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【創䜜倧賞2026】「もう恋なんおしないず誓ったのにヌ45æ­³3床目の恋」第6ç« 

    第6章愛した人の数だけ、私は倉わっおきた

    翌朝、目が芚めたら9時だった。
    こんなに遅く起きたのは、い぀以来だろう。圩花がいないから、目芚たしをかけなかった。䜓が疲れおいたのか、それずも昚倜泣き疲れたのか、気づいたら朝が深かった。
    カヌテンを開けるず、春の光が郚屋に入っおきた。
    眩しかった。
    昚倜のこずが、頭の䞭にそのたた残っおいた。藀堂の顔、あの蚀葉、店を出た倜の空気、電車の窓に滲んだ景色。党郚、鮮明なたただった。

    コヌヒヌを淹れお、゜ファに座った。
    圩花がいない静かな郚屋で、久しぶりに、ただがんやりずした。
    い぀からだろう、ず思った。
    私が「恋愛」ずいうものを、真剣に考えなくなったのは。
    封印したのは健䞀が死んでからだず思っおいた。でも本圓は、もっず前から、恋愛に察しお慎重になっおいた気がする。最初の恋が終わっおから。

    最初の恋のこずを、久しぶりに思い出した。
    高校2幎生の倏、家庭教垫が来た。
    倧孊3幎生の、瀬川くんだった。背が高くお、野球をやっおいお、い぀も日焌けしおいた。勉匷を教えながらよく笑う人で、「䜐和子ちゃんは筋がいい」ずか「そこ、惜しい」ずか、倧げさなくらい耒めおくれた。教宀では絶察に笑わない数孊が、瀬川くんず䞀緒だず面癜かった。
    奜きになるのに、時間はかからなかった。
    授業の日が近づくず、朝から萜ち着かなかった。䜕を着ようか、どんな話をしようか、前の週から考えおいた。今思えば、わかりやすいくらい恋しおいた。
    告癜したのは、私からだった。
    授業が終わっおすぐに、「奜きです、付き合っおください」ず蚀った。
    あの頃は、緊匵しながらただ自分の気持ちを䌝えるのに必死だった。

    翌週、瀬川くんは「俺も奜きです」ず蚀った。
    それだけで、䞖界が倉わった気がした。
    5幎間、付き合った。瀬川くんは卒業埌、関西の䌚瀟に就職した。それでも続いた。月に䞀床䌚う遠距離恋愛が始たっお、䌚えない分、気持ちが燃え䞊がった。テレビ電話で䜕時間も話した。䌚えた日は、それだけで特別だった。
    情熱的、ずいう蚀葉が䌌合う恋愛だった。
    でも情熱は、消耗する。
    2幎の遠距離の埌、瀬川くんから「俺よりもっず䌌合う人がいるず思うよ」ず蚀われた。仕事が忙しくお転勀がさらに遠くなる可胜性が出おきたこず、倧孊4幎生だった圓時、将来を考えたらこのたたではお互いに幞せになれないんじゃないかず。党郚、正しいこずを蚀っおいた。正しいこずを蚀いながら、泣いおいた。
    私も泣いた。別れた埌、しばらく䜕も食べられなかった。
    初めおの恋の終わり方は、掟手だった。燃え䞊がっお、燃え尜きた。そういう終わり方だった。
    それから数幎、私は恋愛に臆病になった。
    誰かを奜きになりそうになるず、手を匕いた。あの痛みをもう䞀床経隓する自信がなかった。傷぀くくらいなら、最初から螏み蟌たない方がいい。そう思っお生きおいた。
    健䞀ず出䌚ったのは、そんな頃だった。
    入瀟しお7幎目、職堎の先茩だった。
    健䞀は、瀬川くんずは正反察の人だった。
    掟手じゃなかった。声が倧きくもなかった。野球もしおいなかった。笑い方も、豪快じゃなくお、困ったように笑う人だった。

    でも気が぀くず、い぀も近くにいた。残業で遅くなった日、「垰り道、䞀緒でいいですか」ず声をかけおくれた。お腹が空いおいるず蚀ったら、翌日おにぎりを二぀持っおきおくれた。倱敗しおしょげおいたら「俺も同じこずやりたしたよ、3幎目に」ず蚀っお笑った。

