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短編シナリオ 『……うん。』


    概要

     地球の運命を懸けた惑星探査任務から生還した一人の青年。
     英雄として迎えられた彼の心には、宇宙で起きたある出来事が深く影を落としていた。
     彼を取り巻く何人もの視点を通して、善意と誤解、愛と後悔が幾重にも交錯していく…。

     SFミステリーの形を借りながら、「人は本当に他者、そして己自身さえをも理解できるのか」を問いかけるヒューマン・青春ドラマ。
     そして、一つのブラックジョーク。
     読むほどに登場人物や物語り全体の見え方が変わっていく野心作。


    プロローグ 

    この物語は一枚の鏡。あなたの心そのものだけを映し出す……

     (ミステリー好き、推理力に自信をお持ちの方は、雌編『切って落とされたメビウスの輪』から読むことを強くお勧めします。)

    雄編 「遺言(こくはく)」


     「生」とは……「死』への抵抗である。

      1.脱出

     最後の仲間となってしまったAと救命カプセルの中にいる。帰還先は他ならぬあの我らの母星、地球。

     今回の任務は、宇宙移民の可能性が最も高いと期待される、ある天体の実地調査だった。
     作業は順調に進み、結果も喜ばしい限りだった。
     信じられない程美しかったあの小さな惑星は、不幸にも百年そこそこの歳月しか残されていない地球の代わりに、人類が住む次の星となることがほぼ確実だった。
     我々は全員、その星を「ニュー・エデン」と呼ぶことにした。

     ところが帰りに災難が降りかかった。

     チームが一団となった懸命な努力も虚しく、結局Aと俺だけが、巨大な宇宙船と共に果てしない宇宙の闇へと粉々に砕け散っていく仲間たちの姿をまざまざと見せつけられながら、最後の一隻となってしまったカプセルに乗り込み、全人類の希望とも呼べるあのニュー・エデンに関する全ての貴重な資料とデータを携え、あの悪夢のような電磁嵐(フレア・ストーム)から逃げ出し、元から危険を承知した筈の今回の遠征を、狼狽えながらも続けるのだった。

     しかしまさかこの後、あんなことになってしまうとは…

      2.選択

     あれに気づいた時、一度は自分の全ての感覚を疑った。
     ——酸素…。
     供給装置が手の施しようのない損傷で、荒野の中の水どころではない程の、大切な酸素を失い続けていた。

     すぐにはAに伝えなかった。余りにも不吉な予感がした。
     黙々と何回も頭の中で計算をし直してみた。このカプセルに今たとえ一人しか乗っていなくても、地球付近の安全圏まで酸素が保(も)つかどうか、限りなく危ういという結果だった。

     重大な選択に迫られた。
     一刻も早く2人の内、もう1人を死なせなくては。
     それを決めるのは俺しかいない。

     心を鬼にして未だ熟睡している彼を殺すか、潔く自らの命を絶つかだ。躊躇えば躊躇う程2人が共倒れしてしまうことになるし、彼に気づかれてしまうと結果はもはや怖くて想像だにできない。

     どうすればいい。

     一瞬、血の気が引くのを感じた。

     こんな頼りない自分が、観念して自決すべきだろう。
     そんな思いが一瞬、よぎった。
     しかしこんなにも我が身を顧みない自分が、本当にこのままこの世を去るべきなのかと、確信が持てなくなった。

     仕方なく、彼の方に何か答えの糸口に繋がるものがないか、探してみることにした。

      3.天才

     間違いなく、Aは多方面に渡りずば抜けて優秀だった。破格の条件でこのチームにスカウトされてきたのも納得がいく。ただ、一度も笑った顔を人に見せたことのないその性格だけ、今回の任務に相応しいのかと、周りに疑問の声があった。
     しかし今回の任務で彼の採ってきた行動の何れをとっても、誰よりも的確で非の打ち所がなかった。
     チームから離れる最後の瞬間まで、彼は常に積極かつ冷静に、刻々と変わっていく事態をその都度瞬時に予想しながら、最も説得力のある対策を提案してきた。
     2人がこうして生き延びて来られたのも、彼の果敢な決断の結果だった。

