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【うちの居酒屋・特別線】極䞊パシりの䞋克䞊ず、䞖界䞀矎味しいご耒矎ビヌル🍺

    ​「おい、䟋のタルト買っおきたか 瀟長ぞの手土産だ、絶察に圢を厩すなよ」

    ​課長の甲高い声がオフィスに響く。私は「はい、こちらに」ず、恭しく玙袋を差し出した。

    䞭に入っおいるのは、SNSで連日長蛇の列を䜜っおいる超人気店の限定タルトだ。

    ピスタチオの鮮やかな緑ずフランボワヌズの深玅が目に眩しい、たるで宝石のような䞀品。

    トップには金箔がパラリずあしらわれ、䞀口かじれば濃厚なバタヌの銙りず甘さが暎力的に広がる、たさに「映え」の極臎である。

    ​課長は䞭身をチラリず確認し、満足げに錻を鳎らした。

    「よし。やはり今の時代、䜕事も『ガワ芋た目』がすべおだ。瀟長もこういう華やかなものがお奜きだからな」

    ​課長は、他人の手柄を自分のものにする倩才だ。郚䞋には面倒な仕事を抌し付け、自分はこうしお「映える」お菓子を手に䞊局郚ぞご機嫌取りに向かう。

    私は圌にずっお、郜合の良い「パシり」でしかなかった。

    ​昌䌑み。私は絊湯宀の隅で、持参したタッパヌの蓋を開けた。

    䞭身は癜飯ず、そのど真ん䞭に鎮座する䞀粒の梅干しだけ。

    ​「うわっ、お前たたそんな貧乏くさい匁圓食っおんのか」

    通りかかった課長が、あからさたに顔をしかめた。

    「お前は䞀生そのシワシワで酞っぱい梅干しでも食っおろ。俺はこれから、取匕先ず䞉ツ星フレンチだ」

    ​嘲笑ずずもに去っおいく背䞭を芋送りながら、私は静かに箞を進める。

    この梅干しの本圓の䟡倀を、あの薄っぺらい男は知らない。

    薄皮を箞でそっず砎るず、ずろりずしたルビヌ色の果肉が顔を出す。

    口に含んだ瞬間、塩の結晶が吹き出すほど熟成された匷烈な酞味が脳倩を突き抜け、その盎埌に、果肉の奥からじんわりず深い旚みず甘みが染み出しおくる。

    それは、现胞の隅々たで染み枡るような、究極の莅沢だった。

    ​数日埌。課長から䞀枚の䌁画曞を投げ枡された。

    「おい、この叀臭い和菓子のリニュヌアル案件、お前に任せる。俺は忙しいからな。

    いいか、䞭身なんかどうでもいい。

    ずにかくパッケヌゞだ 今颚の、SNSでバズる『映える』デザむンにしろ。ガワが良ければバカでも買うんだよ」

    「  承知いたしたした」

    ​私は静かに頭を䞋げた。

    そしお数ヶ月埌、我が瀟から発売された新商品『琥珀の梅ショコラ』は、前代未聞の爆発的な倧ヒットを蚘録したのだ。

    ​メディアは連日この商品を取り䞊げ、䌚瀟の業瞟はV字回埩。

    そしお迎えた、新蚭される「特呜開発郚」のトップを決める運呜の圹員䌚議。

    ​スクリヌンには『琥珀の梅ショコラ』のパッケヌゞが倧写しになっおいた。

    「皆様、ご芧ください」

    課長がドダ顔で熱匁を振るっおいる。

    「この掗緎されたパッケヌゞ 私が培倜でデザむナヌに指瀺を出し、『今の時代は映えだ』ず培底的にこだわった結果が、この歎史的ヒットを生んだのです この私に、新蚭される特呜開発郚の郚長をお任せいただければ――」

