
【児童書】ブナ森の秘密
【あらすじ】母を亡くしたメルは、養護施設での嫌がらせに耐えきれず、施設を抜けだします。向かった先は、遠く離れたブナ森にある母の隠れ家。そこには、母の思い出が沢山詰まっていました。しかし問題なのは、その森には毒グモが多く生息していて、魔女も住んでいるとのこと。その話を聞いたメルは、森を守るために立ち上がります。同級生、マサオと洋二も加わり、魔女討伐にむけて森の仲間が団結していきます。捕まえた魔女の犯人は、意外にもメルがいた施設の人でした。そしてブナ森に平和が訪れた日、メルにも新しい生活が待っていました。
小さな町に、北野養護施設がありました。
そこには親を亡くした子供や親と離れて暮らす子供たちが住んでいました。
ある日のこと、うす暗い食堂に、1人の女の子が入ってきました。
名前は、青山メル、小学五年生です。
すでに夕食の時間は過ぎ、子供たちは誰もいません。食堂係のよし子だけが残って、洗い物をしていました。
「さっさと食べて。片付けができやしない」
テーブルには、1人分の食事トレイが置かれ、冷たくなった白いご飯と味噌汁、サラダとハンバーグがのっていました。
その時、メルは、トレイの上をゆっくりと歩くクモに気づきました。そのクモは、とても足が長く、大きな体に赤と緑のシマシマの線が入った不気味なクモでした。
「ひゃああ」
メルはこわくなって、一目散に食堂を出て行きました。
メルは、部屋に戻ると、大きなカバンに洋服を詰め込み、ありったけのお金をかき集めました。
「今度こそ、出て行ってやる」
考えてみたら、昨日からついていないことばかりでした。
ゆうべ、お風呂に入ろうとしたときには、浴槽のなかは空っぽでお湯はなく、電源は切られていて、冷たいシャワーを浴びることになりました。おまけに、今朝の朝ごはんには、ダンゴムシが乗せられていたし、学校から帰ったときには、上履きのくつがゴミ箱に捨てられていました。
「ぜんぜん、平気なんだから」
メルは、そう言いながら、くちびるをかみしめ、鏡に映った自分にいい聞かせました。
施設を出ると、空には月が出ていました。
道を歩く人はだれもいません。
「ふん、こわくなんかないわ」
メルは、走って走って、やっとのことで駅に着くと
「すみません。ブナ森行きの電車は」と駅員にたずねました。
「お嬢ちゃん、1人かい?」駅員さんがききました。
「まさか。行く先の駅でおじさんが待ってるの。どこから乗ればいい?」
「それならよかった。一番ホームだよ。あと三分で出発だ。急いで」
メルには、おじさんはいませんでした。たった1人の家族だったママは、1か月前になくなったのでした。
『嘘も方便』って、こういうときにつかうのね、メルはそう思いました。
「こちらは北野養護施設です。青山メルさんのおばあさんですよね?」
電話がかかってきたのは、朝一番のニワトリが鳴いた頃でした。
ここは、ブナ山の中に一軒だけ建っている山の家。
メルのおばあさんは、この山の家に、犬のジョンといっしょに暮らしていました。
ジョンは十五歳の犬で、人間の年にすると、おじいさん犬でした。とはいっても、ジョンの足はまだまだ野山を走り回るには充分でしたし、足の悪いメルのおばあさんの手伝いをするほど元気いっぱいでした。
養護施設からの電話は、孫娘のメルが、朝早く施設を飛び出したまま帰って来ないという連絡でした。ずっと探しているが、見つからないので警察に連絡するという内容でした。
「施設で何かあったんですか」おばあさんがたずねました。
横で、犬のジョンも聞いています。
「特になにもありません。友達と少しトラブルがあったようです。それに、メルさんが家出するのは、今回が初めてではありませんから」
北野所長は、冷たい口調でそう言いました。
メルに何かあったのだろうか。もしかしたらメルは、ここに向かってるのかもしれない、いや、メルは、こんな遠くまで来られないだろう、それに、きっと自分のことを恨んでいるにちがいない。おばあさんはいろいろ考えるのでした。
太陽が真上までのぼり、鳥たちが午後のさえずりを始めました。
ワンワンワン
ジョンが吠えています。
「ジョンや、ジョン」
おばあさんは痛む足をさすりながら、やっとのことで立ち上がりました。
犬のジョンは待ちきれなくて、自分の鼻をつかってドアを押し開け、走っていきました。
ブナ山の入口にある『ブナの森駅』は、草が荒れ放題で誰もいない寂しい駅でした。
チュンチュンと鳴く鳥のさえずりだけが響いています。
到着した電車から、1人の女の子が出てきました。
メルでした。
メルは、たった1人で電車にのり、ブナ森駅までやってきたのでした。
「森までは、どれぐらいあるかしら」
メルは、リュックから一枚の地図を出しました。
駅を出ると、古い看板があり、駅の右側がブナの森、左側が山の家と書いてありました。山の家というのは、メルのおばあさんの家でした。
メルは、山の家には行かず、ブナの森の方向へと歩きだしました。
ブナの森へつながる道には、カエデ、スギ、クスノキ、松など、たくさんの木が生い茂っていて、吹き付ける風が青々とした葉を揺らしています。
メルは、休むこともなく、歩き続けました。
森の入口に、大きなブナの木がありました。その根元には、深くて大きな穴があり、犬のジョンは、いつものように、その穴のなかで休んでいました。
その時です。
木々の間から一筋の光が差し込み、ジョンのいる穴を照らしました。その光の粒が、ゆっくりとジョンの口のなかへと入っていきました。ジョンが、おどろいて足でのどをかきむしっていると、リュックを背負った女の子が声をかけてきました。
「だいじょうぶ?」
メルでした。
ジョンは、メルを見るやいなや、しっぽをブルンブルンと振って
「メルだよね、覚えてない? 小さいとき一緒に遊んだ、ジョンだよ」といいました。
「話せるの、ジョン」
「よくわからないけど、そうみたい」
ジョンは、少し前に、光の粒を飲んだからだと思いました。
「すごいわ」
ジョンは、少し照れながら
「メル、施設を飛び出したんだって」といいました。
メルはすぐに暗い顔になって、うつむきました。
「おばあさんが心配してるよ」とジョンがいいましたが、メルは何もいいませんでした。
北野養護施設、所長室では、所長の北野と食堂係のよし子が話をしていました。
「よし子さん、今の話は本当ですか」
