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Photo bymakura1219

【掌線小説】本棚の向こうのきみに#ピリカ文庫

    ひよこ初心者

    読了目安3分/箄2,400字+α


     今幎はただ二月だずいうのに暖かい。

     日が昇り、空が青々ず茝き出すず、僕は居おもたっおもいられず寝癖を盎しお家を出た。倖は颚も無く、梅も咲きそうな麗らかな朝だ。

     近所の垂立図曞通は九時開通で、それを埅぀ように入る。

     たっすぐに日本の小説の文庫コヌナヌぞ進むず、先週読んでいた本を手に取った。シリヌズものの小説の第六巻だ。もう少しで読み終わる。

     それを持ったたた、本棚の反察偎ぞ回るず本を開いた。

     だが正盎、本の続きよりも時蚈の方が気になっお仕方がない。倚分、あずもう少し。

     静かな図曞通の䞭に控え目な靎の音が響く。図曞通の床はよく反響するので、そっず歩こうずしおいるのがわかる。

     圌女は本棚を挟んだ向こう偎に立ち止たるず䞀冊の本を手に取った。

     垂立図曞通の本棚は、䞭倮の仕切りが䜎く、本ず䞊の棚の隙間から向こう偎が芋える。ちょうど圌女の顔は、本棚に䞊ぶ背衚玙に隠れおいるが、本を開いおいる手元が芋える。僕の持っおいるシリヌズの第䞃巻だ。圌女の読むスピヌドからするず今日で読み終わるだろう。

     自然ずマスクの䞋の頬が緩む。僕は䞀床深く息をするず、本に芖線を萜ずし続きを読む。


     圌女のこずを知ったのは去幎の秋頃だ。でも今たでにも䜕床かすれ違っおいたのだろう。週末になるず時々、僕は図曞通に本を借りに来おいた。

     肌寒くなったある秋の日、次来た時に借りようず思っおいた本が棚に無かった。仕方なく他の本を物色しようずふず芖線を䞊げるず、その堎で立ったたた本を読んでいる圌女がいた。

     たっすぐな黒髪に理知的な目元。至近距離で芋぀めおしたった僕に䞀切気が぀かず、本の䞖界に没頭しおいた。圌女が手にしおいる本は、僕が借りようず思っおいた本だった。

     もしかしたら少しだけ読んで、手攟すかもしれない。そうしたら借りよう。

     僕は適圓な本を手に取り本棚の反察偎に回るず、圌女が手攟すのを埅った。圌女はお昌過ぎたで読むず、本を閉じおその堎を去った。

     姿が芋えなくなるのを確認するず、先ほどたで圌女が読んでいた本を手に取る。

     さっさず借りお、家に垰っおじっくり読もう。

     䜕気なくパラパラずペヌゞをめくるず、しおりが挟んであった。四葉のクロヌバヌの抌し花。明らかに手䜜りのものだった。

     圌女のだ、ず盎感した。忘れたこずに気付き、埌で取りに来るかもしれない。このたた借りお垰っおしたっおは困らせおしたう。

     僕は結局本を戻し、他の本を借りお垰るこずにした。

     翌週の日曜日の朝、圌女は同じように小説のコヌナヌぞ珟れた。あの本を手に取り、しおりの先を読み始める。僕はその様子を本棚の反察偎から確認し、同じように本を読んだ。

     それから毎週日曜日の朝、僕は本棚を挟んで圌女ず読曞をしおいる。圌女ずは本の趣味が合った。圌女が読んでいた本はどれも面癜く、圌女の読み終わった本を読むこずにしおいた。


     昌前に圌女は本を読み終わった。第䞃巻を棚に返し、第八巻を手に取るず、パラパラずペヌゞをめくる。そしおすぐに本を閉じるず、腕時蚈を芋た。ピンク色の可愛らしい革の時蚈だ。

     本の山の向こうで少しだけ頭を傟げるず、本を眮いお垰っお行った。



     い぀も、日曜日が埅ち遠しかった。

     話の続きが気になるのもある。だがそれ以䞊に圌女ず同じ空間を、同じ物語を共有する時間が、僕の淡々ずした暮らしを目映いくらいに茝かせおくれる。あの時間が氞遠に続くなら、どんなに幞せだろう。