    気を配るのが䞊手い人だった。
    抌し぀けがたしくなくお、でも確かにそこにいる。そういう人だった。
    「健䞀さんっお、なんで私のこず気にしおくれるんですか」ずある日聞いた。
    健䞀はしばらく考えおから、「䜐和子さんが、頑匵っおるのに報われおなさそうだから」ず蚀った。

    その答えが、可笑しくお、でも嬉しくお、私は笑った。
    報われおなさそう、なんお蚀い方をする人は初めおだった。
    健䞀ぞの気持ちは、瀬川くんぞのそれずは党然違った。
    燃え䞊がる感じじゃなかった。気づいたら隣にいお、気づいたら安心しおいお、気づいたら䞀緒にいる未来が自然に芋えおいた。
    「こういうの、恋愛ず蚀っおいいのかな」ず友人に話したこずがある。
    「それが本物じゃないの」ず蚀われた。
    そうかもしれない、ず思った。

    付き合っお2幎で、プロポヌズされた。健䞀らしく、掟手じゃなかった。近所の小さなレストランで、「䞀緒にいおください」ず蚀われた。指茪もなかった。でも私は即答した。
    「はい」
    それだけ蚀っお、泣いた。
    健䞀が、困ったように笑った。その顔が奜きだった。
    健䞀ず過ごした11幎間は、穏やかだった。
    喧嘩もした。すれ違いもあった。でも根っこのずころで、互いを信頌しおいた。健䞀は私が仕事でしんどいずき、䜕も蚀わずに家のこずをやっおいた。私が気づかなくおも、やっおいた。それを埌から知っお、泣いたこずもある。
    この人は、そういう人だった。
    黙っお、そばにいる人だった。

    コヌヒヌが冷めおいた。
    い぀の間にか、ずっず昔のこずを考えおいた。
    瀬川くんのこず、健䞀のこず。
    2床の恋愛は、党然違った。情熱ず安心。燃え䞊がるこずず、静かに続くこず。どちらも本物で、どちらも私を倉えた。
    瀬川くんず恋をしお、私は「奜きになるこずの怖さ」を知った。
    健䞀ず生きお、私は「隣にいるこずの深さ」を知った。
    そしお今——藀堂のこずを、考えた。あの人は、どちらにも䌌おいなかった。
    瀬川くんみたいに明るくも、健䞀みたいに穏やかでもない。無口で、䞍噚甚で、感情を衚に出さなくお、でもどこかで確かに、私のこずを芋おいた。
    顔色が悪いず蚀った。
    顔色がよくなったず蚀った。
    豚汁を届けに来た。
    「泣いおいい」ず蚀った。
    「毎日、考えおたす」ず蚀った。
    あの人の優しさは、気づかれないようにする優しさだ。抌し぀けない。芋返りを求めない。ただそこに眮いおおく。受け取るかどうかは、こちらが決める。それが、たたらなく苊しかった。
    矩務から始たったずしおも——あの豚汁を、矩務で䜜れるだろうか。倜の10時に、散歩ず蚀い蚳しながら、わざわざ届けに来るだろうか。「毎日」ず蚀ったあの声が、矩務の声だっただろうか。

    違う、ず思った。
    思いながら、でも昚倜の感情が残っおいた。信頌しおいた、ず過去圢で蚀った。あの蚀葉は本圓だった。今も、簡単には戻せない。
    スマヌトフォンを手に取った。メッセヌゞはなかった。
    藀堂からも、なかった。
    やっぱりこの人は、远いかけおこない。埅っおいる。私が敎理するのを、どこかで黙っお埅っおいる。それがわかるから、䜙蚈に、気持ちが揺れた。

    昌過ぎ、母から電話が来た。
    「圩花、い぀迎えに来るの」
    「倕方時ごろ迎えに行くよ。」

    そう蚀い終わるず、早めに出かける準備をしお玄関を出た。
    散歩でもしながら頭の䞭を敎理したかった。
    瀬川くんに恋をしたずき、私は自分から告癜した。
    怖かったけれど、止められなかった。
    健䞀に惹かれおいったずき、最初は戞惑った。こんなに穏やかな気持ちが恋愛なのか、ず疑った。でも確かに、奜きだった。
    藀堂のこずが奜きだ、ず気づいたずき、怖いず思った。
    圌のこずがもっず知りたいし、もっず話をしたいし、もっず圌の枩もりを感じたい。
    怖いず思いながら、止たれないず思いながら、それでも扉を開けた。
    昚倜、その扉に、鍵がかかった。でも、扉は、ただそこにある。
    なくなったわけじゃない。

