
14歳の私からの手紙が届いたから、返事を書くよ
この世から消えてしまいそうだった14歳の私から、
現在の私に手紙が届いた。
猫柄の封筒で、なんとなく見覚えのある字だなあって、手に取ってぼーっと見ていた。
そりゃ見覚えがあるはずだ、昔の私からの手紙。
そういえば書いた気がする、未来の自分に向かって。
今の私だけじゃなくて、今から10年前の私にも書いた気がする。その頃のは届いていないけど。
内容は覚えていない。とにかく開けてみた。カッターナイフを使ったのに、気が急いてキレイに破れない。ガタガタの開け口になった。
「 未来の私へ
今あなたはどこにいますか。生きていますか。
私はどうやって生きていけばいいかわからない。
親も先生も頼れない。
頼ったけどダメだった。
でも、たぶん卒業したら違う世界が待っているような気もする。
今は狭い世界に住んでいるのかもしれない。」
手紙っぽくないシンプルな内容だった。でもよく分かる。思い出してきた。
私の中にもうあの頃の痛みは無い。だけど気持ちは痛いほど分かる。
タイムマシンがあれば今すぐ抱きしめに行きたい。
大丈夫だよ、私がずっと一緒にいるよって。
そして学校からあなたをかっさらって、飛行機かロケットに乗って遠くへ一緒に旅に出たい。でもそれができないから手紙を書くよ。
「 14歳の私へ
お手紙ありがとう。突然届いてびっくりしたけど、そういえば書いたなあって思い出したよ。
私は生きているし、元気です。
今は関西に住んでいてこの土地をとても気に入っています。
日本も出て、価値観が全然違う文化の中に身を置いてみて、やっぱり狭い世界に住んでいたんだなあと思ったよ。でも、日本の良さや素晴らしさにも気づけた。
学校はすごくすごく狭い世界だよ。そこでの常識は他での非常識かもしれないし、その環境も辛いことも楽しいこともずっとは続かない。
イギリスの学校に行っている時に、1人でいられない人と思われるのが恥ずかしいっていう文化を知ったよ。いっしょに教室まで行こう、って声かけたフランス出身の女の子にそんな理由で断られたんだよ。日本の一般的な学校のカルチャーとは逆かもね。
あなたは、トイレにもいつも一緒に行く女子の文化は嫌いだから、いいね!って思うかもね。
学校を出てからの広い世界はなかなか厳しい面もあるけど、私の感覚では楽しいことがその1000倍はあるよ。
学校での成績って本当にどうでもいいね。あなたは勉強もがんばりだして成績急上昇したけど、もう学校の勉強には飽きているみたいだね。特に打ち込めることもなくて虚しさを感じているみたいだけど、あなたはもう好きなことの片鱗に触れていると思うよ。あとになってわかるけど、全部全部つながっているから。
落ちこぼれで遊んでばかりいた小学生の時のあなたの方が、あなたらしく生き生きしていたよね。ゲームよりも外で友達と走り回っていたり冒険したり、一人で絵を描いたりお菓子を作ったり工作したりしていた。
制服、そういえば大嫌いだよね。夏も冬も暑かったり寒かったり。毎日心地よい物を着てザブザブ洗濯したいよね。
大人になったら制服を着なくていい仕事も選べるし、制服がある仕事も理由に納得できればいいし、今は制服が無い学校やあるけど着ても着なくてもいい学校も増えてきているんだよ。
実はあなたの家から通える所でも制服を着ずに行ける学校や、私立やネットの学校や、フリースクールなんかもあるはず。でも、両親が今行っている学校以外に選択肢は無いと思っている状態だと、なかなかそういった所につながりにくいんだよね。
学校じゃないけど、こども食堂とか聞いたことある?子どもだけで行ってもいい所もあるはずだから調べてみてね。
学校のシステムに合わないのもあるだろうけど、気がかりなのは、あなたが何人かから酷い事をされていること。
体操着や上履きがゴミ箱に捨てられていたり、同級生がカバンにつけているキーホルダーを引きちぎられあなたのカバンの中に入れられていたり(犯人にするため?)、他にも色々あったはず。
どんな言葉だったかは思い出せないけど、長期的に特定の女子たちから言葉巧みに責め立てられ、辛い思いをしているよね。
追い詰められていくあなたを見て笑っている、あいつらは本当に陰湿で卑怯な奴らなんだよ。1対1になれば何にもできない奴ら。自分が同じことをされたら塩をかけられたナメクジみたいに縮こまっちゃうはず。
あの頃大人しくしていないで思いっきり暴れて、彼らをボコボコにしてやればよかった。証拠を残して思い切り法的にやっつけちゃってもいいし。まあ、そんなことをしなくてもどうでもいい奴らとは、関わらなくていい人生を歩めばいいんだけどね。
できればあまり心を痛めないで、気にしないでほしい。担任の先生や親が頼りにならなかったら、担任じゃない先生でももいい、実際に会える人でなるべく大丈夫そうな大人に声をかけてほしい。(ネットだと危ない人やところもあるから注意してほしい)
しばらく家で休んだり、別の学校の選択肢もあるといいけど、あなたの場合、親があなたのことを理解するには1000年くらいかかりそうだし、家にいても辛いだろうね。でも未来は明るいことは信じていてほしい。
そうそう、もうすぐ優しくて気の強い女の子があなたの友達になる。それに他にもあなたの味方がいる。本当は未来の事は詳しく伝えちゃダメなんだけど、私が言っちゃったこと、内緒にしてね。
私が今いる所からあなたをこっちに引っ張り出してあげたり、毎日のようにLINEでやり取りができたらいいけど、私はタイムマシンを持っていないし、あなたはスマホを持っていない。
でもまたきっと手紙を書いてください。
それを読むのも、あなた、今あなたがくれた手紙を読んでいるのも私だけどあなたなんだけどね。
時間ってあるようで実は無い。忙しくて無いという意味じゃなくて。
意味不明かもしれないけど、いつもあなたのことを大切に想っている人がいることを覚えておいてね。
辛いことを乗り越えた人は、強く優しくなれる。あなたはきっと大丈夫。今ちょっと弱っちゃっているけど誰でもあなたが今いる環境に置かれたらそうなるよ。
それにあなたは元々繊細な面もありつつ、結構気が強くてものすごいエネルギーを持っている人なの。
未来には暗いトンネルを抜けて楽しく生きている人たちが、あなたの想像の100倍くらいはいる。素敵な人たちとの出会いがあなたを待っているよ。
今の私が社会的な超成功者だったら、説得力があるかもしれないけど、あなたは元々そういう人に憧れるような人間じゃなかったね。私は「せんせい」になれたし、私の経験や感じてきたことが子どもたちの役に立ったらうれしいっていつも思っている。
願わくばこの手紙が少しでもあなたの支えになるといいな。
あなたが私に手紙を書いてくれてよかった。書くことで気持ちを整理したり解き放つこともできるし、こうやってやり取りをすることもできる。
そういえば最近、私ももっと未来の私から手紙をもらったんだよ。ずっと取り組んできたことが叶っていたり、へえ〜そうなんだって驚くこともあったし、よかったね!って返事を書いた。
内容を知りたい?
今の私くらいになったらわかるから、楽しみにしておいて!
なんだかあべこべだけど、時間って無いし、私はあなたなの。
そして最後にもう一度言うけど、あなたのことをいつもいつも大切に想っている人がいることを覚えておいてね。
いつだってあなたの中に未来のあなたもいてずっと二人三脚をしているってこと。」

※ フィクションだけど、部分的にノンフィクションです。