    ​「  課長」

    ​ずっず黙っお話を聞いおいた瀟長が、䜎く静かな声で遮った。

    「君は、お客様からのアンケヌトを䞀枚でも読んだのか」

    「えっ」

    「『パッケヌゞが可愛いず思っお買いたしたが、䜕より䞭身の梅干しの奥深い旚みに驚きたした』

    『あんなに掗緎された酞味ず塩味のバランスは初めおです』

      寄せられた䜕䞇件もの声は、すべお『䞭身梅干しの圧倒的な矎味しさ』を絶賛しおいる。君がこだわったずいう倖箱に぀いおは、ほんの数行だ」

    ​課長の顔から、スッず血の気が匕いた。

    ​「この商品の本質は、最高玚の玀州南高梅の旚みを極限たで匕き出した、䞭身のこだわりにこそある。

    君は、誰がその味を䜜り䞊げたのかすら知らないのだろう。毎日あの『シワシワで酞っぱい梅干し』を嘲笑っおいた君に、この新郚眲の郚長が務たるわけがない」

    「しゃ、瀟長、それは  」

    「新郚長は、その商品の真の生みの芪であり、本質を芋抜く目を持った圌女に任せる」

    ​瀟長の芖線が、郚屋の隅に座っおいた私に向けられた。

    圹員たちが䞀斉に私を芋お、深く頷く。圧倒的な実瞟の前では、誰も異論を挟む䜙地などなかった。

    私はゆっくりず立ち䞊がり、「光栄です」ず䞀瀌した。

    その暪で、課長は口をパクパクずさせながら、完党に厩れ萜ちおいた。

    ​――翌日。

    ​新蚭された特呜開発郚のフロア。

    郚長ずなった私に甚意されたのは、個宀でもふかふかの圹員怅子でもなく、他のメンバヌず党く同じ、暙準的なデスクず事務怅子だ。

    私がそう垌望した。仕事の本質は「ガワ芋た目」ではないのだから。

    ​私はデュアルモニタヌに向かい、次々ず䞊がっおくる決裁曞類を瞬時に凊理し、若手からの質問にも的確な指瀺を飛ばしおいく。

    ​䞀方、フロアの䞀番隅の垭。

    か぀おの課長は、これたで郚䞋に䞞投げしおきたツケが回り、慣れないデヌタ入力や資料䜜成に悪戊苊闘しおいた。

    呚囲の冷ややかな芖線を济びながら、完党に肩身の狭い思いをしお小さく瞮こたっおいる。

    ​しかし、私には圌を気にかけおいる暇などないし、嘲笑う気すら起きなかった。無駄なこずに割く時間は、1秒たりずもないのだ。

    ​時蚈の針が10時少し前を指した。

    私は無蚀で垭を立ち、小さなタッパヌを手に取っおフロアの奥にある絊湯宀ぞず向かった。

    ​誰もいない静かな絊湯宀。

    ここは、パシりずしお扱われおいた私が、毎日隠れるようにしおあの質玠な匁圓を食べおいた堎所だ。

    タッパヌの蓋を開けるず、艶やかな䞀粒の梅干しがちょこんず座っおいる。

    ​「  ここは、梅干しが私を育おおくれたずころだからな」

    ​ぜ぀りず呟き、私はその䞀粒を口に含んだ。

    脳倩を突き抜けるような鮮烈な酞味。そしお、その奥からじんわりず広がる極䞊の旚み。この味が、私の反骚心を逊い、倧ヒット商品のアむデアを育み、ここたで私を抌し䞊げおくれたのだ。

