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渋谷のコンビニで育った娘より

    東急東横線の渋谷駅がまだ地上にあった頃。

    私は毎週末朝早くから母と一緒に、
    菊名駅で特急に乗り換えては渋谷に行っていた。

    あれからもう、20年ほど経つらしい。

    当時小学生だった私はあと数ヶ月で27歳になる。

    ・

    小学校を入学してすぐに
    父親がフランチャイズ事業を始めた。
    青地に白いミルク缶が描かれている
    ロゴのコンビニエンスストアだ。

    最初だけ、と手伝う予定だった母親も、
    あまりの忙しさで辞められず
    共働きでコンビニで働くようになった。

    毎週末のように渋谷のお店に行き、
    バックヤードの椅子に座り、
    鳴り続ける入店音の中、
    ひとりでずっと遊んでいた。

    ふと顔を上げて、
    防犯カメラに映る働くみんなや
    途絶えることなく
    来続けるお客さんを眺めてみたり、
    気が向けば、
    ウォークイン冷蔵庫の中に入って
    ジュースを補充してみたり、
    商品のパッケージが表に
    向くように揃えたりして遊んでいた。
    もはや私が店のオーナーだったのかもしれない。(笑)

    大人になれば、忙しいということが
    とても有難いことだと理解できるのだけれど、
    当時小学生の私は有難いだなんて
    1度も思ったことはなかった。

    会社で働くお父さんの方がいいと思っていたし、
    こんな風に、親の仕事について書いたりするなんて
    当時の私は思ってもいなかったくらいに、
    親が“コンビニ”で働いていることは、
    とても恥ずかしいものだとも思い込んでもいた。

    だから昔は、
    「お父さんなんの仕事してるのー?」という
    質問がとても苦手だった。
    子どもながらに、
    とぼけたふりや、知らないふりをして
    上手く交わしてきたような記憶がある。

    その後、中学校、高校と歳を重ねても、
    そういった類の会話を
    極力避ける癖がついているくらいに
    “コンビニ”という存在を敵視していたのだ。

    ・

    仕事を始めたばかりの頃、
    お店で買ってきた2種類のスパゲッティを見せ、
    「どっち食べる?」という問いをした母親に対し、
    「コンビニのは食べない。あったかい白いご飯とお味噌汁だけでいいから作って。」と亭主関白な昭和親父のような言葉を投げかけたことがあるらしい。

    当の本人(私)は記憶がないが、
    忙しさで母との時間を奪った
    “コンビニ”に対する抵抗と、
    精一杯のわがまま(甘え)だったような気がする。

    ・

    大人になって社会を知るたびに、
    両親の凄さに圧倒されている。
    当時恥ずかしがっていたことが
    恥ずかしいくらいに、
    今は両親が働いてきたことを心から誇りに思う。

    そう思うようになってからだろうか。
    コンビニへの視点も変わるようになってきた。

    幼少期の両親との時間を奪ったコンビニのことを
    私は許さないと思った時期もあったけれど、
    都心で20年もお店を続けられてこられたのは、
    両親の経営努力はもちろん、
    変わり続ける時代の中で競合他社と
    戦い続けてきた強さがあったからなのだと。

    それに何を隠そう、
    私はそんなコンビニのおかげで不自由なく、
    ここまで育ってこれたのだから。

    それでも、先ほど述べたみたいに、
    コンビニのごはんを食べないという選択をしたから
    私たち家族は大きな病どころか、
    風邪すら患ってこないでここまで健康に元気に
    過ごしてこれたのかもしれないと思うと、
    なんともいえないような気もするけれど。笑

    「健康第一であり、健康があってのワークライフバランスがあるとし、良い生活と良い仕事を続けてほしい」
    と思ってくださっているのならば、
    現場で働く人たちにももう少し優しくあってほしいと、
    小さい頃からずっと思っているのは変わらない。

    コンビニが悪なのではない。

    雇う側、働く側、買う側も、
    すべては、選び方、使い方。

    あんなに嫌悪していたコンビニを、
    今の私はちゃんと誇りに思えている。

    もっと胸を張って
    「私の両親はコンビニで働いていた」と言えるようになりたい。

    だからこれからも、
    私は、コンビニ(ローソン)のことをずっと応援していきます。




     
     
    食とわたし。管理栄養士(27)。横浜から札幌移住。 ごはんも感情もおいしく味わうために綴ります。

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