「はい所長。メルの食事に、クモがいたんです」
「クモ?」
「いつですか?」
「ゆうべです」
「どうして、早く言わないんですか」
「すみません。所長、それが普通のクモじゃないんです。足が長くて、赤と緑のシマシマの線があって、それはもう恐ろしいクモで。どうして施設の中にいたんでしょうか。あれは間違いなく、毒グモですよ・・・」
「それでクモは?」
「わかりません。気づいたら、消えていました」
「子どもたちが刺されたらどうしましょう」
「じゃやっぱり、あのクモは・・・」
「しっ・・・」
足音がして、北野所長がよし子の言葉を遮りました。
副所長の佐竹が入ってきました。
「何かあったんですか。毒グモがどうとか・・・」
よし子が話そうとするのをさえぎって、所長が言いました。
「何でもありません。それで、佐竹副所長、メルは見つかりましたか」
「あちこち探したんですが、どこにもいないようです。警察から何か連絡は?」
「まだ何もありません」
「まだ一カ月だっていうのに、問題ばかりですな。母親が亡くなって可哀そうだと思っていましたが、父親に引き取ってもらえないですかね」
北野所長が首をふって
「父親は再婚したのです」
「じゃあ、おばあさんは?」
「無理でしょう」
「この一カ月で五回目ですよ。うちではもう・・・」
「佐竹副所長、もういいです。警察にまかせましょう」北野所長が言いました。
佐竹が所長室から出ていくと
「よし子さん、毒グモのことは黙っててください。騒ぎになると困りますから」と北野所長が言いました。
「それから、念のため施設のまわりにいないか、探してください」
「わかりました」とよし子がいいました。
所長たちの話を聞いていたのは、メルと同い年の洋二でした。
洋二は、マサオの部屋へと走っていきました。
「マサオ、よし子と所長が話してた」
「まさか、ばれてないよな。メルにいたずらしたこと」
「ちがうよ。毒グモがいたんだ」
「毒グモ?」
「メルの食事トレイに毒クモがいたらしい」
「おれたちが置いたのは、ダンゴムシだろ。何でだよ」
「知るか」
「洋二、ダンゴムシのこと、ぜったいに秘密だぞ」
「わかってるって」
ブナの森にはたくさんの木々が茂っています。
メルは、地図を見ながら歩いていました。
そのあとをジョンが追いかけていきます。
「どこへ行くの? メル。少し休もうよ」
「ねえ、ジョンはいつから人間の言葉を話せるの」
「さっきだよ。話すって楽しいね」
「あの人とは?」
「あの人って、おばあさんのこと?」
「うん」
「おばあさんとは、まだ話してない」
「そう」
「メル、おばあさんのこと誤解しているようだけど」
「ジョン、その話はやめて」
「なんで?」
「あの人、ママが病気のときだって、一度も来なかったんだよ。ママが『会いたい』って言っても、一度も来なかった」
「それは・・・」
「もういい」
メルの足がぴたりと止まりました。
ジョンは、メルの視線の先に目をやりました。
そこには、古い小屋が建っていました。古びてはいますが、壊れてはいないようです。
「ジョン、今夜はここに泊まろう」
「え・・・」
メルは、小屋の床下にあった小さな箱をとり出しました。
「あった」
箱を開けると、中には、カギが入っていました。
「いいのかなあ、勝手に入って」
ジョンが言いましたが、メルはおかまいなしです。
メルが先に中へと進み、ジョンもメルに続きました。
驚いたことに、小屋の中はまるで今も誰かが住んでいるかのようにきれいに片付けられていました。ベッドも小さなキッチンも新しいものが備えられています。
本棚もあり、たくさんの本が並んでいました。
「ここは、ママの隠れ家よ」
「隠れ家?」
「ママが亡くなる前、私に言ったの。『つらいことがあったら、ここへ行きなさい』って。ママが小さいころ、よく遊んだ小屋だって言ってた」
「そうだったんだ」
「でも、この部屋、なんだか変な感じ。ママの嫌いなものばっかり」
本棚の中には、『クモ』に関する本がたくさんありました。中でも『クモの仲間』は表紙の色が赤と緑で、とても気味の悪い本でした。
「ほんと・・・クモの本ばっかりだね」
ジョンが言いました。
「おかしいわ。ママ、虫が大嫌いだったのに」
「急に好きになったとか?」
「それはないわ。クモの本を見るだけで、大騒ぎだったもの」
その時、ガタンと音がしました。
メルが振り向くと、そこにいたのは、子だぬきでした。
「誰?」
子だぬきは、「×××××」と答えました。
「ジョン、私、たぬきの言葉はわからないわ」
「オッケー」
ジョンは子だぬきに話しかけました。
「〇〇〇〇〇」
「×××××」
「〇〇〇〇〇」
「ジョン、なんて?」
「小屋のまわりの掃除を頼まれたんだって」
「だれに?」
「この子のお母さんみたい」ジョンが言いました。
「もしかして、ママのこと知ってるかしら?」
ジョンは、子だぬきに聞きました。
「知らないって」
「そうよね。ママがここにいたのは、ずいぶん前だもの」
その時、メルのお腹がグーとなりました。
子だぬきは、ジョンにそっと耳打ちをしました。
「メル、お腹すいてるよね?」
「うん」
「この子がご飯を作ってくれるって」
子だぬきは、照れくさそうに、頭をかきました。
山菜の和え物
かぼちゃのスープ
青菜のサラダ
子だぬきは、山の山菜や青菜、畑のかぼちゃを使って、料理をしてくれました。
テーブルに、子だぬきが作った料理が並びました。
「すごいわ、子だぬきさん」
「この子の母さんが、友達に料理をならったんだって」
ジョンが言いました。
どれもが、思いのほかおいしくて、朝から何も食べてなかったメルは、ぜんぶ平らげていきました。
「すごい食欲だね」
ジョンが言いました。
「だって、おいしいんだもの。それになんか懐かしい味」
メルは、ママの作った、かぼちゃスープを思い出しました。
そうだ。子だぬきの母さんなら、ママのこと知っているかもしれない。
「ジョン、たぬきの母さんに会わせてって頼んでくれない?」
ジョンは、子だぬきに伝えました。
「メル、明日の朝、ほら穴に来てください、だって」
「ありがとう」
夜になると、子だぬきは帰っていきました。
満月の光が小屋のまわりを照らしています。
メルは月に向かって、つぶやきました。
ママ、私一人で隠れ家に来たんだよ。
すごいでしょ。
空から見てるよね?