     「このままじゃ全滅だ。君のことだからはっきりいう。もうここは諦めよう。手は尽くした。ほかのメンバーたちが死守してくれているうちに、最も若い2人が早いところ使えるカプセルを見つけて、肝心の今回の調査結果を集めるだけ集めて地球で待っている皆の為にさっさと抜けよう…」

     そして今、状況が落ち着いたと見るや、どれだけ続いたかも分からない悪戦苦闘の疲労困憊に耐えかね、進路のモニタリングを俺に任せ、死んだように彼は眠りについたのだ。

      4.覚悟

     一枚のコイン電池を高速回転させながら宙に浮かばせ、素早く掴んでみる。手を開いて見える面が表なら彼、裏なら自分の命を断とうと、一度心で決めた。

     しかし掌の中の「神のご意志たるもの」を覗き込もうとしたその瞬間、俺の気は、変わった。

      5.怨念

     一枚の写真を握りしめてたAの手が、ゆっくり緩みだすのをぼんやり眺めながら、彼から聞いた話を思い出したからだ。

     物心付いた時から「正義の味方」宜しく、人類を悲惨な運命から救おうと、科学者になると決めたことや、出身地のガフリカで「周りの連中が無知を極めたが故に人類にどれほどの不幸をもたらしたか」をその目で見てきたからだなど。

     ただ、一番最近彼の心を痛めつけたのは、やっとの思いでようやく振り向かせた長年片思いだった相手に、今回の任務のため、離れ離れになるどころか、いつ無事に帰ってこられるかも全く保証のない状況がどうしても受け入れられず、遂に別れを切り出されたことのようだった。

     彼が意外にも仲間たちを見捨てて、俺と二人だけで生き延びる道を選んだもう一つの理由も、彼女への未練のようだった。

     「今後何があろうと、絶対、彼女を後悔させてやる。」

     彼はそう言っていた。

     それを叶わせようとするのなら——仮に彼が本当にそのような強運の持ち主だとすれば——方法は至って簡単。
     「幸運を」と一言だけ残し、あの瞬時に全ての細胞の生命活動を止めることのできる殺生銃(バイオ・キラー)を自分の胸に押し当て、そしてあの赤いボタンを軽く押す。
     それだけだ。

     一方、俺は自分にも恋人がいることを思い出した。

     Aとは真逆に、俺の恋人はまさに俺が今回の任務の中堅メンバーに選ばれたことがきっかけで、心を開いてくれた。

     出発前に彼女はこう言った。

     「行ってらっしゃい。将来、子供たちのためにも。あなたが凱旋した時、私たちが永遠に結ばれるのよ」

     そう言って、俺の唇には初めて、かつてないほど燃えるようなキスを残し、彼女は顔を覆いながら足早に去っていった。

     今となっては、あの暖かい心の元へと帰る方法も同じくたった一つ。Aの頭にさえあの銃の照準を合わせておけば…

     分かっている。
     地球にいる人たちはきっとこう言うだろう。
     「人でなし」
     「卑怯者」
     「人類の恥」
     ……
     その通りだ。
     しかしそうでもしないと、俺の代わりに地球に持ち帰られようとしてるのは、ニュー・エデンへの希望の外に、彼の、とある人への飽くなき怨念でもあると、そう囁く声が俺の頭の中で今は響き渡り始め、そして止もうともしなかった。

     俺はとうとう、意を決した。
     ……

    ・

    ・

    ・
     以下、読まなくても話は進みます。できれば飛ばして次の節からお読みください。
    ・

    ・
    ・
      (初めて本来自衛用のあの銃(キラー)を使った感触は呆気ないもので、彼の息が本当に止まったのかを確認せざるを得ないほどだった。)




      6.生還

     あの焦げ茶色の、但し数世紀前の資料によれば、あの「ニュー・エデン」と同じくらい心酔わせるほど青々としていた筈の地球の姿をモニターで確認したのを最後に気を失ってから、俺は初めて意識を取り戻した。

