ジャガイモは常に準備万端
インドでは人が急に訪ねてくることがしばしばある。特別な用があるわけではないがおしゃべりをするためにやってくる。とにかくおしゃべりが好きな人が多い。西インドでは玄関先にお喋りをするために二人か三人くらい座れるブランコがある。人がきたらそこに座ってお喋りをするそうだ。そして人が家にやってきたらお喋りだけで終わらせるはずもない。
長旅を労って、まずは水の提供から始まる。浄水された水で喉を潤しお喋りをより円滑に進める。第一ラウンドの世間話が終わった頃にお家の自慢の出来立てのチャイが様々なスナックとともに出てくる。お喋りを停滞させないためにもチャイは重要である。だされたチャイを飲むなり、その味わいを褒め称える。そしてスナックも出来合えのものではなくキッチンで手作りされたものを提供するのがおもてなしの1つだ。それを一口食べ、味、作り方、見せ方、全てを褒め称える。そこからお喋りの第2ラウンドが始まる。今度の選手はチャイの作り手のレシピの紹介、スナックの自慢話が始まる。利き手はスナックを食べながら次のお喋りの準備をする。一通りチャイとスナックの話が終わり、最近の市場や物価の高騰の話を済ませたらチャイの作り手は気分を良くして台所へと一度身を潜める。ここからは第3ラウンドの始まりだ。チャイでより一層滑らかになった口々は留まることを知らない。次から次へと話題が出てくる。
長い第3ラウンドが終わり、試合も終了と思われた頃に台所から先ほどまで休んでいた選手が新たな話題になる出来立ての料理を持って出てくる。そこから第4ラウンドへと移行し、第5、第6あたりまで行くと驚くほど鮮やかに試合は終了し、訪ねてきた客は帰っていく。
試合はいつだって急にやってくるものだから、常に準備は怠らない。その時に重宝するのがジャガイモなのである。インドの人々のジャガイモへの愛はとても大きく、どこに行ったってジャガイモ料理がある。西インドでは特にジャガイモが伝わったのが早かったせいか家庭料理、レストラン料理から屋台料理までありとあらゆるところにメインとしてジャガイモがある。家では茹でたジャガイモを冷まして冷蔵庫に常備しておき、客が来たら自慢のジャガイモ料理をさっと作って提供する。
このジャガイモ、西インドではbatataと呼ばれポルトガル語と同じだそうだ。17世頃にグジャラート州のスーラットに伝わりインド各地へと広がっていったそうである。
今やインドの国民食とも言えるジャガイモ。いつだってどんな時も客人をもてなせるよう今日も冷蔵庫ですぐに調理できるようにスタンバッテいる。
