
【超短編小説】目玉焼き乗っけごはん
「目玉焼き乗っけごはんがいっちゃん美味しい。」
お昼を食べながら、ナナセは思わずつぶやいてしまった。
卒業が近くなった今は、週に1日大学に行けばよく、ひとり家で昼食を済ませることが多くなった。
普段はカット野菜にドレッシングをかけたものと、白米と、納豆や唐揚げなどのタンパク質を組み合わせている。
サッと済ませがちな昼食でも、ナナセが特に気に入っているメニューがある。
「目玉焼き乗っけごはん」だ。
目玉焼きを作るのも普段は面倒なので、ごくたまにしか作らないが、このメニューからしか得られない「何か」を摂取したくなる時が、定期的に訪れる。
ナナセのこだわりは、黄身に完全に火が通らないうちに、目玉焼きをフライパンから引き揚げて、お茶碗によそった白米に乗せることだ。
アツアツのごはんで加熱されることまで計算して、半熟のちょっと手前で乗っけてしまうのがミソだ。
味付けに、黄身の上に軽く塩胡椒を振って、全体に醤油を垂らす。
ここから至福の時間が始まる。
まず最初に、黄身を目がけて上から下に箸を入れる。黄身がトロッと出てきて、何となくフォンダンショコラを思い出してしまう。
それをすぐに、下の白米と軽く混ぜ合わせる。
黄身の上にうまく醤油がかかっていると、醤油の黒、黄身の黄色、白米の白の魅惑的なマーブルが見られる。
そして、トロトロの黄身が絡み付いた白米と、何もかかっていない白米とを、3対7の比率ですくう。
箸で持ち上げると、その画は息をのむほど美しい。
顔に近づけて、醤油の香りと湯気を感じてから口に運ぶ。
幸せの味が口の中いっぱいに広がる……
目玉焼き乗っけごはんがいっちゃん美味しい。
これを食べている間は日々の忙しさを忘れることができる。
食事という行為に集中だけすればいい。
高級なわけでも、手間がかかるわけでもない。
何ともコスパのいい、ナナセだけの幸せの摂取方法である。