     最初に目にしたのは、不安そうにしながらも一瞬にして安堵の表情へと変わる恋人の顔だった。
     だが次の瞬間、視界に飛び込んできたのは、危うく再び俺を失神させそうな光景だった。
     あれは疑う余地もなく、Aがずっと肌身離さず持ちつづけていたあの写真に映る女性の、美しくも今は悲しみと苦痛に満ちている瞳だった。

     「Aはずっと私のことを…私があんなひどいことをしたのに…B君、ありがとう。彼の思いを持ち帰ってくださって…」

     そう言いながら、彼女はクシャクシャの、しかし何故かどことなく見覚えのある一枚の紙を握り締めているその手で、顔中に溢れる涙を拭いた。

     「それは?」

     彼女の言葉を無視した俺の声。

     「それはって、まさかAさんにこの遺書を渡される前に気を失ったの?あなた大丈夫?」

     恋人が聞き返してきた。

     「イショ?イショって?」

     恋人が一層困惑したな表情を顔に浮かべた。
    「これはあなたのポケットにあった彼の遺書じゃないの。Aさんがあなたを生きて帰すために自ら命を断ったのよ。彼…」
     声が詰った。
     「…私に自分と同じ思いをさせたくないからって、生きる機会をあなたに譲ったのよ。Cさんにも代わりに謝っといてと頼まれたことも覚えてないの?彼女を幸せにできなくて済まなかったって…」

      7.不覚


     神よ。いや、慈悲深き我が宇宙よ……
     遂に俺は思い出した。Aが「眠りにつく」前に取った、あの妙な行動を。
     きれいに折り畳んだ一枚の紙を俺に渡して彼は今思い返せばもはや悲しげだった口調で言った。
     「最後の報告書だ。俺はもう限界だ、寝かしてくれ。読むなら俺が寝てからにしてくれ。」
     すると俺は気にもとめずに
     「うん。」
     と一言だけ言い、さっさとその紙をポケットにしまい込み、命拾いした直後の興奮の余韻に再び浸ることにしたのだった。
     思い返せば、あの後Aが口にした錠剤(カプセル)は決して「疲労回復剤」などでは…。

      8.崩壊

     これ以上自責の念に俺は耐えられなかった。
     彼は紛れもなく、いち早く二人の同時生還が不可能だという事態に気がつき、そしてキッパリと手を打ったのだ。
     なのに俺はと言えばグズグズして、ようやく気づいた頃にはあれこれと迷った挙句、彼を「殺」してしまったではないか!
     思うように力が入らない腕を伸ばし、
     「違う。俺が殺した。殺したんだよ。Dよ。俺を見損ったな。」
     そうとだけ言い、体に繋がっている生命維持装置のチューブを俺は渾身の気力を振り絞り、引き抜いた。
     寒気が体中の隅々まで駆け抜けていく。
     その後、世の中に何が起きたのか、俺にはもう二度と知る術がなかった…

        (雄編 完)


    雌編 切って落とされたメビウスの輪


     「死」とは……「生」への「嘘」である。

      ♾️  組織

     世の中に何が起きるのか、俺にはもう二度と知る術がない。

     ——その筈だった。

     朦朧とした中、話し声が再び聞こえてくる。
     ……
     「Dさん。落ち着いてください。
     Bさんはこれまで我々の想像を絶する体験をしてきたんでしょう。
     でもそれだけです。
     彼は回復します。
     ただ…」
     「ただ?」
     「はい。ただ、それにはあなたの協力が必要です。」
     ……
     鎮静剤が効いてきたようだ。
     「今度こそどうすれば…」
     遠のく意識の中、最早これしか残されていない。

      ・ 伝説

     最初にニュー・エデンの存在をその一世代前の星の住民たちに確実に知らしめたとされるBに関する公式ファイルは意外と少ない。

     実は史料によれば、我々が棲むこの星に初めて訪れた人類の中から、あの地球と呼ばれる惑星に生きて戻れた人間こそ彼一人だったが、同じ船にもう一人Aという男が、死体という形で連れ戻されていたらしい。

