中学講師シリーズ「バナナ一房が一番人気だった遠足の日」
大学卒業後、私は中学校で講師をしていました。
教員不足の地域だったため、4校を掛け持ち。
学校によって生徒の雰囲気は本当に様々。
そんな中で、今でも忘れられない遠足の日の話。

昼食が終わり、みんながおやつを広げ始めました。
チョコレート。
クッキー。
ポテトチップス。
そんな中、一人の男子生徒のおやつは――
バナナ一房のみ。
正直、私は心の中で
「からかわれないかな……」と少し心配しました。
すると一人の男子が言いました。
「えー!いいな!交換して!」
その言葉を合図にしたように、
「俺も交換!」
「私も!」
と次々に生徒たちが集まってきました。
あっという間にバナナは人気者に!
その時、私は、
「バナナって意外と人気なんだな」
くらいに思っていました。
でも違いました。
その子は父子家庭で、トラック運転手のお父さんが一人で、その子を育てていました。
クラスのみんなは、その事情を知っていました。
あの時、みんなはバナナが欲しかったわけではなかったのです。
誰もその子を傷つけないように。
誰もその子を特別扱いしないように。
ただ自然に、
「交換しよう」と言っていただけでした。
周囲からは問題児が多いと言われていた学校でした。
でも私は、
あの子たちほど自然に人を思いやれる子どもたちを、そう多くは知りません。
今でも遠足のおやつを見るたびに、
あの日のバナナ一房を思い出します。
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