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地方の小さな脱毛サロンが「売り込まない経営」を選んだ理由

    〜二人の女性との出会いが、僕を動かした〜

    脱毛サロンの仕事は、毛をなくすことだと思われがちです。

    もちろん、それは間違っていません。
    でも、店を続ける中で僕が何度も感じてきたのは、脱毛はそれだけではないということでした。

    人前で肌を出すことへのためらい。
    ずっと言えなかったコンプレックス。
    年齢を重ねた先の清潔の問題。
    親にも言いにくい子どもの悩み。
    そして、本当に自分に必要なのか分からないまま、相談の前で立ち止まってしまう気持ち。

    お客様が店に持ってくるのは、単なるムダ毛の悩みではありません。
    その人の生活の中に積もってきた、小さな不便やためらいや諦めです。

    だから僕は、脱毛を「売る」ことよりも先に、話を聞くことを大事にしたいと思ってきました。

    高額コースを前提にしない。
    無理に不安を煽らない。
    必要がないと感じたら、お断りすることもある。

    商売として考えれば、遠回りかもしれません。
    それでも僕がこのやり方を選んできたのは、脱毛は本来、その人の人生を少し楽にするためのものだと思っているからです。

    そう考えるようになった原点には、二人の女性との出会いがありました。


    2022年1月、何気ない夜がきっかけだった

    2022年1月。
    熊本市内で、仲間と酒を飲んでいた夜のことでした。

    特別な日ではありません。
    祝い事があったわけでも、人生を変えるような出来事が起きると予感していたわけでもありません。

    本当に、いつも通りの何気ない夜でした。

    でも今振り返ると、あの夜が、脱毛専門サロンBLOSSOMを開業するきっかけになりました。

    その日、たまたま席についた女性が山鹿出身だと分かり、会話の流れで美容の話になりました。
    その中で印象に残ったのが、彼女の肌のきれいさでした。

    理由を聞くと、彼女は自分の過去を話してくれました。

    小学生、中学生の頃、体毛が濃いことがコンプレックスだったこと。
    剃っても毛穴が目立ち、肌を出す服装を避けていたこと。
    体育や水着の時間も、周りの目が気になっていたこと。

    そんな日々が、高校生になってアルバイトを始め、自分で稼いだお金で脱毛サロンに通い始めたことで変わったそうです。

    ムダ毛がなくなり、肌を気にせず過ごせるようになった。
    服を選ぶときにためらわなくなった。
    人の視線を気にしすぎずに済むようになった。
    それによって、気持ちも前向きになれた。

    その話が、僕の心に強く残りました。

    脱毛というと、外から見れば「毛がなくなる」という結果に目が向きやすい。
    でも、その女性の話の本質はそこではなかったと思います。

    本人にとって変わったのは、肌の見た目だけではありません。
    日常の過ごし方であり、自分に対する感じ方でした。

    脱毛は、単なる美容ではなく、その人の気持ちや日常を変えることがある。
    僕はその夜、初めてそのことを実感しました。


    「山鹿には脱毛サロンがなかったから」

    僕は素直に聞きました。

    「どうして山鹿で脱毛しなかったの?」

    返ってきた答えは、とてもシンプルでした。

    「山鹿には脱毛サロンがなかったから」

    だから、熊本市内までバスで通っていた。
    お金も時間もかかる。
    それでも、そこに行くしかなかったのだそうです。

    その言葉を聞いたとき、僕の中に一つの疑問が残りました。

    今も同じように悩んでいる人が、山鹿にいるのではないか。
    悩みがないわけではない。
    ただ、近くに店がない。
    相談する場所がない。
    通うには時間もお金もかかる。
    そのせいで、選ぶ前に諦めてしまっている人がいるのではないか。

    地方には、こういうことが意外と多いと思います。

    欲しいものがない、ではなく、
    必要としている人はいるのに、選択肢そのものが少ない。

    脱毛も、その一つでした。

    当時の僕は、山鹿青年会議所の理事長を務めていました。
    青少年を笑顔にする運動を掲げ、地域のために何ができるかを考えながら活動していました。

    でもその一方で、目の前には、山鹿で育ちながら、自分の悩みを解消するために街を離れなければならなかった女性がいました。

    その現実を前にして、自分は何ができるのかを考えるようになりました。

    大きなことではなくていい。
    すべての課題を解決できなくてもいい。
    でも、「山鹿にはないから仕方ない」と諦めるしかない状況を、一つ減らすことはできるかもしれない。