     彼に関してもまた、最初こそ聖なる殉職者と祭り上げられたようだが、後に狂人というレッテルを貼られたりと、謎が多い。

     一部民間の資料では生き残った方のBは後に元恋人——それもなんと生涯亡霊としか結婚できないと豪語していたとされる、あのニューエデン時代の組織の初代リーダーDではないか——との婚約を破棄し、これもまた皮肉なことに何故かあの殉職者Aの元恋人Cと生涯を共にしたらしい。

     彼らの間に一体何があったのか、その真相は藪の中だが、この星の歴史の始まりにまつわる宇宙伝説は様々なバージョンを経て今日に至り、今後も語り継がれていくであろう。

      ・ 「表」

     今気づいたか
     勝手だが先に行かせてもらう
     Dを大事に
     泣かすな
     俺と違って
     生きろ
     Cには伝えといてくれ、「幸せにできなくてごめん」とな

      ・ 代償

     時々、後悔するの。
     何故あの時、遺書のことをあんなに話してしまったのかと。
     話さずにはいられなかった、ただ彼を心配する一心で。
     しかしそれは遥か私の心配する域を超えてしまう結果を導いてしまうことになるとは…

     彼、変わり果ててた。
     私に何かを伝えようとすらしなくなってた。
     同時に、私を、いいえ、彼自身を見つめる眼差しまでも、以前とまるで別物だった。

     私はといえば、
     「もっと目の前の現実を見てよ…結局あなたは正しかったじゃない…私こそあの遺言(ことば)の裏の意味まで読めてなかったのよ…」
     と、あんな心にも無いことを彼に囁いてしまった。
     組織の言葉を鵜呑みにしたからだ。
     取らなくていい責任を彼に押し付けては行けないのだと、それは「みんなの為」でもあると信じ、いいえ、そう信じ込もうと、いつまでも立ち尽くしてた……

     それから彼、殆ど私に会おうとしなくなった。優しい言葉に一切耳を貸そうともしなかった。
     無理もない。
     彼の悪夢はまさに目覚めた瞬間から聞いた私の優しい言葉から始まったのだもの。

     そろそろ、悟らなくては。
     まさにあのAさんのように、「正しい」ことを、正しくいられない、いようとさえできない人間に、「善意」という名を借りて、押し付けちゃいけないんだって。
     だからもう彼のためにも、そしてかつて何もかも疑うことを知らなかった頃の自分のためにも、私、彼から離れてあげなくては。
     Cが Aにしたように。

     これで私にも、もう組織しかない。
     正にAと同じね。

     うん。

      ・ 「裏」

     今気づいたか(愚か者が)
     勝手だが先に行かせてもらう(お前には任せてられないからな)
     Dを大事に(これでお前はもう降りられなくなる)
     泣かすなよ(本当は泣かされてきたのはこっちだぜ)
     俺と違って(何故俺ばかり貧乏くじなんだ)
     生きろ(そして苦しめ。さもなくば俺はただの道化)
     Cに伝えといてくれ、「幸せにできなくてごめん」と(これでやっと彼女を後悔させられるだろう、しかも永遠にだ)

      ・ 意地

     確かに後悔したわ。あんなとんでもない優良株のAを見(み)す見(み)す逃がしてしまうんじゃなかったって。
     でも今思えばやはり私は間違ってなんかいない。
     彼に待つと約束してしまえば、有言実行の男として本当に五体満足で生きて帰ってきてくれたかもしれない。でもそのためには真っ先にまずBを片付けてしまわないと。そうなるともはや聖人君子でもなんでもなかったじゃない。
     たとえ酸素が足りてたとしても、Bを唆して一緒に救命艇に乗り逃げた時点でもう違ったわよ。帰ってきた直後のBを見れば一目瞭然よ。まるで生きる屍だったじゃない。
     そもそもそう約束しなかったからこそ、わたし彼のお荷物にならないで済んだのよ。

