
ショート) 残暑お見舞い申し上げます
姉が残暑の手紙を出そうとしているので
覗き見してみた。
『早いもので、来年の7月は夏ですね
残暑お見舞い申し上げます』
おかしい。
早いもので、と言っても
来年の話は気が早すぎるし
7月はいつだって夏だ。
寧ろ、夏ならば暑中見舞いだ。
これはダメだよ、と姉に伝えると
SMAPが解散した時のような
驚愕の表情を見せたが
直ぐに書き直すという。
『早いものでSMAPが解散して
もう10年が経ちますね
残暑お見舞い申し上げます』
いや、SMAPは私の中で
そう思っただけで
例えに引っ張られ過ぎだ。
「もうそんなに!?」とはなるが
残暑とは関係がない。
不満なのか
姉はシャドーボクシングで
私を威嚇してくる。
とにかく書き直すという。
『早いもので、私が
シャドーボクシングを始めて
1ラウンドが経過しました。
残暑お見舞い申し上げます』
早すぎるというより思いつきだ。
そして、これが届く頃にはきっと
シャドーボクシング等忘れている。
そもそも
『早いもので〜』と付ける必要があるのか?
大アリだと言う。
三回忌の時には
『早いもので、◯◯さんが死んでから
もう三年が経ちましたね』
と、送っているという。
親戚付き合いが遠のいているのは
お前のせいだったのか。
「早いもので、早いもので」と
続く言葉探しに必死な姉の背中を
見送り、部屋に戻った。
それから三日後
私宛てに手紙が届いた。
『早いもので、姉と弟の縁を切ってから
三日が経ちましたね
残暑お見舞い申し上げます』