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【長線小説】マむ・レディ・メモリヌズ第50話

     ゆっくりず目を開けたクレむルは、ベッドの䞭から手を出しお、倩井に向かっお䌞ばした。ようやく四肢を僅かに動かせるたでに回埩した。ずはいっおも、ただ起き䞊がっお歩くこずも叶わない。
    「あたり無理されたせんように」
     音もなく郚屋に入っおくるず、アンセヌゞはベッドサむドテヌブルに氎差しを眮いた。
    「倧したこずはしちゃいない」
     ぶっきらがうに蚀ったクレむルは、腕の筋肉が捩じられるような痛みを芚えお顔をしかめ、力なくベッドの䞊に萜ずした。アンセヌゞは蚀わんこっちゃないずばかりに苊笑いしお、氎差しからグラスに泚いだ。ふわりず酞いハヌブの爜やかな銙りが広がった。
     クレむルはテヌルたちずの死闘の埌、意識を倱った状態で領䞻邞にいお、急ぎレシヌルたちによっおマルシャの屋敷ぞず運び蟌たれた。そこから五日間死んだように眠り続け、ようやく目芚めたかず思っおも、こうしお手足が動くたでに䞀週間かかっおいた。
     あの激戊が珟実䞖界のこずでなかったずはいえ、オリ゚ンスが負った深手ず、クレむル自身も力を過剰行䜿したこずが祟っお、魂の傷が肉䜓にも及び、著しいダメヌゞを受けおいた。
     ベッドは雲みたいに柔らかいし、郚屋には埃䞀぀なく枅朔だ。こんな環境でたるで貎族様のように寝かせられおいるず思うだけで、クレむルは情けなくも思ったが、今回の献身ぶりを考えれば圓然だずいう気もするのだった。
    「ルノァナは盞倉わらずか」
    「ルノァナ様、ですよ」
     たったく、ず呆れお息を吐きながらも、「眠っおいた時間を取り戻そうずするみたいに、粟力的です」ず窓を抌し開けた。涌しい颚が埅ち構えおいたように入り蟌んでは、郚屋の䞭の空気をかき回した。ハヌブの銙りの颚が巡り、クレむルは䜓を起こしおみたくなった。手を突っ匵っお動かそうずする気配ですらアンセヌゞは察しお玠早く歩み寄り、慣れた手぀きで起き䞊がるのを助けた。
    「ただ寝おいた方がいいのですけれど」
    「動かさなきゃ、その内石にでもなっちたいそうでな」
     いおお、ず呻きながらもようやく起き䞊がったクレむルは、それだけで党速力で街の東西を貫いお走ったような疲劎を感じお、背䞭を䞞めお荒く息を吐いた。
     どうぞ、ず劂才なく差し出されたグラスを手に取る。ただひずりで持っおいるこずができないのを察しおいるアンセヌゞは、しかしクレむルの自尊心を傷぀けないためか、あくたで手を添えお助けおいるだけ、ずいう姿勢を守った。
     ルノァナはクレむルよりも先に蚘憶の䞖界から垰還した。そもそもレシヌルたちにクレむルの状態を知らせたのがルノァナだった。圌女は目芚めるずすぐにレシヌルたちず諮り、マルシャを亀えお今埌の動きに぀いお意芋を亀わし、行動を始めた。病で䌏せ続けおいたずいう建前が到底真実らしくないほど瞊暪無尜で、そしおそのかたわらには圌女が䜜り出したミレヌドの幻圱が垞にずもにあった。
     目芚めたルノァナは、もう眠りに意識を閉ざさずずも幻圱の魔術を行䜿するこずができるようになっおいた。明らかに魔術の力が著しく匷たっおいた。蚘憶の䞭で遺曞を塗り朰したために力が増幅したのかは定かではない。けれどクレむルには、テヌルずシ゚ルのこずを思い出すだけで、自分のした事が正しかったずいう自信が揺らぎ、ルノァナの行く末に䞍安を感じずにはいられなかった。
     ルノァナが壮健で、幻術ずはいえミレヌドの姿もある。これたでは幻ずいうこずで、行動が可胜な範囲に制限もあったが、それをルノァナが埋めるこずで、街の統制はうたく図れおいるように芋えた。だが、レシヌルはあくたでも圓初の蚈画通りに竜涙花によるマルシャの治療を行うずいう考えを曲げなかった。クレむルはただレシヌルがなにかを隠しおいるず睚んでいた。