     Aのことは好きだった。正確には憧れてただけかも。ただ彼が頑として探査チームに参加すると決めた時、私は不安で仕方なかった。普通は尻込みするものでしょう。
     ただまさか最後にあのドジなBを私に残してくれたとはね。ありがたかったわ。
     何故かって?
     Bこそ私を裏切らない男よ。絶対にね。
     だってAの勝手なカッコつけで二人がどれだけしんどい思いをさせられたか当事者同士にしかわからないんだもの。

     しかしBにも本当にびっくりさせられたわ。まるでAの真似でもするかのようにチューブを自分から抜いたりして、Aは自分に殺されたんだとか、Dとは釣り合わないとか言ってさ。
     「組織」の人間は彼がPTSD(心的外傷後ストレス障害)だと言ってたし、私も彼が本当におかしくなっちゃったと思った。
     でも今は分かる。彼にはそうせざるを得ない理由がちゃんとあった。命を授けられ、憐れまれる側には回りたくなかったのよ、彼は。自分が殺したと自ら主張することでしか、Aの死を以て下した呪縛を解くことができなかったのでしょう。
     それが彼の結果として生き残った側の最後の意地ってわけ。
     Dが組織の人間の前で茫然自失の姿を見て何となく分かったわ。あの二人はあれからロクなことにはならないってね。

     だから周りがいくらAの完璧さが不可抗力で、Bには何の落ち度もないと慰めても、Bは納得できるはずもなかった。自分の無能さこそAを死なせたんだって。だからAが自分に殺されたも同然ってね。
     BもAに負けないくらいプライドの高い男ってわけ。唯一違うのはそれに見合う実力を持ってなかっただけ。
     でもその代わり彼には生きることへの貪欲さがある。
     素晴らしいじゃないの。
     聖母マリアになんか私はなれないし、なりたくもない。そんなのおめでたいDさんの役回りだもの。
     私はただ確実に目の前の現実を捕まえていられれば、それで満足よ。
     ふん。

     こんなんで良かったのかしら。
     少なくともみっともなくわめき散らし、めそめそ泣き続けて生き恥を晒すより余程ましなはずだわ。

      ・ 詫

     組織とのあらゆる関わりを断ち切ってから暫くして、Cに会った。

     「元気にしてた?」
     「元気にしてた?」
     互いの声が重なる。
     一瞬の、間。
     「どうにか…」
     「どうにか…」
     更に完璧なハーモニーだった。

     今は分かる。
     あの時唐突にしか感じなかった彼女からの感謝の言葉の意味。
     当たり前さ。
     俺自身が、Aが彼女に残した最大の詫びだからな。
     うん。

      ・ 誤算


     なんてことだ。
     私は確かにこの残酷な世界を生き抜くことに疲れた。今回のことがいいきっかけとなり、私も肩の荷を下ろしたかっただけだ。
     しかしまさかBがそのまま「報告書」の存在すら最後まで忘れてしまうとは。
     その結果、彼までもが死にかけてたではないか。
     いや、ある意味本当の彼は既に死んだ。そしてCもだ。まるであの2人が生きる屍となって、本当に死んだ私を嘲笑ってるではないか。
     「この独りよがりが。ざま見ろ」と。
     待て。
     もしかすると、2人ともこれで「幸せ」というのなら、それは寧ろ俺にとっては本望だったかもしれないじゃないか。
     ああ。もう考えるのも面倒くさい。
     何故私は死んで尚、これほどまでに心配性なんだ?
     勝手にしろ。
     俺はもう、知らん。
     うん。

      ・ DNA

     こうしてメビウスの輪は二本の螺旋構造に。
     そして今もなお、このニューエデンという罪深い星で、愚かな人間どもが恥を知らずにのうのうと業を重ね続けているのである。

    エピローグ キスと涙

     彼女の燃えるようなキスより、涙で洗われた私の瞳を、彼は選んでくれたわ。
     華々しく凱旋するみんなの英雄でい続けることよりも、唯一の理解者にして「戦友」の私との「共犯」関係を、彼は選んだのよ。
     だって、その方が嘘を吐かずに済むんだもの。
     それだけよ。
     うん。

        (了)

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