
【エッセイ】一つ一つが私を作る
誰かが残していったものの塊がわたし。
人と出会って関わったこと、
それが一瞬であっても、
意味があると信じている。
数ヶ月前、人はなぜラブレターを書くのかという映画を観た。
「あの映画観て、何感じた?考えていたこと、知りたい。」
ある人が誘ってくれて、映画を観た。
その後、夕食を食べに向かうために、川崎駅の地下街を、私達は歩いていた。
両側には飲食店や雑貨屋が連なっていた。
「どんなに短い命でも、人の一生はあらゆる人に影響を与えているんだなと思った。直接関わった人に影響を与えることはもちろんだけど、その人と直接的に関わった事がない人にも、別の人を通して影響を与える。決して無駄な命はない。例えばさ、バイトとかしてて、一瞬どっかの店舗にヘルプに行くとするじゃん?その日に偶然会った人から聞いた言葉が、ずっと胸に残ったりする。それで、その感じたことをまた誰かに話したりして、それを聞いた誰かの心にも残ったりする。そういうことって沢山あると思うんだよね。だから、きっと意味があるんだなって。あと、やっぱり、手紙は、記憶を蘇らせるスイッチになるってことも思った。他のコミュニケーションでは言えないことも手紙でなら、伝えられる。こんなこと伝えてもな、とか思ってしまうことも手紙なら書けてしまうことがある。その人の本音を引き出す手段なんだなって、思ったよ。」
沢山の人とすれ違いながら、
私は確かめるように言葉を紡いだ。
伺うように、目線を少し、左に向ける。
「ほんとにそうだよな。一瞬関わった人がすごく影響すること、あるよね。一緒に観たかったんだ。君が手紙をくれた時、手紙をすごく大事なものとして扱っていることを聞いて、この映画、すごく好きなんじゃないかなと思って。だから、考えたこと、知りたかった。」
その人は、進む先の方向を見つめながら、照れくさそうに言った。
私は嬉しさが隠せず、
その人に向かってにやけてしまったことを覚えている。
その人は、今はもう、私の隣にいない。
人の気持ちに絶対はない。
昨日思ってた気持ちが、
今日は違うなんてことは、
当たり前だ。
何も保証されているものはない。
だけど、きっと意味があった。
あの瞬間を過ごしたのは、
今この瞬間ではないけれど、
確かに私の中に残っている。
私は、いつからか
人と付き合って、向き合うことに怖さを感じていた。
きっとずっと何か理由をつけて逃げてしまっていた気がする。
踏み込まないでいれる距離感を選んでいた。
でも、今の私なら、距離が近くなっても、
前よりも傷つけ合わない関係を築くことが出来るのかもしれない、と
もう怖がらなくていいのかもしれない、と
勇気が生まれた。
それに、私が大切にしたい価値観が少しはっきりした気がした。
私にとってはそれだけで、もう十分意味のあった出来事だった。
ある時、すごく仲のいい友達に「言われたら1番嫌な言葉は何?」と聞かれた。
その子は「それってなんの意味があるの?」という言葉が嫌だと言っていた。
私はそれにすごく共感して、「私は、考えすぎだよが嫌」だと答えた。
私も意味のないことなんてないと思っている。
だから、考え続ける。
彼女と私は違う部分が沢山ある。
けど、彼女と仲良くできている理由が、
その時少し分かった気がした。
誰かが残していったものが、
私を作って、
今日も生かしている。