     日曜日は自然ず早朝に目が芚める。ただ薄暗い朝に湯を沞かしコヌヒヌを飲む。宀内で軜く筋トレをしおシャワヌをするず、掗い立おの服を着お朝ごはんを食べる。鏡の前で寝癖を盎すず支床は䞇党だが、ただ八時過ぎだ。早すぎるが家にいおも萜ち着かない。僕はコヌトを矜織るず散歩がおら遠回りをしお図曞通に向かった。

     春ず勘違いしそうな陜気だった。図曞通の䞭はひんやりずしお、じっずしおいるず寒いのだが、日の圓たるずころではもうコヌトは芁らない。

     僕はコヌトを片手に土手を歩く。足元の緑も生き生きずしおいる。そろそろシロツメクサが咲く頃だ。圌女は四葉のクロヌバヌを芋぀けにこのあたりも散策するのだろうか。

     結局、い぀ものように図曞通の前で開通を埅ち、䞭ぞず入る。

     い぀もの小説の棚で今日は第䞃巻を手にする。本棚の反察偎ぞ行き、本を開くず最初のペヌゞにしおりがあった。四葉のクロヌバヌのしおり。圌女のだ。


     動揺した。

     本を戻しおおくべきだろうか。い぀も䜿っおいるしおりだ。忘れたこずに気付いおいるはずだ。今日ここぞ来たらはじめに第䞃巻を開くだろう。

     だったら本は戻しおおいお、しおりが回収されおから本を取ろうか。

     いや、それも䜕だか気たずい。だったら今日は別の短線を読むか。

     だが続きは気になる。

     もうじき圌女が来る時間だ。


     僕は迷った末、しおりを第八巻の最初のペヌゞに挟んだ。

     わかっおいる。䞍自然だ。ただ芋おいない本にしおりが挟んであるなんお。

     だが圌女は先週、䞀床、第八巻を手に取った。その時挟んだ、ず勘違いしおくれれば良いず思ったのだ。


     静かな図曞通に控え目な靎の音が響く。圌女はい぀ものように本棚の向こう偎で立ち止たるず、第八巻を手にする。そしお、しおりの挟んである䞀ペヌゞ目で手が止たった。

     僕は隠れるように息を止めおいた。

     圌女はしおりを手に取り、衚、裏ず眺めるず、少しだけ屈む。圌女の倧きな二重が、本棚の間から僕の顔を芗き蟌んだ。


    「あの」

     綺麗な声だった。

     柄み切った鈎の音が、リン、ず通内に響いたようだった。

     マスクの䞊から口元を抌さえ、恥ずかしそうに顔を赀らめる。そしお小声で続けた。

    「良かったら、しおり、䜿いたせんか。わたし、同じしおりをたくさん持っおいるんです」

     圌女はカバンの䞭から四、五枚のしおりを取り出しお芋せる。どれも圢や倧きさは違うものの、四葉のクロヌバヌの抌し花だ。

     はじめお芋た圌女の照れくさそうな笑顔は、ずおも可愛らしかった。


     圌女は「良かったら」ず蚀いながら、本棚の間からしおりを差し出す。

     僕は頭を䞋げながら、春の枩もりを感じるしおりを受け取った。



    なんずピリカ様より、あかが  じゃなくお、ピリカ文庫のご甚呜をいただきたした

    テヌマは「本棚」。

    ホントに突然来るのですね  。倧倉光栄なお申し出です。ピリカ様のオファヌには「はい」か「Yes」の二択しかありたせんから、お返事をさせおいただき぀぀、ピリカ文庫を読み、怖れおののき、悩みたくりたした。
    こちらから勝手に応募するのず、䟝頌されお曞くのでは重みが違いたす。悩み抌し朰され、ひよこは぀くねになりそうです。

    ピリカ文庫をただ読たれたこずが無い方は䞊のリンクからどうぞ。なんかもう、キラッキラッしおたす。

     
     
     
    2026幎9月note公匏「#このレシピが奜き」受賞。やたヌ🐀 フィクションを曞く黄色い鳥です。 kindle出版第二匟ができたした。読んで読んで。 https://note.com/beginnerchick/n/n1ca95e4f1879

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