
午前四時、ダリアを抱く。破壊と再生
あらすじ
午前四時、誰にも見られてない時間に、
私は、静かに咲く。
この時間だけは、
何も演じなくていいような気がするから。
家庭とは、家族でありながら
誰とも繋がって居ない場所だった。
歯車を狂わせないように、
毎日ピエロのように笑って過ごしている。
そんな惰性の日々を続けて居たある日、
音葉は本当の居場所を求めて決心する。
『18歳、私、家出します』
突然、家出少女となった音葉の行く末とは。
辿りついた先で自分で居られる居場所を見つける。
はずだった。
けれど、何かが少しずつ狂い始める。
繰り返してしまうかもしれない。
気づかないふりをしていた違和感が、
やがて日常を飲み込んでいく
家族を信じられなかった家出少女が辿り着いた
新しい愛の形とは。
第1話
夜明け前、外はしずまりかえっている。
こんな時間に明かりが着いている家はうちくらいだ。
眠ることを諦め私は
冷蔵庫で冷やしていたグラスを持ち出しベランダへ出た。
バレないようにハイライトに火をつけた。
外にはこないだ貰ったダリアが枯れていた。
抱きしめながら室外機の下に隠していたストロングを飲んだ。
あの人の匂いがまだ、残ってるような気がした。
母の部屋はまだ暗いまま。
リビングでは父が、外から工作員が俺のことを監視しているんだと叫んでいる。この時間に玄関のドアを何度も開けたり、閉めたりしている。
いつもの事だ。
姉も気にせずスマホの推し活に夢中になりながら
カップ焼きそばを食べている。
時間の感覚が、もう分からない。
気づけば、どこでも同じ顔をしていた。
家の中でも、外でも。
泣きたいときほど、うまく笑えた。
まるで私は、ピエロだった。
午前四時、ただ泣きながら笑った。
『18歳、わたし、家出します』
手にはスマホと財布、持ち合わせていたのは
少しの覚悟と勇気だけ。
大阪行きのバスに、乗り込んだ。
勢いで飛び出したまま裸足だった。
足の裏が冷たかった。
でも、戻る気はなかった。
学校も、あの人も、向こうにあった。
だからじゃない、
ただ、そこしか思い浮かばなかった。
迷わなかった。振り返ることもないまま
バスの窓際に座り、外を眺める。
いつも見慣れた景色がどこか悲しかった。
背中には見えないものを幾つも背負っていた気がした。
もう二度と、この景色を見ることはない。
そう思ったのに、目を離せなかった。