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ショパンの余韻をすり抜けて

    ピアノで「Tea For Two」を弾いてみる。
    その軽やかな旋律を奏でるたび、『リアル・ペイン〜心の旅〜』のベンジーを思い出す。

    記憶を辿るようにショパンの旋律が静かに流れる中、
    ベンジーが何気なく弾き始めたそのスタンダード曲は、どこか軽薄で陽気だ。
    けれど不思議なことに、その場の誰もが耳を傾ける。

    本来なら流れを壊してしまいそうな旋律なのに、なぜか心に残る。
    笑うように軽やかで、どこか少しだけ危うい。

    それは、ベンジーという存在によく似ている。

    周囲を振り回しながらも、人を惹きつけてしまう彼の姿は、あの旋律と重なって見えた。

    軽快なメロディの奥で鳴っていたのは、言葉にならない痛みだったのかもしれない。

    ショパンの余韻の中で聴く「Tea For Two」は、ただ明るいだけの曲ではなかった。
    あの旋律は今日も、本当の痛みと向き合う勇気を静かに思い出させてくれる。


    『リアル・ペイン〜心の旅〜』(2024)
    劇中歌:Tea For Two
    泣き祖母の足跡を辿る旅の中で、従兄弟ふたりが抱える痛みと記憶を見つめていくロードムービー。


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    映画ブログ|毎週土曜21:30更新 マガジン〈映画のあとで、歴史を歩く〉連載中 映画を観終えたあとの余韻を、日常の言葉に編みなおしています。 光と音のあいだに残る感覚を、静かにすくい取る場所。 物語が暮らしと重なる、その小さな瞬間を探して。

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