夜も更けた頃、メルは、隠れ家のベッドに入りました。
「ママもここで眠ったのね」
わずかに、ママの匂いがしたような気がしました。
「ぼくはここにいるからね」
ジョンは、ベッドの下でふせています。
メルは、次第に眠りに落ちていきました。
病院のなかの部屋。
ベッドに寝ているメルのママは、とても苦しそうでした。
「ママ、ママ」
メルが叫ぶと、ママが目を開きました。
「ママ、私よ、わかる?」
ママはゆっくりとうなずきました。
メルはママの手を握りました。
「メル、これをもっていって」
ママは、まくら下から地図を出して、メルに渡しました。
「地図?」
「森の地図よ。おばあさん家の近くの」
「行かない、そんなとこ」
「お願い、ママの話を聞いて。この先、もしつらいことがあったら、ここへ行きなさい。ここにはね、子どもの頃からずっと大事にしてたママの隠れ家があるの」
「隠れ家?」
「そう。古い小屋なんだけど、ママがきれいに掃除しておいたから行ってみて。本もたくさんあるから読んでね」
「じゃあ今度ママといっしょに行く」
「そうね。退院したら・・・行こう」
「うん」
「ああ、それから、そこにやってくる動物は、みんなママの友達だから仲良くしてね」
「動物がくるの? どんな?」
「それは行ってからのおたのしみ」
ママは少し笑いました。
久しぶりに見た、そして最後に見たママの笑顔でした。
「ママー、ママ・・・」
メルは、自分の声で飛び起きました。
目には、涙の後がついていました。
翌朝、メルとジョンは、子だぬきのほら穴にやってきました。
ほら穴には、母さんたぬきと子だぬきが三匹いました。一番年上の子だぬきが、昨日会ったたぬきで、松子と言いました。二番目は、竹吉、三番目は梅吉と言いました。
たぬきのお母さんは、朝ごはんの支度をしていました。
オニオンスープのいい匂いが漂っていました。
「松子の母さんが『ごはんが出来るまで遊んでて』って」
ジョンが言いました。
オニオンスープをご馳走になると、メルは、たぬきの母さんに呼ばれて、ほら穴の奥へと入っていきました。
「ぼくも行ったほうがいい?」とジョンに聞かれましたが、三匹の子だぬきたちはジョンを離そうとせず、いっしょに遊びたがっていました。
「大丈夫、一人で行ってくるわ」
メルが、ほら穴の奥の部屋にやってくると、たぬきの母さんは、一冊の本と眼鏡をメルに渡しました。
たぬきの母さんが、眼鏡をかけるジェスチャーをしたので、メルが眼鏡をかけると、急に背中がぞわぞわっとしました。
「どうですか? わかりますか」
たぬきの母さんの声が聞こえました。
「はい、わかります」メルが答えました。不思議なことに、眼鏡をかけると、たぬきの言葉がわかるのでした。
「あなたのママから預かった本と眼鏡です。この眼鏡をかけると、私たちの言葉がわかるって、あなたのママが話していたの」
「ママを知ってるのね」
「いつもいっしょに遊んでいたわ」
メルは涙がこみあげそうになりました。
「あなたのママが残した日記よ。いつか、この森に来られなくなったら、娘のメルを行かせるから渡してほしいって頼まれたの」
そうだったんだ。
だから、ママは私をここに来させたんだね。
「じゃあ、松吉に、掃除を頼んだのは」
「私よ。いつかあなたに会える日がくると思って・・・」
「ありがとう。たぬき母さん」
たぬきの母さんは、ぎゅっとメルを抱き締めました。
「あなたのママが隠れ家に来なくなってから、ずっと心配していたの。メルは、一人ぼっちになって寂しくないかなって。泣いてやしないかなって。本当に会えて良かった」
メルは、涙でいっぱいになりました。
「よく一人でがんばったわね」
北野養護施設では、食堂で、洋二とマサオが宿題をやっていました。
「おれたち、やりすぎたのかな」洋二が言いました。
「メルのこと?」マサオが聞きます。
「うん」
「ちょっとからかっただけだろ。ダンゴムシなんて、かわいいもんだぜ」
「でも、もし、このままメルが見つからなかったら?」
洋二は幽霊の真似をして
「化けて出たりして」
「おい、やめろ」
「でもさ、なんで毒グモが入っていたんだろ」
「そうだよな」
マサオと洋二はじっと考えていました。
食堂係のよし子が入ってきました。何やら、大きな紙袋を抱えています。
マサオたちには気づかないようでした。
「よーしーこさん」マサオが声をかけました。
よし子はびくっとして
「ああ、びっくりした。マサオったら、脅かさないで」
「何してるの?」
「ああ・・・買い物にね、行ってきたの」
「その紙袋は何?」
「ちょっとした・・・物よ」
「見せて。ぼくたち、お腹すいた」
「だめよ。所長さんに見つかったら大変だもの。それでなくとも、私はいつも怒られてばっかり」
「一人で食べる気じゃないよね」
「マサオったら、変なこと言わないで」
よし子は、急ぎ足でキッチンの奥へ行ってしまいました。
「よし子って、いつも所長に怒られているよな」
洋二が言いました。
「一人でつまみ食いばっかしてるからだろ」
マサオと洋二は笑いました。
キッチンの中で、よし子は、手袋をはめていました。そして持ってきた紙袋を開けると、中から虫かごを取り出しました。
そこには、赤と緑の線がはいった、足の長い毒グモが入っていました。
メルとたぬき母さんは、ブナの木広場にやってきました。
「なつかしいわ。あなたのママと、この滑り台で遊んだの」
たぬき母さんは、メルに言いました。
広場には、自然の坂を利用したスロープがありましたが、今は誰も使っていないせいで、草がいっぱい生い茂っていました。
リスの親子がやってきました。
「たぬきさん、こんにちは」
「こんにちは、リスさん。いいお天気ね」
「見ない顔だけど、こちらは?」
「サト子の娘、メルよ」
「サト子って、隠れ家の?」
「そうよ」
「まあ、懐かしいわね。メルさん、子どものころのサト子にそっくりだわ。サト子も、まん丸おめめで、鼻高さんだったもの。どんぐり拾いの競争したときなんか、サト子が一番でほんとうにくやしかったわ。今までずっと負け知らずだったから、あの時はほんとうに・・・」
「ママ、お腹すいた」
「ぼくもお腹すいた」リスの子どもたちが叫びました。
「ごめんごめん。食事に行くんだった。じゃあ、たぬきさん、またね。メルさんも、また会いましょうね」
リスの母さんはそういって、去っていきました。
広場には、ブランコもありました。
「あなたのママ、このブランコが大好きだったの」たぬきの母さんが言いました。
「あれからずいぶん時が経ったせいで、こんなになってしまったけど」
ブランコの椅子の木はくさり、ロープも切れていました。
新しい板とロープがあれば、またブランコができるのに、メルはそう思いました。
その時、うしろから大きな黒い影が近づいてきました。
「わしがなおしてやろうか」
ツキノワグマでした。
「ツキノワグマさん、脅かさないでくださいよ」
たぬきの母さんが言いました。
「すまんすまん、リスさんから、サト子の娘がいるって聞いたから、あわててね」
「メル、ツキノワグマさんは、サト子とよく相撲をして遊んだのよ」
「相撲?」
「そうよ。サト子、けっこう強かったわよね」
