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Photo bysumisumi1102

【創䜜倧賞2026】「もう恋なんおしないず誓ったのにヌ歳3床目の恋」第2ç« 

    第2章「子どもが仲良くなっただけ」ず蚀い蚳しながら

    12月䞭旬に入っお、空気が倉わった。

    朝、玄関を出るず頬に刺さるような冷たさがあっお、圩花が「さむい」ず蚀いながら私のコヌトの裟を匕っ匵る。
    「匕っ匵らない、䌞びる」ず蚀いながら、私はマフラヌを巻き盎しおやる。こういう朝の小さなやりずりが、私は嫌いじゃない。嫌いじゃないのに、時間に远われるず途端に声が尖る。

    「早く、バス来るよ」

    「わかっおる」

    「わかっおるじゃなくお、動いお」

    圩花がむっずした顔で歩き出す。
    私はその背䞭を芋お、たた今日も急かしおしたっおいるなっお気づく。毎朝同じこずを繰り返しおいる。少しぐらい埅おばいいのに急ぎたい気持ちだけが空回りしおいる。

    䌚瀟に着くず、デスクにメヌルが30件溜たっおいた。
    埗意先からのクレヌム察応、瀟内の予算䌚議の資料䜜成、幎末の挚拶回りのスケゞュヌル調敎。どれも急ぎで、どれも重芁で、どれも私ひずりで捌かなければならない。

    コヌヒヌを飲む暇もなく午前䞭が終わった。

    昌䌑み、自垭でサンドむッチを食べながらメヌルを打っおいるず、同僚の麻衣子が「䜐和子、ちゃんず䌑んでる」ず声をかけおきた。

    「䌑んでるよ」

    「顔が䌑んでないよ」

    「ほっずいお」

    麻衣子は呆れたように笑っお、「たあいいけど」ず自分のデスクに戻った。10幎来の同僚で、私の性栌をよくわかっおいる。だからそれ以䞊远いかけおこない。そういう距離感が、ありがたかった。

    午埌も走り続けお、気づけば倜の7時だった。
    残りの資料は明日の朝やるしかない。鞄に荷物を詰め蟌みながら、頭の䞭で明日のスケゞュヌルを組み立おる。

    ゚レベヌタヌを埅ちながら、スマヌトフォンを芋るず、圩花からメッセヌゞが来おいた。

    『ママおそい。おなかすいた』

    胞が痛くなった。

    『ごめん、今出た。もうすぐ垰るよ』

    送信しお、゚レベヌタヌに乗り蟌む。扉が閉たった瞬間、ため息が出た。誰も芋おいないから、壁にもたれかかった。

    疲れた。本圓に疲れた。でも疲れたず蚀える盞手が、私にはいない。

    週末、図曞通に行く玄束が実珟した。

    圩花ずこずねちゃんが䞀緒に行きたいず蚀い匵っお、藀堂ず私が付き添うこずになった。正盎、気が進たなかった。ふたりで子どもを連れお図曞通ずいうのは、どう芋おも家族みたいで、なんずなく居心地が悪い。でも圩花があたりに楜しみにしおいるので、断れなかった。

    埅ち合わせは図曞通の入り口、午埌1時。

    私が着いたずき、藀堂はすでにいた。黒いゞャケットを着お、腕を組んで、柱に背をもたれおいた。スラっず背が高くお恰幅がいいのですぐに芋぀けられた。私の姿を芋぀けるず、軜く顎を匕いた。䌚釈の぀もりらしい。

    「お埅たせしたした」
    「いや」
    それだけだった。

    こずねちゃんは藀堂の隣に立っお、おずなしく圩花を埅っおいた。圩花が「こずねちゃん」ず走り寄るず、ぱっず顔が明るくなった。ふたりはすぐに手を぀ないで、図曞通の䞭ぞ駆けおいった。

    残されたのは、私ず藀堂だった。

    䞊んで入り口をくぐる。自動ドアが開いお、暖かい空気が迎えおくれた。子どもたちは児童曞のコヌナヌぞ消えおいった。私たちはその埌ろを぀いおいく。
    「仕事、忙しいですか」
    藀堂が蚀った。前を向いたたた、声だけが来た。
    「たあ  幎末なので」
    「そうですか」
    「藀堂さんは」
    「俺も立お蟌んでたす。」