    そう思ったことが、BLOSSOMの原点でした。


    もう一人の女性が、脱毛という仕事の意味を教えてくれた

    ただ、その頃の僕は美容業界とは無縁で、脱毛について何も知りませんでした。

    そこでまずは知ることから始めようと思い、知人の女性が勤める美容サロンに通い始めました。
    彼女は夜の仕事から美容の世界へ進み、技術や知識を身につけ、目の前のお客様と真剣に向き合っていました。

    僕はその姿を見て、強く感心しました。

    サロンでは、脱毛初心者だった僕に、毛の仕組みや施術の考え方、機械の違い、肌への向き合い方などを丁寧に教えてくれました。

    今振り返ると、あの時間は単なる知識を得る時間ではありませんでした。

    脱毛は、ただ毛をなくすだけのものではない。
    人の気持ちを前向きにする仕事にもなり得る。
    目の前のコンプレックスを軽くし、その人の生活を少し楽にすることができる。

    そのことを、僕は彼女から学んだのだと思います。

    一人の女性が、脱毛で人生が変わった経験を教えてくれた。
    もう一人の女性が、脱毛という仕事の意味を教えてくれた。

    この二人との出会いが、僕の考え方を変えました。
    そして、「山鹿でも、同じように選べる環境をつくりたい」と思うようになりました。


    山鹿で“通えない”をなくしたい

    山鹿だからできない。
    近くにないから諦める。
    通うには時間とお金がかかる。

    そういう状況を、少しでも変えたいと思いました。

    脱毛に限らず、地方では「本当は気になっているけれど、わざわざ遠くまで通うほどではないと思って我慢していること」が少なくありません。
    けれど、その我慢は毎日の中で積み重なっていきます。

    自己処理の手間。
    肌荒れ。
    服装の選び方。
    人目を気にする気持ち。
    誰にも相談できずに、ずっと自分の中だけで抱えている違和感。

    それは他人から見れば小さなことかもしれません。
    でも本人にとっては、毎日のことです。
    毎日少しずつ気になることは、時間とともに想像以上に重くなります。

    だから僕は、山鹿でも脱毛が完結する環境を作りたいと思いました。
    必要な人が、必要なときに、無理なく相談できる場所を作りたいと思いました。

    そのために、美容の展示会にも足を運びました。
    数十社の脱毛機を見て、説明を聞き、実際に体験しました。
    理論、安全性、効果のバランスに納得できる機器を選びました。

    決して安い買い物ではありませんでした。
    それでも、山鹿で安心して通える場所を作るためには必要な選択だと考えました。

    僕はもともと美容業界の人間ではありません。
    だからこそ、雰囲気や営業トークだけでは決めたくありませんでした。
    分からないからこそ、自分の目で見て、自分で体験して、自分が納得できるものを選びたかったのです。

    地方の小さな店だからこそ、最初に妥協してはいけない。
    それは今でも変わらない考えです。

    そして2022年7月、山鹿市に脱毛専門サロンBLOSSOMを開業しました。

    今では山鹿市だけでなく、周辺地域からもご来店いただくようになりました。
    けれど、開業したから終わりではありませんでした。
    むしろ、そこからが本当のスタートでした。

    実際に店を始めてみると、来店される方の理由は、こちらの想像よりずっと多様でした。
    そして、その多様さに向き合う中で、僕の中で一つの考えがはっきりしていきました。

    それが、「売り込まない経営をしよう」ということでした。


    脱毛業界への違和感があった

    美容業界には、不安を入り口にした売り方があります。

    今のままではいけない。
    早く始めた方がいい。
    今決めた方がお得。
    契約しないと損をする。

    もちろん、すべてが悪いとは思いません。
    背中を押してもらったことで行動できる人もいます。

    でも僕は、そこにずっと違和感がありました。

    人は何かしらの悩みを抱えて店に来ます。
    長年言えなかったことを、やっと相談しに来る人もいます。
    そんな人に対して、さらに不安を重ねて契約を急がせるやり方を、僕はしたくありませんでした。

    だからBLOSSOMでは、都度払いを基本にしています。
    高額コースを前提にしない。
    その場で急いで決めさせない。
    必要がないと思えば、お断りすることもある。