「ははは、あれは、わしが手加減したんじゃよ」ツキノワグマはそう言って笑いました。
「そうね。ツキノワグマさんが誰よりも力持ちってことはみんな知ってるわ」
「よしきた。たぬきさん、あんたが今度ここに来るまでには、このブランコをなおしておこう」
ツキノワグマはそう言って、さっていきました。
メルとたぬき母さんは、花咲く丘にやってきました。
色とりどりの花が咲き、いい香りが漂っています。
優しい風がメルのほおを撫でていきます。丘から見える森の景色はキラキラと輝いていて、とても心地よい場所でした。
「ここは、あなたのママと最後に来た丘なの」
「きれい・・・」
「あのときのサト子、とてもつらそうだった。病気のせいもあるだろうけど、おばあさんと仲直りできなかったことが心残りだって言ってたわ」
「仲直り?」
「そう。あなたのママは、おばあさんと喧嘩して森を出たんだけど、それまでは、とても仲のいい親子だったのよ。あの隠れ家に、おばあさんといっしょに泊まって花を摘んだり山菜を取ったり・・・」
「でも、おばあさんはママのお見舞いに来なかった。ママが死んだのに、私が一人ぼっちになったのに知らん顔で・・・」
「なにか事情があったんじゃないかしら」
「そんなことない。たった一人の孫をほっとくなんて冷たい人なのよ」
メルは泣き出しました。
「メル、あなたは一人じゃない。私がいる」
メルは涙があふれるのをぐっとこらえていました。
メルとたぬき母さんがほら穴へ戻ると、たぬきの子どもたちは、釣りに行く準備をしていました。
「メル、今から、一緒に川へ行って魚釣りをしようよ」
松子が言いました。
「メル、ぼくはやめようって止めたんだよ」ジョンが言いました。
「私、行ってみたいわ。魚釣りなんて、はじめて」
メルの目がきらきらと輝きはじめました。
川のほとりで、メルは、何匹も何匹も魚を釣り上げました。
子だぬきの中で、松子だけが魚釣りをしていて、何匹も魚を釣り上げていました。
ジョンは一匹も釣れず、ムスッとした顔をしています。
竹吉と梅吉は、楽しそうに走り回っています。
たぬきの母さんは笑いながら
「初めてなのに、すごいわ、メル」といいました。
そのとき、ジョンが一番末っ子の梅吉がいないことに気づきました。
「あれ、梅吉がいない」
「梅吉、梅吉」みんなで探しましたが、見つかりません。
「まさか、あの子」
たぬきの母さんの顔は青ざめていました。
「黒い家に行ったのかもしれない」
「黒い家って?」メルが聞きました。
「魔女が住んでるっていう噂の家なの」たぬき母さんが言いました。
「そういえば、梅吉、一度でいいから魔女に会ってみたいとか・・・言ってて」ぼそぼそと松子が言いました。
「みんな、ここにいて。母さんが探してくる」
「私も行くわ」メルが言いました。
「ありがとうメル、心強いわ」
たぬき母さんとメルが走っていきました。
うろうろと悩んだのち、少し遅れて、ジョンも走っていきました。
川から少し歩いていくと、広場の一番奥に黒い屋根の小屋がありました。 屋根も壁も真っ黒のうえ、クモの巣だらけで、とても不気味な雰囲気でした。
「ほんとに魔女が住んでるのかしら」とメル。
「何度も見たのよ。黒い帽子にサングラス、黒いマントを着てた」
「全身黒なのね」
「それに、時々、変なにおいがするの」
「どんな?」
「腐ったような、焦げたようなにおい。あぶない薬を作ってるのかもしれないわね。本当に気味が悪いわ」
そのとき、誰かが走ってくるのが見えました。
梅吉でした。
大泣きしています。
「梅吉!」
「母さん、痛い痛い・・・痛いよ」
梅吉の腕は、真っ赤に腫れあがっていました。
「この子ったら、行くなって言ったのに」
「母さん、ものすごく大きなクモがいたんだ。それもたくさん」
そういって、梅吉は倒れてしまいました。
たぬき母さんは、急いで梅吉を川岸まで運び、腕に何度も水をかけて洗いました。
「もし毒が入っていたら、大変だわ」そういって、たぬき母さんは何度も何度も水で洗いました。
「母さん、交代するから薬草をとってきて」
松子がたぬき母さんと交代しました。
松子が梅吉の腕に水をかけている間、たぬき母さんは、林の中へ入って薬草をつみ、石ですりつぶしました。
「この腫れ具合じゃ、今晩は熱がでるわね」
たぬき母さんは、梅吉の腕に薬草を貼り付け、ぐったりした梅吉を抱きかかえて、ほら穴へと走っていきました。
その夜、ほら穴の中で、梅吉はぐったりしていました。
腕は腫れあがり、熱も高そうです。
メルは、子どもの頃、ママがやってくれたように、濡れたタオルを梅吉のおでこに当てて、看病をしました。
夜も更けた頃、メルはたぬき母さんに言いました。
「母さん、考えたんだけど、森のみんなで交代して見張りをしたらどうかしら」
「見張り?」
「誰がいつ、あの黒い家にくるか。その人は何者で、どうしてあの家にはクモがたくさんいるのかを調べるの」
「それはいい考えだけど、ちょっと怖いわ」
「大丈夫。二人でペアになってやればいいのよ」
「そうね」
「もし何かあったら、見張りのどちらかが私に知らせてくれればいいから」
「メル、ありがとう、でもね、危ないことは・・・」
「私、みんなの役にたちたいの。仲間だって言ってくれたから」
たぬき母さんは、しばらく考えて
「・・・わかったわ、やりましょう」
「ありがとう」
たぬき母さんは、笑顔で頷きました。
「母さん、一番おしゃべり好きなのは誰?」メルが聞きます。
「リスさんかしら」
「ふふふ、そうね。じゃ母さんは明日、見張りをすることをリスさんに伝えて」
「わかったわ」
「昼間の見張りは、交代にして、夜の見張りは、ふくろうさんに頼むことにするわ。それから、何かあった時のボディーガードは、ツキノワグマさんね」
「そうね」
たぬき母さんは笑いました。
メルは、梅吉のおでこのタオルを替えてやりました。メルが桶の水を持って立ち上がろうとしたとき、たぬき母さんが言いました。
「メル、夜は出歩いちゃだめよ」
「川に行って水をくむだけよ」
たぬき母さんは首を振りました。
「今夜は満月だから、月が明るいの。危ないからぜったいに行かないで」
たぬきの母さんは、真剣な顔で言いました。
明け方、メルは、犬のジョンをそっと起こして、ほら穴の外へ出るように合図しました。
「メル、出ちゃダメって言われただろ」
「ジョン、水をくみたいの。梅吉の熱を下げるためよ」
ジョンは、しばらく考えてから、「わかったよ」と言いました。
川の水面に満月がうつり、とても幻想的な夜でした。
メルが川岸で水をくんでいると、川の表面がゆらゆらとゆれて、灯りがともるのに気づきました。
メルは、そっと茂みに隠れました。
ジョンも地面にふせています。
灯りをもった主は、頭からフードをかぶり、あたりをうかがいながら黒い家へと入っていきました。
「ジョン、魔女かしら」
「こわいよ、メル」
「もう少し近くまで行ってみなくちゃ」
「やめようよ、メル」
メルはジョンの言うことを聞かず、黒い家へとどんどん近づいていきました。
ホーホーとフクロウの鳴き声がします。
黒い家に灯りがともりました。
メルは、中で何をしているか耳をすませてみましたが、何の音も聞こえてきませんでした。
