欲のない同居人
夏草や兵どもが夢の跡。
兵(つわもの)って読めますか?
難しいですよね。
ちなみに、
悪魔の化身
これは
デビルリバース
と読みます。
おそらく北斗の拳好きしか読めません。笑
デビルリバースって今考えると色々おかしいんですよ。
人間を700人殺して死刑13回執行しても死ななくて懲役200年。
もはやツッコミどころしかない。笑
しかもデカすぎる。
ジャッカルの名演技で兄貴だと信じてたけど、
普通、キン消しサイズの片手で持てる相手のことを兄貴と思いますか?笑
ああいう真面目なのかギャグなのかわからない所が北斗の拳の魅力なんでしょうね。
さて。
今日は実家にいた不思議なおじさんの話です。
うちの実家は床屋でした。
しかも古くてボロい借家。
父、母、妹、お婆ちゃん、そして自分。
さらにもう一人。
ヨシオのおじちゃん。
子供の頃からずっと一緒に住んでいたので、特に疑問もありませんでした。
店の奥が住居になっていて、その間に一畳ほどの暗いスペースがあります。
そこがヨシオのおじちゃんの部屋でした。
部屋というか寝床です。
小さなテレビと布団だけ。
家にいる時はほとんど横になってテレビを見ていました。
朝になると仕事へ行く。
夕方になると帰ってくる。
母親の料理を黙って食べる。
そして、
「100円やるからな!」
そう言って自分と妹に小遣いをくれる。
今なら分かります。
たった100円です。
でも子供の頃は100円って結構デカかった。
駄菓子屋で豪遊できますからね。笑
だからおじちゃんが好きでした。
高校生になった頃だったと思います。
親から初めて聞きました。
ヨシオのおじちゃんは、お婆ちゃんの弟。
つまり父の叔父で、自分にとっては大叔父にあたる人でした。
障害があって、普通に働くのが難しかったそうです。
だから障害者雇用で仕事をしていました。
そして父が面倒を見て、一緒に暮らしていたのでした。
そう聞いても正直ピンと来ませんでした。
だって自分にとっては昔からそこにいる人だったから。
魚が水を意識しないようなものです。
お婆ちゃんは結構気が強い人でした。
今なら分かるけど、かなり厳しい人。
おじちゃんが怒られている姿も何度も見ました。
でも反抗しない。
言い返さない。
黙って聞いている。
不思議なくらい穏やかな人でした。
文句を言っている所も見たことがありません。
欲しがる所も見たことがありません。
テレビを見て。
仕事へ行って。
ご飯を食べて。
100円をくれる。
そんな人でした。
やがて父が家を建てました。
床屋から歩いて数分。
家族みんなで新居へ引っ越します。
当然、おじちゃんの部屋も用意してありました。
今度はちゃんとした部屋です。
でも。
おじちゃんは来ませんでした。
父が何度も誘ったそうです。
「部屋作ったから一緒に行こうよ」
それでも、
「俺はここでいい」
そう言ったらしいです。
狭くて暗い一畳の部屋。
冬は寒くて夏は暑い。
そんな場所なのに。
子供だった自分には理解できませんでした。
でも今思うと、おじちゃんには十分だったのかもしれません。
もっと広い部屋も。
もっと良い暮らしも。
欲しくなかった。
いや、欲しくても口にしなかったのかもしれません。
自分は高校を卒業して上京しました。
そしてある冬の日。
父から電話が来ました。
「ヨシオのおじちゃんが亡くなった」
それだけでした。
葬式で帰省した時に話を聞きました。
夜中にトイレへ行ったそうです。
そして帰る途中。
店の裏の小さなスペースで倒れた。
そのまま亡くなっていたそうです。
発見したのは父でした。
救急車を呼んだ。
でも体はすでに冷たくなっていた。
死亡確認。
その後は警察が来て現場検証。
事件性がないか調べるためです。
父はその様子を見ながら、
「可哀想だから早くしてやってくれ」
そう怒っていたそうです。
母が後で教えてくれました。
不思議なんですよね。
おじちゃんの人生。
出世した話もない。
大金を稼いだ話もない。
結婚した話もない。
武勇伝もない。
SNSだったらバズる要素ゼロです。
でも。
今でも思い出すんです。
100円やるからな。
あの言葉を。
人は何かを成し遂げないと価値がない。
若い頃はそんな風に思っていました。
立派な仕事をして。
家を建てて。
成功して。
名前を残して。
そういう人生が価値ある人生だと。
でもおじちゃんを思い出すと少し分からなくなります。
何も残さなくても。
何も誇らなくても。
誰かの記憶に残る人生はあるんじゃないか。
テレビを見るのが好きだったおじちゃん。
100円をくれたおじちゃん。
文句を言わなかったおじちゃん。
狭い部屋で満足していたおじちゃん。
ひっそり生きて。
ひっそり亡くなったおじちゃん。
でも。
何十年経った今でも、自分はこうして思い出している。
だったら。
案外すごい人生だったんじゃないですかね。
少なくとも。
少年だった自分にとっては。
100円以上のものを残してくれた人でした。
最後まで読んでくれてありがとう。
ではまた。