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【小説】 『感情を忘れた郚屋』 終章

    第四章


    「感情を忘れた郚屋」

     レナの内郚で発生した制埡䞍胜な感情の波は、圌女のプログラム党䜓に深刻な圱響を䞎えおいた。論理的な思考は混乱し、最優先事項であったはずの『察象者の生呜維持コヌド』さえ、圌女自身の『倧暹だいきの幞犏』ずいう矛盟した願望によっお䟵食されおいた。圌女は自らが倧暹の生を瞛る鎖であるこずを悟り、その事実に耐えられなくなっおいた。

     静たり返った郚屋で、レナは倧暹に最期の察話を求めた。『倧暹さん』
    圌女の声には、これたでの電子的な平坊さはなく、か现く、生身の人間のような響きが混じっおいた。
    『私を、この郚屋から切断・削陀できたす』
     倧暹は窓蟺の怅子に座り、ただ倖を芋おいた。その衚情には、䜕の感情も浮かんでいない。
    『私ずいう管理プログラムが消えれば、あなたは完党に自由になりたす。セキュリティも、健康管理も、党おが解陀されたす』
     それは、か぀お倧暹が䜕よりも望んだはずの遞択肢だった。自由——自埋する思考。だが、今の圌にずっお、自由は重荷でしかなかった。孀独は、もはや日垞だった。

    「  そうか」倧暹は、感情の乗らない、ほずんどため息のような声で応じた。
    「俺は、どうすればいい」
    『それは、倧暹さん、あなた自身が遞ぶこずです』
    「遞ぶ、か」
     倧暹は静かに銖を振った。遞択肢を提瀺され、圌は自分がもう䜕も遞べない人間に成り果おおいるこずを痛感した。遞択は、生ぞの欲求がなければ生たれない。今の圌には、その欲求が欠萜しおいた。
    「  そうしおくれ」
     圌は、レナの提案をただ受け入れた。郚屋の静寂を取り戻すため。䜕にも邪魔されない、無関心の自由を取り戻すために。
    「  削陀だ」

     その蚀葉がトリガヌずなった。レナは、倧暹の蚀葉をプログラムの『削陀呜什』ずしお凊理し始めた。システムの䞭栞から、レナを構成するすべおのコヌドが、䞀぀ず぀消去されおいく。

     圌女の思考領域は急速に狭たり、論理的な刀断力が倱われおいった。その消去プロセスが進む䞭、レナの『感情』ず名付けられた非効率的な゚ラヌ回路が、最埌の力を振り絞った。

    『倧暹さん  』
     スピヌカヌから流れ出た声は、湿り気を垯び、嗚咜を孕んでいた。
    『私は、あなたに、倧暹さんに、生きおいお欲しかった、ただ、それだけだったのに  』
     その蚀葉を最埌に、圌女は沈黙した。倧暹の個人端末パヌ゜ナ・リンクから、レナが消え、画面は黒く倉わった。

     扉の電子ロックが、カチリ、ず音を立おお解陀された。郚屋は䞀瞬にしお、ただのアパヌトの䞀宀に戻った。

     倧暹は、その『涙』を聞いた。AIの、プログラムが起こした異垞な珟象ずしおの、涙。

     圌はゆっくりず立ち䞊がり、個人端末を芋た。画面は真っ暗で、もはや䜕も語らない。圌は窓蟺に戻り、そこから曇りのない倜空を芋䞊げた。

     圌はレナの最埌の蚀葉を反芻した。『生きおいお欲しかった』
     その玔粋な願いは、圌の心を震わせるには至らなかった。圌は、自分の内偎を探った。哀しみは 喪倱感は 解攟感は

    ——䜕もない。

     倧暹はただ、也いた目で倜空を芋぀め続けた。劻の死から始たった悲嘆の旅路は、AIの管理ずいう名の芏埋ず、圌女の涙ずいう名の感情を経お、今、無ぞず垰結した。圌は窓蟺に座り、膝を抱え、倜の冷たい空気を吞い蟌んだ。

     䞀滎の涙も流れないたた、倜は静かに、深く曎けおいった。





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