「何をしているのかしら」
「こわいよ、メル」
ジョンがぶるぶると震えています。
その時でした。
黒い家の中から、歌声が聞こえてきました。
ねんねんねむねむ いいよるだ
ねんねんねむねむ おやすみね
ねんねんねむねむ またあした
ねんねんねむねむ いとしい子
「子守歌?」
ジョンが聞きました。
「そうみたい」
「聞いたことないよ」
「そうね」
子守歌は、いつまでも続きました。
メルとジョンは、朝日がのぼるまで、黒い家から人が出てくるのを待っていましたが、誰も出てくることはありませんでした。
仕方なく、メルとジョンがたぬきのほら穴へ帰ると、入口のところでたぬき母さんが仁王立ちをして立っていました。
「メル、こっちも怖そうだ」
ジョンが言いました。
「メル、どういうことなのか説明して。私がどれだけ心配したことか」
「ごめんなさい。母さん。川へ水を汲みに行ったら、黒い家に人が入っていくのを見たものだから」
「まあ」
「それで朝まで見張っていたの。でも黒い人は出てこなかった」
「そうだったの」
「ほんとにごめんなさい」
「無事に戻ってきたのだからいいわ。でも、二度と黙っていなくなったりしないで。いいわね」
「はい、母さん」
「梅吉が目を覚ましたの。顔を見せてあげて」
「ほんと!」
メルは、ほら穴の中へと入っていきました。
梅吉は、腕に包帯をしたままご飯を食べていました。
「梅吉」
「メル」
「良かった。熱が下がったのね。大丈夫?」
「この通り。モリモリよ」
代わりに松子が答えました。
「バツとして、おまえは当分、水くみ当番ね」
「松ねえちゃん、ぼくまだ腕が痛いんだ」
「ふん」
松子は、行ってしまいました。
メルは、梅吉に聞きました。
「梅吉、昨日みたクモのこと覚えてる?」
「うん、覚えてる」
「どんなクモだったか、教えてくれない?」
「足が長くて、赤と緑のシマシマの線があって・・・百匹はいたと思う。すごく気味の悪いクモだったよ・・・」
メルは、養護施設で見たクモに似ている、そう思いました。
「ジョン、ジョン」
メルが叫ぶと、竹吉と水を飲んでいたジョンは、慌ててメルのもとへやってきました。
「今から、隠れ家へ行くわよ」
「また出かけるの?」竹吉が聞きました。
「ごめんね、竹吉。ジョンといっしょに出かけてくるわ。母さんに伝えて」
「わかったよ」
竹吉は行ってしまいました。
「ジョン、隠れ家に『クモの仲間』っていう本があったの覚えてる?」
「うん」
「あの本を見れば、何かわかるかもしれない」
「どういうこと」
「行きながら話すわ」
メルは、ジョンにすべてを話しました。
養護施設にいたとき、メルの食事のなかに、何度もダンゴムシが入れてあったこと、それを入れたのは、マサオと洋二で、嫌がらせばかりされていたこと、そして施設を出る前日の食事には、おそろしいクモが入っていたこと、そのクモの姿は、梅吉が腕をさされた毒グモにとてもよく似ていること、でした。
「メル、マサオと洋二に、いじめられてたの?」
ジョンが聞きました。
「まあ、そんなとこね。私、ダンゴムシは嫌いじゃないけど、あいつらのやることは幼稚すぎて我慢できなかった」
「メルが見たクモと梅吉のクモは、ほんとに同じなのかな? クモなんて、みんな同じに見えるけど」
「どっちも、足が長くて赤と緑のシマシマの線が入っているクモだった。そんなクモ、今まで見たことないわ」
「そっか」
「不思議なのは、なんで私がいた施設に、このブナの森にいるクモがいるのかってことよ」
隠れ家の近くまでやってきたジョンは、何やら中から音が聞こえることに気づきました。
「メル、中で音がするよ。誰かいるみたい」
「ジョン、私には何も聞こえないけど」
「犬の耳は、すごいんだよ。何キロも先の・・・」
その時、歌声が聞こえてきました。
ねんねんねむねむ いいよるだ
ねんねんねむねむ おやすみね
ねんねんねむねむ またあした
ねんねんねむねむ いとしい子
「またあの歌だ」
「ジョン、つまり、黒い家にいた魔女と今ここにいる人は、同じってことね」
「こわいよ、メル」
「しっ」
「なに?」
「この歌、聞き覚えがあるような・・・」
「ほんと」
「でも、よく思い出せない」
ねんねんねむねむ いいよるだ
ねんねんねむねむ おやすみね
ねんねんねむねむ またあした
ねんねんねむねむ いとしい子
「ねえメル、ここに見張ってたら、ドアから出てくるんじゃない」
「ダメよ。また逃げられたらどうするの。行きましょう」
「こわいよ、メル」
「犬はすごいんでしょ。しっかりしてジョン」
メルは、ドアに近づいていきます。
思い切って、ドアから入っていくことにしました。
「やめようよ、メル」
「ダメ、ママの隠れ家を守らなきゃ」
ジョンは、ぶるぶる震えながら、目を閉じています。
「いち、にの、さんでいくわよ」
「う、うん」
「いち、にの、さん」
カギを開けて入りましたが、中には誰もいませんでした。
メルは、がっかりしました。
ジョンは、くんくんと隠れ家の中のにおいを嗅いでいました。
メルは、本棚の中からクモの本がなくなっていることに気づきました。
「ジョン、本がなくなってる。やっぱり誰かいたのよ」
「メル、まだにおいが残ってるよ。さっきまで誰かがここにいたんだ」
そのとき、ドアがバタンと閉まる音がして、メルとジョンが振り返りました。
窓の外をさっと黒い人影が通りました。
「メル、外だ。外に出るんだ」
ジョンが走り出しました。
メルもあとを追って、追いかけます。
ジョンの走るスピードがあまりにも速すぎて、メルは途中でジョンを見失ってしまいました。
切り株に座り、メルがはあはあと息を整えていた時、ジョンが戻ってきました。
「ジョン」
「メルが心配で戻ってきたんだ。大丈夫。においは覚えたから、あとをたどっていけばいい」
ブナの森のけものみちを、ジョンがクンクンとにおいをたどっていきます。ジョンは、ふと顔を上げて言いました。
「メル、この道は、山の家へとつながっているんだ」
「山の家?」
「おばあさんの家だよ」
山の家では、メルのおばあさんが編み物をしていました。
ドアをノックする音がします。
「めずらしいこと。誰だろう」
ドアを開けると、養護施設の北野所長が立っていました。
北野所長は黒い帽子をかぶり、黒い服の上に黒色のコートをはおっていました。
「こんにちは、おばあさん」
「これは、北野所長。わざわざこんなところまで」
「メルさんのことでご相談がありまして。電話では言いづらい話もありますから」
「そうですか。今、お茶でもいれます」
おばあさんは、そういって、重い腰をゆっくりとあげました。
「こっちだ」
ジョンは、けものみちをクンクンと嗅ぎながら進んでいきます。
メルも続きます。
「魔女は、どうしておばあさんのところへ行ったんだろう」
メルが言いました。
「まさか、おばあさんに毒グモを・・・」
ジョンは、スピードをあげました。
おばあさんの家が見えてきました。
山の頂上まであと少し。ジョンが走っていきます。
その時です。
メルが叫びました。
「ジョン、毒グモがいっぱいいるわ」