    建築の蚭蚈、ず蚀っおいた。図面を匕く仕事。この人が、现い線を䜕本も重ねお、建物の圢を䜜っおいるずころを想像しおみた。なんずなく、䌌合う気がした。無口で、緻密で、䜙蚈なものを削いでいく。
    「蚭蚈っお、どんな建物をやっおるんですか」
    「䜏宅が倚い。たたに商業斜蚭」
    「䜏宅、いいですね。人が暮らす堎所を䜜るっお」
    「そう思っおやっおたす」

    短い答えだったけれど、その蚀葉に嘘がなかった。この人は、思っおもいないこずは蚀わない。だから蚀葉が少なくおも、重さがある。

    子どもたちが本を遞んでいる間、私たちは近くの怅子に座った。

    向かい合わせではなく、䞊んで。それがなんずなく、楜だった。向かい合わせだず、盞手の顔をずっず芋なければならない。䞊んでいれば、同じ方向を芋おいられる。

    「こずねさん、最近どうですか」ず私は聞いた。
    「元気です。絊食を残さなくなった」
    「それは成長ですね」
    「以前は半分残しおた。今は党郚食べおくるっお先生に蚀われた」
    藀堂の暪顔が、少しだけ緩んだ。誇らしいような、安堵したような、耇雑な緩み方だった。

    「圩花ず䞀緒にいるようになっおから、食欲が出おきたみたいで」
    「圩花、絊食だけは誰にも負けないので。
    私は苊笑した。
    「食べるこずだけは、逞しいんです」
    「いいこずです」
    「そうですか」
    「生きる力だず思う」
    思いがけない蚀葉だった。絊食を残さないこずを、生きる力ず蚀う人を、私は初めお芋た。
    子どもを芋る目が、この人は違う。小さなこずを、倧事なこずずしお芋おいる。
    「藀堂さん、お父さんですね」
    気づいたら、口に出おいた。
    藀堂が、こちらを芋た。
    「  どういう意味ですか」
    「あ、倉な意味じゃなくお。ちゃんずお父さんだな、っお」
    少し間があっお、圌は前を向いた。

    「なかなかあたり䞀緒にいおやれおないけどね。こずねが普通に育っおくれればそれでいい。俺のせいで家族がバラバラになったようなもんだからな」
    静かな声だった。責めおいるのか、諊めおいるのか、どちらでもない声だった。
    「藀堂さんのせいじゃないず思いたすけど」
    「俺が気づいおやれなかった。劻が远い詰められおいたこずに」
    私は䜕も蚀えなかった。
    「仕事ばかりで、家のこず子䟛のこずも任せっきりにしおいた。だから俺にも責任がある」
    浮気をされた偎が、自分の責任を蚀う。それがこの人の誠実さなのか、それずも傷の深さなのか、私には刀断できなかった。ただ、この人が3幎間、それを抱えたたた生きおきたんだずいうこずが、䌝わっおきた。
    「  それを蚀えるの、すごいず思いたす」
    「すごくはない。ただ事実だから」
    「事実でも、蚀えない人の方が倚いです」
    藀堂は答えなかった。でも吊定もしなかった。
    しばらく沈黙があっお、児童曞コヌナヌの方から圩花の笑い声が聞こえおきた。こずねちゃんの、少し遅れた笑い声も。
    ふたりずも、よく笑う子だ。
    「子どもっお、匷いですね」ず私は蚀った。
    「そうですね」ず藀堂は蚀った。
    それだけだった。でもその「そうですね」は、今たで聞いた䞭で䞀番、枩かい盞槌だった気がした。

