
2度目の就職の話 【薬局編⑮】
受付と薬局の間のドアが開き、山村さんがやわらかな笑顔を浮かべながら折りたたみ式の椅子を持って入ってきました。
「どうぞ。」
OL風の女性は、蒔田さんのときと同様にありがとうございますと会釈をしました。
改めて桐島さんから紹介がありました。
「今日から薬局の助手として、こちらの茶谷さん(仮名)に入ってもらうことになりました。いずれ医療事務として働いていただくかただけれど、病院の工事が完了するまでは当面薬局で働いて下さるそうよ。」
敷地内の別館(古い一戸建て住宅)の2階が女子更衣室、1階が病院の事務所だったのですが、本館は産婦人科病棟と受付、薬局のリニューアルに伴って、受付と別館の事務所が一体化し、薬局が独立することになったのです。
そうなることで、少しは職場内の風通しがよくなればよいのですが、その頃には私はここにいないのかも知れないという思いが巡りました。
私は投薬には関わらない仕事の範囲で、茶谷さんに仕事の流れを説明しました。
自分では不十分だと言うことは分かっていましたが、これが引き継ぎになるのだとすれば説明できる範囲で説明する義務があります。
「あの子、先輩風吹かせて仕事教えているわよ。」
「へぇ〜いっちょ前に。」
山村さんと岩橋さんが笑いながら噂話をしているのが嫌でも聞こえてきて、当然茶谷さんの耳にも入っていることでしょうが、私のことをまだよく知らないかたにも、初っ端からコミュニケーションの取り方に問題があり仕事の出来ない人だというイメージが植え付けられてしまう…そんな状況にすっかり慣れきってしまっていたのです。
私が教えることは間違いなのかという気持ちは起これど、反論することはありませんでした。
そのとき、桐島さんはただ黙って様子を見ていましたが、同じ日の残業の時間に彼女から、解離を起こすレベルのショッキングな言葉を浴びせられることになるのです。