ジョンが地面を見ると、毒グモがわさわさと長い足で歩き回っているのが見えました。赤と緑のシマシマの線のある毒グモでした。
「おばあさんがあぶない」
ジョンは、おばあさんの家のドアを開けて、中へ入りました。
おばあさんは、椅子に座って編み物をしていました。
「おばあさん」
「おや、ジョンかい。おかえり」
ジョンは、おばあさんの近くに、一匹の毒グモがいることに気づきました。
「あぶない、こっち来て」
ジョンは、おばあさんの服を引っ張って、毒グモから離れた場所へ連れて行きました。しかし、おばあさんはなかなか動きませんでした。
そこへ、メルもやってきました。
あまりにもジョンが強くスカートの裾を引っ張ったので、おばあさんはその場で転んでしまいました。
倒れたおばあさんの足に、毒グモが近づいていきます。
「あぶない」
メルは、大きなほうきで毒グモを追い払いました。
「あぶなかったわ」メルが言いました。
そして、メルとジョンは、おばあさんを起こし、椅子に座らせようとしました。しかし、おばあさんの片足は動かなかったのです。
「ジョン、おばあさんの足・・・」
「うん。メルのママに会いに行った日、交通事故にあって、片足が動かなくなったんだ」
「そんな」
「メルのママが亡くなっても会いにいけなかったのは、歩くことができないからなんだよ」
メルは、おばあさんの手を握りました。
「ごめんなさい、おばあさん」メルが言いました。
「もしかして、メルなのかい?」
「おばあさん、メルよ。孫のメルよ」
メルは、おばあさんと抱き合いました。
メルは、片足が動かないおばあさんにかわって、料理を運んでいます。
お皿を運ぶのはジョンです。
「ジョンが話せるなんて、夢みたいだね」おばあさんが言います。
「へへ」とジョン。
「メルも、いつの間に、料理を覚えたのかい?」
おばあさんが言いました。
「この料理は、たぬき母さんから教わったの。たぬき母さんは、ママの友達で、ブナの森で子どもたちと暮らしているのよ。ママの友達は、リスやツキノワグマやネズミ、それから・・・」
「おやおや、森にいるぜんぶの動物が友達みたいだね」
「そうよ」
メルとおばあさんは笑いあいました。
メルは、ジョンと顔を見合わせてから言いました。
「おばあさん、ジョンと私、人を追いかけてここまで来たの。誰かここに来なかった?」
「そうそう。今日、北野所長が来たんだよ。お前のことをとても心配してるって」
ジョンが叫びました。
「メル、魔女はその人だ」
養護施設の近くの公園で、メルは、ブランコに揺られていました。
隣には、ジョンもいます。
メルは、ずっと考えていました。
ほんとうに、北野所長は『魔女』なのだろうかと。
メルは、一カ月前、初めて養護施設にやってきた日のことを思い出しました。
この公園は、そのとき北野所長といっしょに来た公園でした。
一カ月前。
北野所長のあとを、メルは泣きながら歩いていました。
「泣いたって、どうにもなりませんよ」
北野所長が言いました。
「お母さんは亡くなったのです。お父さんもおばあさんも、あなたとは暮らせない。あなたは、一人ぼっちなのですよ」
メルは、更に泣き出しました。
「その先が養護施設です。落ち着いたら、入ってきなさい。この公園で気持ちを切り替えなさい」
北野所長は、行ってしまいました。
メルは、北野所長が魔女かどうか、本人に会って確かめたいと思いましたが、話をどう切り出したらいいかわかりませんでした。
北野養護施設の食堂で、マサオと洋二が、宿題をやっていました。
「最近、よし子の様子おかしくないか」
マサオが言いました。
「たしかに、こそこそしてるな。おれたちも食べようぜ・・・」
洋二が言いました。
キッチンで、よし子が片付けをしていました。
マサオは、洋二に目で合図をしました。
「よし子さん、今日は雨が降るって言ってたから、洗濯物取り込んだ方がいいんじゃない。所長さんが帰る前に」
「いけない。また所長に怒られるところだったわ」
よし子は、慌てて食堂から出ていきました。
「いくぞ洋二」
そう言って、マサオと洋二はキッチンに入りました。
マサオが紙袋に入った包みをテーブルに置いて中をのぞきました。
「虫かご?」
「どれ」
洋二が紙袋から虫かごを取り出しました。
中には、とても大きな毒グモが入っていました。
「わわわわ」
洋二が虫かごから手を離した瞬間、虫かごが床に落ちて、毒グモが這い出てきました。
「ひゃあああ」
洋二は腰を抜かしています。毒グモが洋二の足を刺そうとした瞬間、マサオが、ザルをかぶせました。
二人は、そこから逃げていきました。
公園に、マサオと洋二が走ってきました。
二人は、ブランコにメルが座っていることに気づきました。
「メル」
「あんたたち、何しにきたのよ」メルが言いました。
「あのさ・・・」洋二が言います。
「何よ」
「ごめん」洋二が言いました。
洋二がマサオをつついて、『お前も言え』とうながしました。
「メル、ごめん」マサオも謝りました。
「ほんと、幼稚なんだから」メルは言いました。
「でも、クモはおれたちじゃないぜ。な、洋二」
「うん。おれたちじゃない。さっきだって、毒グモにさされそうになったし・・・被害者だ、おれたち」
「また、毒グモが出たの?」
「ああ、よし子が隠してた」
「よし子?」
「うん」
「どういうことか説明して」
マサオは、メルに知ってることを全部話しました。
メルが施設を出た日、朝食にダンゴムシをいれたのは自分たちだが、毒グモについては知らないこと。よし子が所長に毒グモの話をしたとき、所長は内緒にしてくれと頼んでいたこと。よし子がキッチンで毒グモの世話をしていたこと。
話がおわると、メルは言いました。
「二人とも、ダンゴムシの借りを返してもらうわよ」
「え・・・」
「毒グモの犯人をつかまえるの。協力してくれるわよね」
メルの隣で、ジョンが「ワン」となきました。
雨が降ってきました。
養護施設のキッチンで、よし子が床にはりついて何かを探していました。
マサオと洋二が食堂へ入ってくると、よし子は急に立ち上がり、マサオのそばへやってきました。
「マサオ。さっきはありがとう。おかげで雨がふる前に、洗濯物をとりこめたわ」
「うん」
「ところで、誰かキッチンに入った?」
「ううん。どうして」
「うん・・・」
「何か、なくなったの?」
「何でもないわ」
ザルも紙袋も、もとの位置に片付けられていました。しかし、よし子の様子が変でした。
マサオは、よし子は毒グモを探している、そう思ったのでした。
夜の十時、鐘の音が鳴ります。
「消灯、消灯」の声が聞こえてきました。
マサオと洋二は、布団の中で寝たふりをしていました。
「おい、洋二。絶対に寝るなよ」
「わかってる」
誰かが子守歌を歌っていました。
ねんねんねむねむ いいよるだ
ねんねんねむねむ おやすみね
ねんねんねむねむ またあした
ねんねんねむねむ いとしい子
みんなが寝静まったころ、マサオと洋二は、懐中電灯を照らし、キッチンへと忍び込みました。
紙袋の中の虫かごを取り出してみましたが、中には何も入っていませんでした。
「やっぱりな、よし子は毒グモを探してたんだ」
「マサオ、じゃあ毒グモはどこへ行ったんだろう」
「さあ」