    商売として考えれば、効率は良くないかもしれません。
    でも僕は、その方が長く信頼される店になると思っています。

    なぜなら、お客様はメニューを買いに来ているのではなく、その先の自分の生活を少し良くしたくて来ているからです。

    この考えを強くしたのが、実際のお客様との出会いでした。


    68歳男性の全身脱毛で気づかされたこと

    あるとき、68歳の男性が全身脱毛で来店されました。

    年齢だけを聞くと、脱毛サロンの利用者として意外に感じる人もいるかもしれません。
    僕自身も、開業前ならそう思っていたかもしれません。

    きっかけには、いわゆる介護脱毛という視点もありました。
    年齢を重ねていった先のこと。
    自分で手入れがしづらくなったときのこと。
    清潔を保つことの負担。
    そういう未来を考えての選択でした。

    ただ、当店では男性のVIO施術は行っていません。
    それでもその方は、「VIO以外の全身でも十分意味がある」と考えておられました。

    その言葉は、僕の中に強く残りました。

    介護脱毛というと、どうしてもVIOだけの話として受け取られやすい。
    でも実際には、老後を少しでも快適に過ごすために、自分でできる準備をしておきたいという考え方の方が、本質に近いのではないかと思ったのです。

    さらに、介護に携わる方の話を聞く中で、男性の場合はヒゲやOラインにも現実的な課題があることを知りました。

    ヒゲは、食事の際の汚れが付着しやすく、手入れの負担につながることがある。
    介助の場面では、理容師のようにカミソリを使えるわけではなく、電気シェーバーでの対応が中心になることも多いそうです。
    元気なうちは対応できても、体が不自由になってくると首回りなどは剃りづらくなり、認知症などが進むと音を嫌がったり、器具の扱い自体が難しくなることもあると聞きました。

    また、Oラインは排泄後の清潔保持が難しく、毛に便が絡みつくなど、介助する側にもされる側にも負担になりやすいという話もありました。
    無理に汚れを取ろうとして痛みが生じれば、介助そのものを嫌がる原因になることもあるそうです。

    そうした声を聞いて、僕は改めて思いました。

    介護脱毛は、流行の言葉としてのVIO脱毛ではなく、将来の自分や周囲が少しでも楽に過ごすための準備として考えるべきものではないか、と。

    脱毛は、若い人が見た目のためだけにするもの。
    どこかでそんなイメージを持っていた自分がいたことに、僕は気づかされました。

    毛をなくすことが目的なのではありません。
    その先にある、日々の快適さや手入れのしやすさ、自分らしく過ごせる感覚が大事なのだと学びました。

    店側はつい、部位や回数や料金で物事を見てしまいます。
    でもお客様が求めているのは、その先の生活です。

    この気づきは、僕の中でとても大きなものでした。


    キッズ脱毛では、お断りをしたこともある

    もう一つ、僕の考え方をはっきりさせたのが、キッズ脱毛の相談です。

    子どもの脱毛には、難しさがあります。
    年齢だけで一律に判断してはいけない。
    でも、本人の意思が置き去りになってもいけない。

    実際に、僕はお断りしたケースがあります。

    そのケースでは、子ども本人はムダ毛をそこまで気にしていませんでした。
    けれど、お母さんの方が、周りからどう見られるか、人に何か言われないかを気にしていました。

    もちろん、その気持ちは分かります。
    親として、子どもが傷つく前に何とかしてあげたい。
    少しでも不安を減らしてあげたい。
    そう思うのは自然なことです。

    でも、話を聞いていく中で、僕は「今やる理由」が本人の中に十分育っていないと感じました。

    子どもにとって脱毛は軽いことではありません。
    通う負担もあります。
    時間もかかります。
    そして何より、「このままの自分ではいけないのか」と感じさせてしまう可能性もあります。

    だから、そのときは施術をしませんでした。

    商売だけを考えれば、受けた方がよかったのかもしれません。
    でも僕は、申し込みがあることと、やるべきことは同じではないと思っています。

    本人が悩んでいないのなら、周りの不安だけで進めるべきではない。
    その判断は、今でも間違っていなかったと思っています。


    6歳の子に施術をしたこともある

    一方で、逆のケースもありました。

    6歳の子で、ダンスをしている子でした。
    その子は毛深いことをとても気にしていて、毎日のように毛をむしってしまうほど悩んでいました。
    お母様も、その姿を見て一緒に悩んでいました。

    この話を聞いたとき、僕は単純に「子どもだからダメ」とは思えませんでした。

    年齢だけを見れば、早いと感じる人もいると思います。
    でも、目の前にいたのは、今まさに困っている本人でした。
    誰かに言われたからではなく、自分自身が気にして、自分自身が傷ついていた。