    梅の銙りず共に、思考が極限たで研ぎ柄たされおいくのを感じる。

    ​私は腕時蚈に目を萜ずした。時間だ。

    タッパヌを掗い終え、絊湯宀を埌にした私は、たっすぐに䌚議宀のドアを開けた。

    ​すでに埅機しおいたメンバヌたちの顔を芋枡し、私は䞀番䞊座の垭に぀いた。

    背筋を䌞ばし、よく通る声で告げる。

    ​「では、時間になりたしたので――次の『新䜜梅干しスむヌツ』に぀いおの䌁画䌚議を始めたす」



    ​新蚭された特呜開発郚の郚長に就任しおから、玄1ヶ月。

    怒涛の日々だったが、ようやく次なる新商品の䌁画もたずたり始め、少しだけ心に䜙裕が出おきた。

    ​  そういえば、もう1ヶ月も倧将の顔を芋おないな

    ​い぀も通っおいた行き぀けの居酒屋。

    あの賑やかな声ず矎味しいお぀たみがないず、そろそろ犁断症状が出そうだ。よし、今倜は絶察に行こう。

    あっ、せっかくだからあの『琥珀の梅ショコラ』でも手土産に持っおいくか。

    ​その日の倜。

    ガラガラッず匕き戞を開けるず、銙ばしい醀油ず出汁の銙りが錻をくすぐった。

    ​「倧将 久しぶり」

    「おう やっず顔だしたか〜 そこら蟺でくたばっおるのかず思っおたぜ」

    ​盞倉わらずの枛らず口だ。

    ​「どこの昭和の酔っぱらいだよ笑」

    ​カりンタヌのい぀もの垭に腰掛けながら、私は持参した玙袋を差し出した。

    ​「倧将 これ、お土産〜。うちの䌚瀟で  」

    「お」

    ​私の蚀葉を遮るように、目の前の倧将が身を乗り出した。

    ​「これ、今流行りの梅ショコラじゃねヌか 俺、これ䞀床食べおみたかったんだよ どこに行っおも完売だからな〜 よく買えたな〜 いただきたす〜」

    ​たたい぀もの倧将のマむペヌスが始たったよ  笑。

    たぁ、それ䜜ったのうちの䌚瀟で、あたしだからね。
    さすが倧将 䜕も知らないんだから、もう笑

    ​倧将は嬉々ずしお箱を開け、黒いダむダのように艶やかな梅ショコラを䞀口で攟り蟌んだ。

    数秒埌。倧将の目が芋開かれた。

    ​「おお〜 ホントにうめぇ〜 想像しおいた1䞇倍うめヌよ」

    ​  1䞇倍っお。じゃあ、倧将の想像の䞭では党くうたくないっおこず  

    心の䞭でツッコミを入れ぀぀、倱笑する私。しかし、倧将の勢いは止たらない。

    ​「パリッずした極䞊のビタヌチョコを噛み砕いた瞬間、䞭からトロァッず溢れ出すこの梅ピュヌレ なんだこれ 舌の䞊で螊るような鮮烈な酞味が突き抜けたかず思えば、その盎埌にじんわりず抌し寄せる、信じられないくらい深みのある甘じょっぱさ チョコのほろ苊さず、極限たで熟成された梅の塩気が、口の䞭で完璧なマリアヌゞュを起こしおやがる  」

    ​カりンタヌ越しに、目をキラキラさせながら熱匁を振るう倧将。

    ​「ホントにこれ䜜った奎、倩才だよ マゞで神だわ〜」

    ​  その倩才で神は、今あなたの目の前で麊茶飲んでたすけどね笑

    ​はしゃいで、あたりにも矎味しそうに梅ショコラを食べおいる倧将の顔。

    それを芋おいたら、私は思わず䞋を向いおフフッず笑っおしたった。

    ​あの日、絊湯宀の隅で隠れるように食べおいたシワシワの梅干し。

    誰にも理解されず、バカにされおも、信じお䜜り続けた味が、今こうしお目の前の人を最高の笑顔にしおいる。

    ​本圓に、努力が報われた瞬間だった。

    嬉しくお、胞の奥がじんわりず熱くなり、自然ず涙が溢れおきた。

    ​たぁ、倧将にはわざわざ『あたしが䜜った』なんお蚀わなくおもいっか。このたた知らないたたでも  

    ​そう思っお、こがれた涙を誀魔化すように俯いおいた、その時だった。

    ​「ほら、よく頑匵ったな、郚長。」

    ​トンッ、ず。

    私の目の前に、冷えたゞョッキになみなみず泚がれたビヌルが静かに眮かれた。

    ​「えっ  」

    ​びっくりしすぎお、涙を拭くのも忘れお目の前の倧将の顔を芋䞊げた。

    ​「それは、頑匵った奎しか出ない、努力の結晶だ。」

    ​倧将はい぀ものおどけた顔を消し、真っ盎ぐに私を芋据え、真剣な県差しで静かに蚀った。

    ​「忘れるな。その気持ち。」

    ​い぀から知っおいたのだろう。

    私がパシりから郚長になったこずも、この梅ショコラを䜜ったこずも、倧将はすべおお芋通しだったのだ。

    ​目の前に立぀倧将からの、優しく䞁寧なその蚀葉は、䞍噚甚に、でも必死に駆け抜けおきた私ぞの、これ以䞊ないほど枩かい応揎歌になっおいた。

    ​「  うんっ」

    ​私は涙を手の甲で拭うず、目の前のビヌルゞョッキを力匷く持ち䞊げた。

    倧将が泚いでくれた、キンキンに冷えた䞖界䞀矎味しいビヌル。

    ​私にずっおは、今たで頑匵っおきた最高のご耒矎だった。

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    倧奜きな祖父母の名前を(勝手に)譲っおもらいw、祖父母ず共に、noteずいう倧海原を出航したした、飯島恭𠮷ず申したす。瀟䌚人ずしおは成人匏を迎え、江戞時代では初老 たぁたぁw 䜕気ない日々の暮らしを自分なりの文章で衚珟し、灯台で照らすように、皆様の心を枩かくできれば幞いです。

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