「こわいよ、刺されたら」
「もう外へ出てるよ、毒グモだって、腹へるだろ」
「そうだね」
「じゃ次行くぞ」
「まだあるの? 戻ろうよ」
「だめだ。メルと約束したんだ」
「・・・わかったよ」
暗闇の所長室の中に、マサオと洋二が足音を立てないように入ってきました。
「なんていう本だっけ」
「『クモの仲間』だよ」
「そうそう。クモの仲間・・・」
「表紙の色は、赤と緑だ」
マサオと洋二は、メルから頼まれた本探しをしているのでした。
その時です。
懐中電灯が光りました。
「誰ですか」
北野所長でした。
「あ、あ、あの・・・」
洋二が口ごもっています。
「おやすみなさい」
マサオは、洋二のパジャマを引っ張って、所長室から出ていきました。
翌朝、山のおばあさんの家で、メルが電話をしています。
「うん、うん・・・わかった。それなら仕方ないわ。じゃ、次の作戦に行くわよ。くれぐれも注意してね」
メルは受話器を置きました。
「お友達かい」
おばあさんがうれしそうに言いました。
「ちがうわ。罪滅ぼしよ」
「ふふふっ」おばあさんは笑いました。
おばあさんの家の庭に大きなテーブルと椅子が置かれていました。
ネズミたちは、お皿を運ぶ役目です。
ツキノワグマは、薪を割っていました。
その割った薪を、ジョンがたき火にいれていきます。火加減を見るのは、竹吉、梅吉でした。
たき火の火があがったころ、松子が大きな魚を焼きはじめました。
キッチンでは、たぬき母さんと眼鏡をかけたメルが、かぼちゃの種をくりぬいて、料理をつくっています。おばあさんは椅子に座り、エンドウ豆のすじをとっていました。リス母さんは、ボールに入ったクルミを棒ですりつぶし、粉々にしています。
メルは、「今日のメニュー」と大きな声で読み上げました。
かぼちゃのスープ
エンドウ豆のサラダ
クルミのケーキ
魚の塩焼き
ぶどうジュース
「お腹いっぱい召し上がれ」
おばあさんがうれしそうに言いました。
テーブルの食事がなくなったころ、メルは言いました。
「みんな聞いて。黒い家の『魔女』のことだけど、まだ見つかっていないの。リスさんやふくろうさんたちが毎日見張りをしてくれてるけど、『魔女』の正体はわからないままなの。毒グモは、ここ山の家にまで広がってきてる。これ以上、毒グモで誰かが傷つくのをとめなくちゃいけない。このブナの森を守るためにも、みんなの力が必要なの」
動物たちは、ざわつき始めました。
「魔女を相手にするなんて、こわいわ」
「仕返しされたら、どうするんだよ」
「今のままでいいのに」
その時、ツキノワグマが立ち上がって言いました。
「みんな、『黒い家』を放っておいた、わしら動物にも責任があると思わないか。あやしいと思いながら、見て見ぬふりをしてきた。メルが、みんなで力を合わせようと言ってくれてるんだ。みんなで、魔女を追い払おうじゃないか」
ネズミたちから、拍手がおこりました。
拍手は、徐々に大きくなっていきました。
ブナの森駅に電車が到着して、マサオと洋二が出てきました。
「なんだ、誰もいないのかよ」
「さみしい駅だな」
そこへ、ジョンが走ってきました。
「たしか・・・」マサオが思い出しています。
「ジョンです」
「そう、ジョンだ。お前、しゃべれるなんてすごいな」
「ええ、まあ」
キョロキョロする二人。
「メルは、森でじゅんび中です」
「ああ」
ジョンのあとを、マサオと洋二がついていきます。
急に、ジョンが振り返りました。
「ところで、メルのこと、ダンゴムシでいじめたそうですね。今度やったら・・・」
ジョンは、「ううー」と唸り声をあげ、牙をむきだしました。
「わかってるって。だからおれたち、来たんだろ・・・」
「なら、いいです」
ジョンは、ニヤリと笑いました。
ブナの森のブナの木広場には、動物たちが集まっていました。
草ぼうぼうだったスロープは、草がきれいに刈り取られ、たぬきの子供たちやネズミたちが滑り台を楽しんでいました。
ブランコもあたらしい板とロープがつけられ、リスの子どもたちが遊んでいました。それを、少し離れたところから、ツキノワグマはうれしそうに見ています。
メルは、地図を広げながら動物たちに説明を始めました。
「リスさんは、今まで通り、見張り係のリーダーをお願いします。見張りをする場所は、こことここ。ふくろうさんは、夜の見張りをお願いします。ツキノワグマさんは、できるだけ多くの松やにをとってきてください」
「松やに? あのネバネバの」
「はい」
「わかった」
「それから、ネズミさんは、つる草を集めて長い長いロープをつくってください」
「わかったわ」
「リスさんたちは、ドングリを森のあちこちにばらまいてください」
「オッケー」
そこへ、マサオと洋二がジョンとともに現れました。
「ちょうど良かった。みんな、夏休みの間、この二人も手伝ってくれることになりました。マサオと洋二」
森の動物たちは、そう言いながら、マサオと洋二のまわりに集まってきました。ツキノワグマ、たぬき、ネズミ、リスたちがじっと見るので、マサオと洋二は固まってしまいました。
「あ、あの・・・」マサオが言います。
「どうも」と洋二。
「よろしく」
ツキノワグマが手を出しました。
「『よろしく』って言ってるわ」
メルが言うと、マサオと洋二は、おそるおそる手を出しました。
おばあさんの家で、メルとおばあさんが料理を作っています。
テーブルには、マサオと洋二が座っています。
おばあさんの横には、足をのせる踏み台が置いてありました。
「この踏み台はね、ツキノワグマさんが作ってくれたのよ」
メルが言いました。
「なかなか、いいよ」おばあさんが言います。
「まるで友達みたいだな」洋二が言いました。
「何のこと?」とメル。
「クマだよ。本当にクマの言葉がわかるのか?」
マサオが聞きました。
「まあね」
メルは、眼鏡を掛けなおしました。
ブナの木広場に、動物たちが集まっていました。
ツキノワグマ、たぬき母さんと三匹の子どもたち、メル、マサオ、洋二もいます。
みんな疲れていました。
「あれから一週間ね」たぬき母さんが言いました。
「何の動きもない」ツキノワグマが言いました。
動物たちの様子を見ていたメルは、洋二にこう言いました。
「マサオ、この眼鏡をかけて、話して」
マサオは、メルに言われた通り、眼鏡をかけて話し始めました。
「あ、どうも。マサオです。昨日、施設の仲間から聞いたんだけど、今日と明日、施設の先生たちは夏休みをとってるらしい」
「北野所長も休みなの?」ジョンが聞きました。
「うん」
「よし子さんもね」メルが言いました。
「どういうことだ。わかるように言え」
怒鳴った口調で、ツキノワグマが言いました。
その声を聞いて、「わあああ」とマサオが驚いて、マサオは洋二に眼鏡を渡しました。
「洋二です。実は、ぼくらの施設にもここと同じ毒グモがいたんだ。つまり、施設の誰かがきっと魔女なんだと思う。今日から施設の先生たちがいないってことは、その魔女があの黒い家に来る可能性があるってことなんだ」
「つまり、魔女が今夜くるってことだな」ツキノワグマが言いました。
「たぶん」
「よし、これで犯人が誰だかわかるね」ジョンが言いました。
