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ちょっとだけ見栄を張りたいお年頃なので

    車のエアコンがつかなくなった。2、3年前にもつかなくなって修理したばかりなのでいよいよエアコン自体が寿命を迎えてしまったのかもしれない、と夫が言う。

    日本の夏ほど暑くはならないこの国でも、今の時期、快晴の日にエアコンなしでドライブするのはキビシイ。私はそこそこ暑さに耐性があるものの、この国で育った夫は溶けかねない。以前行った沖縄旅行でその気温と湿気にたちまち溶けかけた夫は立ち寄るお店”全て”でアイスクリームを購入し時には一つで飽き足らず二つ目を補給する事で、なんとか姿形を保っていたことが思い出される。

    そんな事態は避けようと、今朝、仕事で早く家を出た夫に代わり私がメンテナンスショップに車をドロップしてきた。数日前から夫に頼まれていたこのおつかい。車をメンテナンスショップまで運転して鍵を渡して帰ってくる。それだけなのに、昨晩から私はとっても気が重かった。

    私は車のことはほぼ何も分からない。それでも、車をドロップする時は夫から仰せつかっている、車がどんな症状で、どこを修理してほしいのかスタッフに伝えなければいけない。

    以前、沖縄旅行中、家電量販店で目をキラキラさせながらアレの色違いはないのか、コレとコレはどう違うのか、こんな商品を探しているけど売っているか、次から次へと疑問が湧いてはスタッフに聞いてくれと夫の専属通訳として連れ回された時は、自分の一切興味のないことに関して言葉の橋渡しにされることに、とてつもないストレスを感じ「google翻訳を使ってくれ」と言い残し10分ほど夫から姿をくらませてしまった。そしてそこでポータブル充電器を買わなかった結果、後にスマートフォンの充電が切れた際充電できず、その日の午後回った美しいフクギ並木や巨大なジンベイザメの泳いでいた美ら海水族館の写真を撮れなかったという失態を犯している。すまぬ夫よ。沖縄にはまた行こう。今度はポータブル充電器も持って。

    今回、その時の挽回とばかりについに己の自己中さ弱さと向き合う時が来たのだ。

    昨夜、夫は私がきちんと説明できるように「今回言うことはふたつ!ひとーつ、エアコンがつかない。ふたーつ、窓がスムーズに開かない。」とゆっくり教科書を読むように繰り返し、私はそれをとりあえずお守りがわりに頭に叩き込んだ。もしそこに質問が重ねられたらその時はもう夫に電話するとしよう。

    朝、仕事に出る夫に「大丈夫、できるよ!」と励まされながら一緒に私もアパートを出てそのまま一人でメンテナンスショップに向かう。早朝なので思ったより車通りが多くなく10分ほどで着いた。敷地内に入るとスタッフが出迎えてくれて私の駐車を見守っている。これは一発でキメたい。謎の緊張感とともに私はいつもの5倍慎重にバックで駐車した。

    受付で「おはようございます」と軽く挨拶を済ませ、覚えているうちに昨日暗記した呪文を唱えてしまおう、と口を開くより先に「夫さんの名前でご予約いただいてますね?」とスタッフが確認してきた。え?そうなの?予想外の質問に「イエス?」とこちらも疑問形になってしまう。

    さっき外で駐車を見守ってくれたスタッフは私の運転テクニックに関心していたのではなく、ナンバープレートを確認していたのだ。そして既にお店のシステムに登録されていたらしい予約内容を読み上げてくれる。

    それは私が昨日暗記した二つの文章そのものだった。

    私も今度は自信を持ってイエス!と答えた。

    ***

    無事、車をドロップしたよ。

    ホッとした帰り道、夫に短くテキストを送る。するとすぐに「どうだった?」と電話がかかってきた。昨晩から私が緊張していたので夫も心配してくれていたらしい。

    「(何も説明する必要なかったし)楽勝だったよ!」

    と伝えると、ね!妻ならできるって言ったでしょ!と夫はとても喜んでくれた。

    …嘘はついていない。



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    なのに血液検査は引っかからない夫



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    30代、海外在住、夫と二人暮らし。 身のまわり半径5m以内で起こることを描/書きます。 犬派です。でも猫も馬も好きです。

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