    このケースでは、年齢よりも、本人の困りごとの深さを見るべきだと思いました。

    もちろん慎重に考えました。
    親の希望だけが先走っていないか。
    本人の意思はあるか。
    施術がその子にとって本当にプラスになるのか。

    簡単に出した結論ではありません。
    でも最終的には、施術を行いました。

    同じキッズ脱毛でも、僕の判断は逆になりました。

    それは、基準が「子どもか大人か」ではないからです。
    見ているのは、その悩みが誰のものかということです。

    本人が悩んでいるのか。
    本人の生活に支障があるのか。
    その施術が、その人を少し楽にするのか。

    この基準が、BLOSSOMの経営の軸になっています。


    売り込まないことは、何もしないことではない

    ここまで書くと、「売り込まない」というのは受け身の経営に見えるかもしれません。

    でも実際は逆です。

    売り込まないためには、よく聞かなければいけません。
    よく聞くためには、話しやすい空気を作らなければいけません。
    そのためには、店の考え方も、料金も、向いているケースも、向いていないケースも、できるだけ分かりやすく伝えておく必要があります。

    都度払いであること。
    高額コースがないこと。
    無理な勧誘をしないこと。
    逆に、必要がないと判断すれば断ることもあること。

    そういうことを、普段から言葉にしていく必要があります。

    強く売る店は、その場の勢いで決めてもらえるかもしれません。
    でも、売り込まない店は、来店前から信頼を積み重ねるしかありません。

    だから僕は、発信を大切にしています。
    それは宣伝のためでもありますが、それ以上に、判断材料を渡すためでもあります。

    この店なら相談できそうか。
    自分に合いそうか。
    今行くべきか、まだ行かなくていいのか。

    それを、お客様自身が決められる状態を作りたいと思っています。


    小さな店ほど、断れることが価値になる

    地方の小さな店は、大手と同じ戦い方はできません。

    広告費も限られています。
    知名度もありません。
    価格競争をすれば体力勝負になります。

    では何で選ばれるのか。
    結局は、「この店はちゃんと見てくれる」という信頼しかないと僕は思っています。

    その信頼は、うまい言葉では作れません。
    判断の積み重ねでしか作れません。

    必要がなければ断る。
    分からないことは分からないと言う。
    すぐ決めなくていいと伝える。
    メニューではなく、その人の生活の話を聞く。

    こういう一つひとつは派手ではありません。
    すぐに売上につながるとも限りません。
    でも、長く商売をしていくなら、こういう地味な判断の方が、結局は効いてくると思っています。

    小さな店ほど、「何でも受ける店」になるより、
    「必要なときに、必要な人のために動く店」になった方が強い。
    僕はそう考えています。


    山鹿で脱毛が完結するという当たり前を

    BLOSSOMが目指しているのは、「山鹿だからできない」をなくすことです。

    山鹿で脱毛ができる。
    市外まで通わなくていい。
    学生から大人まで、無理なく通える。
    必要な人が、必要なときに相談できる。

    本来なら当たり前のことを、山鹿でも当たり前にすること。
    それが、BLOSSOMの役割だと思っています。

    そして、その当たり前を支えるために、僕はこれからも売り込むより先に、相手の話を聞く店でありたいと思っています。


    最後に

    僕は、脱毛を勧める店を作りたかったわけではありません。

    その人にとって本当に必要かどうかを、一緒に考えられる店を作りたかったのです。

    一人の女性が、脱毛で人生が変わった経験を教えてくれた。
    もう一人の女性が、脱毛という仕事の意味を教えてくれた。
    68歳男性の全身脱毛が、脱毛の価値は美容だけではないと気づかせてくれた。
    そして介護に携わる方の声が、介護脱毛はVIOだけではなく、老後を少しでも快適に過ごすための準備だと教えてくれた。
    キッズ脱毛の二つのケースが、必要かどうかは年齢ではなく、本人の悩みの中にあると教えてくれた。

    脱毛は、ただ毛をなくすためのものではありません。

    コンプレックスを軽くすること。
    人目を気にせず過ごせるようになること。
    将来の暮らしを少し楽にすること。
    そして、自分のことを自分で選べるようになること。

    だから僕は今日も、売り込む前に聞きます。
    契約の前に、理由を聞きます。
    メニューの前に、その人の生活を想像します。

    遠回りに見えても、これが僕にとって一番まっすぐな商売のやり方です。

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