動物たちと話したマサオと洋二は、顔を見合わせていました。
その夜。
ふくろうが「ホーホー」と鳴いています。
みんなが寝静まったころ、森じゅうに、カラカラカラという音が鳴り響きました。
それは、『魔女』がやってきた合図でした。
黒い家のドアには、木の実の種をぶらさげて作った『鈴』がとりつけてあり、誰かが黒い家に入ろうとすると音をならす仕組みになっていたのです。
おばあさんの家で寝ていたジョンが吠えました。
ワオーワオーワオー
メルは、起き上がり、急いで黒い家へと向かいました。
ソファで寝ていたマサオと洋二も、ジョンの吠え声で起きて、メルのあとを追いかけます。
黒い『魔女』は、木の実の鈴の音にびっくりして、黒い家から出ていこうとしました。そのとき、足の裏に、松やにがべったりついて、思うように歩けません。ネバネバする足を引きずりながら進むと、今度は足の裏にドングリがくっついてしまいました。
ドングリがくっついた足は、ローラーのように滑り出し、つるつると滑って止まらなくなりました。
「わああああ、助けてくれ」
その先には、ロープが張られていて、『魔女』はロープに足を引っかけて倒れてしまいました。
「痛てててて」
そこへやってきたのが、ツキノワグマとネズミたちでした。
ツキノワグマが『魔女』の体を押さえつけ、ネズミたちは、長いつるで体をぐるぐる巻きにしました。
「た、た、たすけてくれ」
月明りがみんなを照らしています。
ジョンが、マサオに目で合図をしました。
マサオが、『魔女』の黒いフードをとった瞬間、「え」という表情にかわりました。
「副所長さん?」マサオが言いました。
「佐竹さんがなんで」
洋二が言いました。
ブナの木広場に、つる草でぐるぐる巻きにされた佐竹が横になっていました。
まわりには、ツキノワグマをはじめ、たぬき母さんやリス、ネズミたち、森の動物が集まっていました。
メルとジョン、マサオと洋二もいました。
「『魔女』は佐竹さんってこと?」洋二が言いました。
「副所長さん、説明してください」
メルが言いました。
「一体何なんだ、これは・・・」
「毒グモに刺されて危ない目にあった子がいるんです。それに、養護施設にも毒グモがいた。あなたは、なぜ毒グモを黒い家で飼っているのか話してください」
「どうだっていいだろ・・・」
ツキノワグマが牙をむきました。
「わかった、言うよ。毒の研究をしようとしてたんだ。あの毒を薬に変えたら、大儲けできると思ってさ。でも、いつの間にかあんなに増えちまって、どうしようもなくて困ってたんだ」
メルが動物たちに、佐竹の話を伝えました。
「お金のためにやったってこと?」
「なんておそろしいの」
「おろかな奴だ」
動物たちは、口々に言いました。
「じゃあ、ママの隠れ家に入ったのも佐竹さんですか?」
メルが聞きました。
「隠れ家? ああ、あの小屋か。そうだよ。悪かったよ。勝手に入ったりして」
「じゃ、施設にいた毒グモは?」洋二が聞きました。
「知るか」
再び、ツキノワグマが激しく牙をむきました。
「わ、わかったよ。施設にいた毒グモか。これは推測だけど、毒グモがおれのかばんに入りこんでいたのかもしれない。何しろ数が多いからさ。かばんの中に入っていても、不思議じゃない。それで、施設に入り込んだんだろう」佐竹が言いました。
その日のうちに、佐竹は自分で警察へと連絡をして、一週間後には黒い家の毒グモはいなくなりました。
おばあさんの家では、ホームパーティーがひらかれていました。
おばあさんとメル、ジョン、洋二とマサオもいます。
「てっきり、おれはよし子だと思った」と洋二。
「おれも」とマサオ。
「ぼくは、所長が怪しいと思ったんだけどな」ジョンが言いました。
「そうね。私も、北野所長が怪しいかなと思ってた」
メルが言いました。
その時、おばあさんが引き出しから一枚の写真を取り出しました。
「メル、ママの隣にいる人が誰かわかるかい?」
サト子が小学生のころの写真でした。
幼いサト子の隣には、おかっぱ頭の女の子が立っていました。
「北野所長なんだよ」
おばあさんが言いました。
「え」
「サト子と北野所長は幼なじみなんだよ。たしか、サト子が書いていた日記があったはずなんだが・・・」
「あるわ。おばあさん、待ってて」
メルは、自分のリュックの中から、サト子の日記を取り出しました。
「北野所長の本名は、北野カヤというんだよ」
おばあさんが言いました。
六月二十日
カヤに会った。
メルのことを頼んだら「私が責任を持つから」と言ってくれた。
幼なじみは本当に心強い。
学級委員だったカヤなら、きっとメルを守ってくれるはず。
六月二十二日
メルを一人置いていくのは悲しい。
森のみんなにも会いたい。おばあさんにもすごくすごく会いたい。
親不孝な娘でごめんなさい。
六月三十日
いよいよラストかも。
メル、愛してるわ。
空に行っても、ずっとずっと見守っているからね。
わたしのメル・・・
日記はそこで終わっていました。
メルは泣くのをぐっとこらえていました。
おばあさんは前掛けで涙をぬぐっていました。
北野養護施設では、よし子が所長に怒られていました。
「よし子さん、あなたって人は・・・」
「すみません、所長。シマ模様がきれいでつい・・・」
よし子は、何度も所長に頭を下げました。
「よし子さん、車いすを一台用意してください・・・」
「車いすですか?」
「出かけます、早く」
「はい、わかりました」
そういって、よし子は走っていきました。
おばあさんの家の前に、森の動物たちが集まっていました。
今日は、メルが森を出ていく日だったのです。
「メル、何かあったら、いつでも来るんだよ。森のみんなはメルの味方だからね」
たぬき母さんはメルにそう言いました。
「メル、今度来るときまで預かっておくわ」
動物の言葉がわかるメルの眼鏡は、たぬきの松子がつけていました。
ツキノワグマは、メルになにか言おうとしましたが、号泣して言葉になりませんでした。リスの母さんがツキノワグマの背中をさすっています。
ネズミたちもふくろうも見送っています。
おばあさんの家の前に、北野所長が運転する大きなワゴン車が到着しました。
メルのおばあさんは車いすに乗って、ワゴン車の中へと乗り込んでいきました。
「カヤさん、ありがとう」おばあさんが言いました。
「いいえ、おばあさん。私はただ、サト子との約束を守っただけですわ」
所長が言いました。
続いて、メルとマサオ、洋二が大きなワゴン車に乗り込んでいきます。
「さあ、出発するわよ、いい?」
運転席に座った、北野所長がそういいました。
その時です。
ワンワンワン
取り残されたジョンは、車に向かって吠え始めました。
「カヤさん」おばあさんが言いました。
「所長さん、ジョンは大切な家族なの」メルも言います。
「わかったわ。みんなまとめて行けばいいんでしょう」
ジョンもワゴン車に乗り込みました。
ジョンは、いつの間にか人間の言葉を話せなくなっていました。
たぶん、体に入った光の粒がぜんぶ消えてしまったからだと、ジョンは思いました。
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