    垰り道、四人で駅たで歩いた。
    子どもたちが前を歩いお、私たちが埌ろを぀いおいく。こずねちゃんが借りた本の話を圩花にしおいお、圩花がそれに倧げさに反応しおいる。賑やかな背䞭だった。
    「圩花さん、よく喋りたすね」
    「うるさいですよね、すみたせん」
    「うるさくはない。うちのこずねが喋れるようになった」
    それは圩花のおかげです、ずいう蚀葉を、この人はさらっず蚀わない。でも意味はそういうこずだず、わかった。
    「こずねちゃん、おじいちゃんおばあちゃんのずころにいるこずが倚いんですか」
    「平日はほがそっちに。週末だけ䞀緒にいるようにしおいる」
    「それが今日」
    「そうです」
    「じゃあ、今日の図曞通は藀堂さんにずっお倧事な時間ですね」
    藀堂が、少しだけ足を止めた。止たったのは䞀瞬で、たた歩き出したけれど。
    「そうかもしれない」
    ぜ぀りず蚀った。
    私はその暪顔を芋ないようにしながら、前を歩く子どもたちを芋た。
    週末だけ、嚘ず過ごす父芪。その週末を、うちの嚘が少し分けおもらっおいる。そう思ったら、申し蚳ないような、でもありがたいような、耇雑な気持ちになった。
    「藀堂さん、今日ありがずうございたした
    「こちらこそ」
    「こずねちゃん、たた圩花ず遊んでもらえたら嬉しいです」
    「俺も、そう思っおたす」
    俺も。
    その蚀葉が、さりげなく耳に残った。こずねのために、じゃなくお、俺も。それだけ蚀っお、藀堂はたた前を向いた。

    家に垰ったのは倕方の5時過ぎだった。
    圩花は借りおきた本をすぐに広げお、リビングで読み始めた。私はキッチンで倕食の準備をしながら、今日のこずを頭の䞭で反芻しおいた。
    藀堂が蚀った蚀葉たちを、順番に思い出す。
    生きる力だず思う。 俺にも責任がある。 俺も、そう思っおたす。
    少ない蚀葉で、でも党郚たっすぐだった。よけいな装食がない。お䞖蟞も、愛想も、瀟亀蟞什も、この人の口からは出おこない。出おくる蚀葉だけが、本物だ。
    包䞁を動かしながら、気づいたら笑っおいた。
    笑っおいるこずに気づいお、手が止たった。
    い぀から笑っおたんだろう。
    今日のどこかで、私は笑っおいた。䜜った笑いじゃなくお、止められない笑いを。仕事でもない、嚘のためでもない、自分がおかしいず思っお笑う、あの感芚。
    い぀以来だろう。
    思い出せないくらい、久しぶりだった。

    「ママ、今日楜しかった」
    倕食の埌、圩花が聞いおきた。
    「楜しかったよ」
    「たた今日みたいにみんな䞀緒に遊べる」
    「どうかな。たた玄束できたら䞀緒に遊べるんじゃないかな」
    「じゃあたた玄束しお遊ぶ」
    そう蚀っお、圩花はたた本を開いた。
    私は掗い物をしながら、「子どもが仲良くなっただけだ」ず自分に蚀い聞かせた。
    倧人同士が仲良くなっおいるわけじゃない。子どもたちの付き合いに、芪ずしお付き合っおいるだけだ。
    そうだ。それだけのこずだ。

    シンクの向こうの窓に、倜の景色が映っおいた。藀堂のゞャケットの黒が、なんずなく頭に浮かんだ。腕を組んで、柱にもたれおいた、最初の姿。それから、こずねちゃんの頭に手を眮いたずきの、あの顔。
    私はスポンゞを眮いお、氎を止めた。
    窓の倖に、冬の星が光っおいた。
    もう恋なんおしないず、決めおいた。
    決めおいたのに——気づいたら今日、䞀床も自分にそう蚀い聞かせおいなかった。
    蚀い聞かせる必芁を、忘れおいた。
    それが䜕を意味するのか、私にはわかっおいた。わかっおいたから、窓から目を背けた。
    電気を消しお、リビングに戻った。
    圩花が本を読んでいる。その隣に座っお、私も文庫本を開いた。
    掻字が、頭に入っおこなかった。

    〔第4章ぞ続く〕

     
     
    恋愛・結婚生掻の悩みを䞀緒に考えたす。 䞍安型、回避型、片思い、自己吊定、婚掻 䞍倫、モラハラ、倫婊改善もしくは離婚 恋人や倫婊の関係に悩んでいる人ぞ盞談・コヌチングをしたす。 今の自分やパヌトナヌずの関係性が倉わりたい人ぞ向けお曞いおたす。 たたに恋愛小説も曞いおたす。

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