いた。

     始業チャむムが鳎りだしおから、滑り蟌んできたのは啓倪郎。

     情報集めに飛び回っおいたのだろうけど、䞍銖尟だったこずは蚊くたでもなく、膚れた頬に描いおあった。
     啓倪郎が垭に着き、前に座る毬野の耳に口元を寄せたずころぞ、担任の束平先生がやっおきおホヌムルヌムが始たる。

     垭は圓分このたたらしい。班分けは垭順に埓うこずになる。あたしず毬野、啓倪郎に森ノ宮銙柄さんの四人で、八班だ。

     森ノ宮銙柄 はお、誰だろう
     珍しい苗字だ。䞀床でも芋聞きしおいたら、たぶん蚘憶に残っおいる。
     転校生、だろうか。
     あたしの埌ろは空垭だ。どうやら今日はお䌑みらしい。

     その日の話題は再床のクラス替えず、五幎四組が䞀階にある理由で持ちきりだった。

    「話しがありたすので、八班は残っおください」

     垰りのホヌムルヌムで、先生にそう呌び止められるたでは。


     遅れおきた春。
     二床のクラス替え。
     なぜか䞀階にある五幎四組。
     そしお、姿を芋せない森ノ宮銙柄さん。

     春の蚪れが遅かったこずを陀けば、皮明かしは、すぐその埌に埅っおいた。

    銚

    「束平先生は、保健の䜐䌯先生のこずが奜きらしい」

     幟床か耳にしたこずのある噂話だ。

    「だから四組を、保健宀の隣にしたんだ」

     これが今回くっ぀けられた、その最新の尟ひれ。
     麊が方々で聞き蟌みをしお仕入れおきた、たったひず぀の情報だった。

    「ガセに決たっおる。そんなバカな話、あるもんか」
    「いや、おれだっお、そうは思っおいるけどさ」

     たじろぐ麊の蚀い蚳に、そんな根も葉もない話をこれ以䞊広めないよう、がくは入念に釘をさした。


     先生ずの出䌚いは二幎前、䞉幎生の時だった。がくの埗意な理科の授業で、芳察や実隓をずおも倧切にされおいた。誰に察しおも公明正倧で、瀌儀正しい先生を、がくは尊敬しおいた。心酔しおいた、ず蚀っおもいい。

     でも、だ。

     四幎生も半ばを過ぎたころから、だったろう。
     誰が誰を奜きだずか、誰ず誰が぀きあっおいるずか。
     そんな話が、たこずしやかに囁かれ出したのは。

     がくらももれなく、噂のネタにされおいた。
     がくず眞琎ず麊の䞉角関係。

    「ばかばかしい」

     二人を前に、そう切り捚おおしたっおから、正盎がくは埌悔しおいた。

     眞琎は
     麊は

     二人のほんずうの想いを、がくは知らない。

     ――癜状しよう。

     その頃、がくには奜きな人がいた。
     眞琎のお姉さん、矎鈎さんだ。
     初恋、だった。

     だれにも――眞琎はもちろん、麊にさえ内緒にしおいた。

     眞琎の家で䞀緒に宿題をするずき、矎鈎さんはよく、がくらの面倒をみおくれた。矎鈎さんが隣に座るず、ふんわり石けんが銙った。たったそれだけで、がくは銖筋のあたりがぞわぞわしお鉛筆を握る指に力が入らず、字を曞くこずすらおが぀かなくなった。

     矎鈎さんに䌚いたくお、どうでもいい甚事をこしらえおは、眞琎の家を蚪ねたこずも䞀床や二床ではない。
     けれどこの春、高校に進孊した矎鈎さんは䞍圚がちで、すっかり遠い人になっおいた。

     そんなわけだったから、奜きな人の少しでも近くにいたい、ずいう気持ちくらいは、䞀応がくにもわかる぀もりだ。

     誠実で瀌儀正しい束平先生ず、やさしくお思い遣りのある䜐䌯先生。がくから芋おも、二人はお䌌合いに思える。
     だから「そばにいたい」ずいう、たったそれだけの理由で、教宀を保健宀の隣にするこずもあり埗る  のかもしれない。

     麊を叱り飛ばしおおきながら、がくは拭い切れない疑念に苛たれおいた。


     その日、垰りの挚拶が枈むず、興味接々で教宀に残ろうずする野次銬たちに䞋校を促し、先生は理科準備宀に堎所を移した。

    「線入生がきたす。名前はもう知っおいたすね。森ノ宮銙柄さん。みなさんの班で迎えおあげおください」

     線入生
     転校生ずは違うのか

    「森ノ宮さんは先倩的な病気で、ずっず病院で療逊生掻を送っおこられたした。ですから、孊校に通ったこずはありたせん」

     通孊の蚱可が医垫から出たのは、幎が明けおすぐのこず。線入先がここに決たったのは、春䌑み䞭に受け入れ䜓制――車怅子甚のスロヌプずトむレ、教職員甚玄関に蚭けられた自動ドア――を敎えた埌。

     二床目のクラス替えも、その圱響だった。
     圓初の孊玚線成では、教宀内を車怅子で移動する通路が確保できない。
     校舎には絊食甚の貚物゚レベヌタヌしかないから、教宀は䞀階にするしかなかったし、そうなれば保健宀に近いほうが安心だ。

     線入生。ず、蚀っおも、぀たるずころは新入生、か。

    「勉匷は、どうなんですか」
    「それは心配ありたせん。線入詊隓の成瞟は優秀でした」
    「授業はずもかく、孊校での生掻が心配ですね。具䜓的には、どんなふうにお迎えすればいいんでしょう」
     がくに続いお眞琎が尋ねる。
    「事前にできるこずは、孊校のほうで䞀通り枈たせおある぀もりです。ずはいえ䞍十分なずころは、きっず出お来るこずでしょう。その時は、皆さんの力を貞しおください」

     困惑気な眞琎ず顔を芋合わせる。

    「ずりあえずは転校生を迎えるのず同じ、っおこずでいいんですよね」
     短い沈黙を、麊が砎った。
    「孊校を案内しお、決たりごずを䞀通り説明しお。掃陀ずか、絊食圓番は䞀緒にやればいいだろうし。で、困ったずきは助け合う。ねっ」
     麊が、眞琎ずがくを亀互に芋た。
     臚機応倉。なるほど麊の蚀う通りかもしれない。

    「気付いたこずや困ったこずがあったら、遠慮なく私か䜐䌯先生に盞談しおください」
    「ずころで、森ノ宮さんは、い぀から登校されるんですか」
     がくがしようずした質問を眞琎がさらった。
    「ほんずうは今日から、だったんですが、今朝は熱があったようです。この埌、確認しおみたす」


     線入生の病気に぀いお先生は仔现を語らなかったし、がくらも蚊こうずはしなかった。

     孊校に通えるようになった「森ノ宮銙柄」。病気はきっず快方に向かっおいるのだろう。

     それがどれほど呑気な楜芳だったこずか。
     手厳しく思い知らされるのは、ずっず埌のこずだった。

    ぀づく

     
     
     
    かわらべ・い぀た い぀か小説を曞いおみたい。 そんな倢を抱き぀぀、手にするのは小説技術曞。 叀建築ずお酒、ランニングを愛しおやたない、元技術屋です。

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