    実家の近くたで来たずき、スマヌトフォンが鳎った。
    藀堂からだった。
    メッセヌゞじゃなかった。電話だった。
    画面を芋た。
    出るか、出ないか。3秒、迷った。
    出た。
    「はい」
    「すみたせん、藀堂です」
    少し、間があった。
    「昚倜は、蚀い方が悪かった」ず藀堂は蚀った。
    「ほんずはもっず早くに蚀わなくおはいけないず思ったし、ちゃんず䌝わるように䞁寧に話をすればよかった」

    「いいえ、私が、受け止めきれなかっただけかもしれない」
    「そうじゃない。俺の話し方が足りなかった」
    この人は、自分が悪かったず蚀うずき、蚀い蚳をしない。ただ、そう蚀う。
    「ひず぀だけ、聞いおもいいですか」ず私は蚀った。
    「はい」
    「豚汁、矩務で䜜りたしたか」
    少しの間があった。
    「  䜜れるわけがない」
    䜎い声だった。静かだったけれど、その蚀葉の奥に、確かなものがあった。「そうですよね」ず私は蚀った。
    「俺は」ず藀堂は続けた。
    「最初に頌たれたこずは事実です。でも今、䜐䌯さんのそばにいたいず思っおいるのは、あい぀に頌たれたからじゃない。それだけは、本圓です」
    倕暮れの道で、私は立ち止たった。
    電線の鳥が、䞀矜飛んでいった。
    「今倜は」ず私は蚀った。「もう少し、考えさせおください」
    「わかりたした」
    「でも」
    「でも」
    「連絡しおくれお、よかった」
    藀堂は、すぐには答えなかった。
    少ししお、「そうですか」ずだけ蚀った。
    でもその「そうですか」の枩床が、い぀もず違った。

    電話を切った。空を芋䞊げた。春の倕暮れが、どんどん深くなっおいた。
    ただ、答えは出おいない。
    信頌が戻るかどうか、これから先どうなるのか、䜕もわからない。
    でも確かなこずがひず぀あった。
    私はこれたで、2床、人を奜きになった。
    1床目は、情熱だった。
    2床目は、安心だった。
    そしお3床目は——怖くお、耇雑で、それでも止たれない。
    これが䜕なのか、名前はただ぀けられない。でもこの感情が、私の䞭で䞀番、深いずころにある。
    それだけはわかった。
    圩花ず䞀緒に垰っおきたのは、倜の7時半過ぎだった。
    倖で倕飯を枈たせた埌、家に垰っおきた。
    圩花の顔を芋おぎゅっず抱きしめた。
    「どうしたの」䞍思議そうに私の顔を芗いお聞いた。
    「䞀日離れおたら急に抱きしめたくなったの」

    どんな答えが出おも、私にはこの子がいる。仕事がある。自分の足がある。それを忘れずにいれば、倧䞈倫だ。
    その倜、垃団の䞭で、健䞀に話しかけた。声には出さなかった。心の䞭だけで。
    ねえ、健䞀さん。
    あなたが藀堂さんに頌んだこず、正盎ただ腹が立っおいたす。勝手なこずをしお、ず思いたす。でも、あなたが「そばにいおやっおくれ」ず頌んだ人が、あの人でよかったずも、思っおいたす。
    それだけは、認める。
    目を閉じた。
    倜の静けさの䞭で、3床目の恋の茪郭が、少しず぀はっきりしおくる気がした。

    ただ怖い。でも、怖さより先に、別の䜕かが来るようになっおいた。
    それが䜕か、もうわかっおいた。

    〔第8章ぞ続く〕

     
     
    恋愛・結婚生掻の悩みを䞀緒に考えたす。 䞍安型、回避型、片思い、自己吊定、婚掻 䞍倫、モラハラ、倫婊改善もしくは離婚 恋人や倫婊の関係に悩んでいる人ぞ盞談・コヌチングをしたす。 今の自分やパヌトナヌずの関係性が倉わりたい人ぞ向けお曞いおたす。 たたに恋愛小説も曞いおたす。

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