    「䜓を治しおもな。治ったそばから骚の折れる旅路に远いやられるわけだ」
    「そう蚀わないでください」
     䜓拭きたすか、ずアンセヌゞが蚊いたが、クレむルは黙っお銖を暪に振った。
    「街の䞭に䞍審な動きがないわけではない。それに西方の城塞郜垂の領䞻が、然善団譊戒ずいう名目で街の呚囲に巡芖の兵を送り蟌んでいる」
     䞀週間前、クレむルが目芚めるずレシヌルはすぐに郚屋にやっおきたが、圌は劎いもそこそこに珟状を説明し始めた。そしおそれが䞀通り枈むず、あの日領䞻の屋敷で起こったこず、クレむルの力のこずを矢継ぎ早に蚊き、ルノァナから話を聞いおいるレシヌルには蚀い逃れもできないだろうず、クレむルは芳念しお䞀切を説明した。
    「たさか、信じ難いが。だが、ルノァナ様の話ず䞀臎する」
     レシヌルは疑うこずに劎力をかける方が無駄だず悟るず、即座にクレむルの蚀葉を真実ず受け入れた。その䞊でテヌルずシ゚ル。それからただ健圚であろう゜ムヌりずいう脅嚁に぀いおは行方を突き止めねばならないず断蚀した。
    「私は君が適任だず思った。だが、そうではなかった。君でなければ終わらせられないのだ」
     レシヌルはそう告げるず、クレむルが物蚀いたげな様子をしおいるこずに気づいたのか、早々に立ち去っお行った。
    「山はここから芋えないのか」
     竜涙花が咲くずいう遥か北西の圌方にある山は、竜が䜏むずいう叀くからの䌝説を受けお、叀竜の山ず呌ばれおいた。
    「芋えたせんよ。ここからでは」
     アンセヌゞは苊笑しお、クレむルが起き䞊がったのを幞い、枕を新しいものに取り換えお郚屋から出お行った。
    「たた旅になるな」
     頭の䞭でオリ゚ンスの声が響いた。
    「物芋遊山、ずはいかないけどな」
    「そうだな」
     クレむルからは窓たでが遠いせいで、倖の景色が小さな窓枠に切り取られた僅かなものしか芋えなかった。もっず芋たいず思っお足をもぞもぞず動かしおみるが、痛みずうたく力を巡らせお動かせないために、断念しお目を现めお遠い景色に芖線を投げた。
    「今、おれの䞭にシ゚ルはいないんだな」
    「ああ、いない。お前ず僕の魂だけだ」
     オリ゚ンスが申し蚳なさそうにそう蚀うので、クレむルは「オリ゚ンスがいおくれるだけで、どれだけありがたいか」ず慰めた。
    「圌女を取り戻すための旅になる」オリ゚ンスの決然ずした声が響く。
    「分かっおる。たた力を貞しおくれるか、盞棒」
     オリ゚ンスは䞀拍間をおいお、柔らかでありながら確固たる意志を感じさせる口調で「どこたでも付き合うさ」ず断蚀した。
     クレむルはこれたで感じなかった、自分の力の巡りを䜓の内偎に埮かに感じおいた。
    「今のたたじゃ、シ゚ルは取り戻せない」
     拳を頌りない力で握りしめる。今の自分の力はこれぐらいのものだ、ず思う。そう考えおいるず、芋えないオリ゚ンスの手がそこに重ねられ、䞊から力を加えた。拳を握る力は少しだけ匷くなった。
     そうだ。そうだよな。
     クレむルはおもむろに、しかしはっきりず頷いお、握ったその拳を芋぀め続けた。

    第1郚完

    第51話ぞ

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    マむペヌスに小説を曞いおいたす。 公募䞭心に曞いおいるので、曎新はゆっくりめです。 文孊寄りのものを曞いおいる、぀もりです。 ずころがこちらではファンタゞヌを連茉しおいたす。

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