
そういう事だったのか「キイハンター」、幼稚園児が楽しんだ土曜9時
60年近く経って、ようやくわかったことがある。
幼稚園児だった私は、なぜ「キイハンター」に夢中だったのか。
当時は内容など理解できるはずがない。
それでも毎週、土曜9時になるとテレビの前に座っていた。
幼い頃、土曜日は特別な日だった。
学校も会社も半ドン
午前中で終わっていた。
平日でも休みでもない
独特の立ち位置の土曜
どことなく、浮足立っていたような印象
子供たちの楽しみは夜のテレビ番組だった。
ようやくテレビが一般家庭に普及し始めた頃で、
白黒放送
テレビ画面には暖簾のようなカバーがついていた。
大切にされていたのだった。
土曜の夜8時
子供のいるたいていの家庭では
「8時だよ!全員集合」が茶の間を席巻した。
言わずと知れたドリフターズの公開番組。
思わぬハプニングはいつものこと。
それでも最後のエンディングでは
「また来週、よろしく~」
さわやかさだけを残して終わっていた。
「面白かったね」
そんな会話をしながら、待ったのは
そのあと9時から始まる「キイハンター」だった。
まだ、幼稚園に通っていた私は、
その頃、夜9時には寝かされていたと思う。
それでも土曜日だけは特別、
10時まで許されていた。
土曜日の夜は家族そろって
8時から10時まで、テレビを見るのが習慣だった。
丹波哲郎率いる国際警察特別室「キイハンター」のメンバーが、
難解な事件を解決していく。
キレのいい千葉真一、谷隼人に加えて
野際陽子の美貌にも憧れた。
今から思い返すと
なぜ、あのドラマに幼稚園の私が魅せられたのか、
謎だった。
国際組織が登場し、
まだ円が360円の時代。
スイス、フランスといわれても
遠い国という印象しかなかった。
そもそも内容を理解していたのか?
先日、偶然ユーチューブでその第1話を見た。
あっという間に45分が終わった。
そして私は、60年越しの答えを見つけた。
登場人物が少ない。
一人ひとりの個性が際立っている。
幼稚園児でも誰が味方で、誰が敵か分かる。
その時の私は、事件を追っていたわけではなかった。
あの人たちの顔を追っていたのだ。
60年経ってようやく、
幼い自分の見ていたものを、私は理解した。
そういう事だったのか。
ちなみに、エンディングロールでもう一つ驚いた。
第一話の監督・脚本は深作欣二。
あの45分には、
後の巨匠の仕事が刻まれていた。
色褪せなかったのは、
モノクロだからではなかったのだろう。