
人生生きてたらウィンナーが降ってくることもあるんだなあ
一昨日の朝のこと。
珍しく6時に目が覚めて、夫と散歩に出ることにした。
空気は少し湿っていて、風はゆっくり流れていた。
マンションの自動ドアを出て、家の前の坂を少し下ったときだった。
ポトッ。
少しだけ重たい音がした。
見ると、少し先に茶色いものが落ちている。
枯れ葉だろうと、なんでもない気持ちで通り過ぎようとした。
けれど何気なく目をやると、それは食べかけの大きなウィンナーだった。
思わず足が止まる。
かつて立派だったであろうその姿は、白っぽいマンションのエントランスにはあまりにも似合わなかった。
そういえば落ちたときの音も変だった。
枯れ葉なら、ポトッなんて音はしない。
しっかり中身の詰まったものが落ちた音だ。
まじまじと見ていると、夫が言った。
「ジョンソンビルのウィンナーじゃない?」
そして切ない顔で頭上を見上げた。
つられて空を見ると、一羽のトンビが小さな円を描きながら飛んでいた。
「悔しいなあ」
私が呟くと、夫も同じような顔で頷いた。
ジョンソンビルのウィンナーが大好きな彼は、完全にトンビ側の気持ちになっていた。
トンビにとっても、なかなかのご馳走だったに違いない。
嬉しくて浮かれていたのか。
誰かに追いかけられたのか。
理由は分からないけれど、何かの拍子に落としてしまったのだろう。
その日の最高の朝ごはんになるはずだったのに。
悔しくて諦めきれず、空をぐるぐる回っているようにも見えた。
真下に降りればすぐ見つかるのに、と教えてあげたくなる。
けれど彼は、地面に見えない結界でも張られているかのように、空から偵察するばかりだった。
私たちは再び歩き出した。
しばらく無言で歩いたあと、夫がぽつりと言った。
「人生生きてたら、ウィンナーが降ってくることもあるんだな」
その言葉が妙に気に入った。
名言のようでもあり、ただの感想のようでもある。
その曖昧さがいい。
考えてみれば、いつもと少し違う朝だった。
いつもより早く起きて。
いつもなら歩かない時間に外へ出て。
そして空から降ってきたウィンナーに出会った。
明日なにが起きるかなんて、本当にわからない。
だから少しだけ楽しみでもある。
人生生きてたら、ウィンナーが降ってくることもあるのだから。